…あくる日の午後…
…夕歩危の村でのこと。
秋祭りの妖たちの太鼓の音が響く昼おけに、
もなみと若宮はカラオケに行っていた。
こねき猫に行くと、若宮ともなみと
平家一族三人の彦火と優人と火海(てみ)と
茜と若颯と花音と
天狗の天ノ河と妖たちがカウンターで
予約の手続きをとった。
「…毎度ありがとうございます。」
カウンターには、へのへのもへじって
顔に描いた案山子のお化けがレジをしてて、
部屋は12番の、JAMを使って歌う。
「…かわいいね。」
「…ね。」
「…うん。」
子ども達がお化けたちのポスターやちらしを
見上げて、不思議そうに答えた。
壁に子どもの落書き広場あって、
部屋には、楽しげな流行歌が
流れていて、賑やかだった。
「…何にする?」
もなみは部屋の桜模様で桜型の
クッションイスに座り、若宮に問いかける。
こねき猫にある、猫の手クッションを
もきゅもきゅとさわる。
「…これ、ほし‐!」
もなみが猫の鳴き声のマネをする。
JAMにもなみが桜坂恋の〈恋ノ花びら〉に
若宮がapple paiの〈恋〉を入力して、
平家一族が三人でTelepathyの〈虹〉を歌った。
「…若宮の〈花相撲〉を歌う♥!」
❀❀❀
〈…ゆらゆら。…ゆらゆら。
…ゆらゆら。…ゆらゆら。
…桜ノ花のおかげの咲ク…
常しゑの庭で…あなたに会う。
白い花畑のなか…そっと、眠る君…
…ゆらゆら。…ゆゥらんダ。
…あなたの腕。…小舟の上…
…桜花ははか乃枝を火た折りて…
たよル花文。想ふ花わタ。
…あなたの琴ノ花を探して…
…ゆゥらんダ。…あなたの腕のなか…
…おして…座りて…ゆゥらんダ。
…手と手。…あなたの火のユラ。
…ゆらゆら。…ゆゥらんダ。
…あなたの凛々しい顔。
…揺れる桜木の花衣も…
…のこった。…ノコッタ。
…はっけや。よいよい。
…はっけや。よいよい。
…誰そ彼れのあなたに、会いたかった…
…ゆらゆら。…ゆらゆら。
…ゆらゆら。…ゆらゆら。
これわ…秘密にしないといけない。
…あなたの口グセ。
…ゆらゆら。…ゆゥらんダ。
…ゆらゆら。…花ユラ。
…削られた名を、とりニ行って…
…もとに戻ス。
…あなたに会いたくて。
…そゥ。桜木の咲るなか…
…長唄のきこゑる、白袴の花衣も…
…君を、離さない…
…ゆらゆら。…ゆゥらんダ。
…あなたとの美玉ノ結ヒ…
…ずっと… …ずっと…
…ノコッタ…
…あなたとともに、生きてユク。
…掬矢名タ姫ヲ守って…
…のこった。…ノコッタ。
…はっけや。よいよい。
…はっけや。よいよい。
…はっけや。よいよい。
…はっけや。よいよい。
…のこった。…ノコッタ。
…のこった。…ノコッタ。〉
若宮の甘い面顔に低い声が
妖カラオケルームに響く。
「…若宮は歌が上手だね。」
タンバリンをもなみが鳴らして、
マラカスを子ども達がふらす。
天ノ河は、チョコチップの入った
ポテトチップスを食べた。
「…これ、おいしい。」
「…そうだね♪」
茜が若颯に唐揚げをひとつ、
つまんで口にほうり込んであげる。
そうこうしているうちに、
「…差し入れ‐!」
妖たちがお皿に入れたタルトを持ってくる。
途中、買い物してると、
竜(りつ)にあったと茜が言っていた。
「…はい、召し上がれ。」
…竜が言う。
プリズムを使って写した星空が
カラオケルームに広がると、とって食べた
夢のチェリータルトだった。
「…夢を、食べる。」
「…え‐?!ユ夢めクイ?!」
…火海が苦しんで言う。
「…恋ちゃんのチェリーの
のったクイニーアマン。」
「…そう。ユ夢めクイ…。」
もなみが独り言のようにつぶやいた。
「…ユ夢めクイは、
鬼に魂食われるって言うよ?!」
花音がオレンジジュースを
じゅ‐っと飲んだ。
「…食べないほうがいいね。」
と、天ノ河。
「…そうなの?」
「…タルトだから、指輪が入ってるかも。」
…優人が言った。
「…クイニーアマンは災いの鎖を
切る力があるって、古い言い伝えがあるってさ♥」
…火海が言った。
「…鎖?」
「…そう、紡ぎ。」
…平家一族の火海が続けて言った。
「…長めの赤いリボンを結んで…」
そう言うと、もなみは茜に頼んで
妖から赤いリボンをもらうと、
結び目に一つ目は花束を、二つ目は
ビスケットやクッキーのお菓子を、
三つ目はバスセットを結んだ。
「…こう?」
「…うん。」
…彦火が頷いた。
「…結び目のプレゼントを
一つずつひらいて。」
…烏天狗の天ノ河がプレゼントをはずした
リボンを花結びにして、部屋に飾ってゆく…。
「…ユ夢めを、食べる。」
…もなみが呟いた。
❀❀❀
「…竜(りつ)、どこにいるんだろう。」
…あノ世の喫茶店で、ホットコーヒーを
飲みながらゐすゞが言う。
❀❀❀
「…そう。」
「…考えすぎ。」
…茜が楽しそうに言う。
天ノ河がミュージックボールを
指差したら、流れ星が流れた。
「…みんな星座になったんですか?」
「…え‐?!(全員)」
「…アンタレス。」
「…天秤ね。」
彦火が星空にお化け天秤を浮かべて
砂糖のついたお菓子の寒天を乗せてゆく。
「…じゃあ、次は、あノ世喫茶ね。」
…次の集まりは、そこで決まり!
❀❀❀
…あノ世の喫茶店…
花化野の近く、おかげの入ったコーヒーを入れる。
「…こっちだよ。」
「…わ‐い!」
若颯と花音が店内を走り回っている。
こんもりとしたファットな胴体に
ずんぐりっとした大きな山みたいな魂の形を
した一つ目のお化けがマスターをする。
黄色や緑色をした体に狐の耳や
鹿の尻尾がついた手足の長いお化けの
お客さんが座っている。
「…マスター。目玉入りの
カフェアフォガードひとつ。」
帽子を被った動物のお化けが
カウンターで注文する。
壁にかかったタペストリーの悪魔が
ニンジンがほしいと言っていた。
悪魔は風船みたいに空に浮いていて、
小さな体で人の言葉を話す生き物だった。
ぼっこ達が口々に物を言う。
ぼっこが口に運んだ血の池地獄入りの
クリームソーダを分けっこする。
「…はい!あ‐ん、して。」って
スプーンでアイスクリームをすくう仕草を
すると、口に運ぼうとしてさっと食べていた。
鬼の使いをする花茨ノ君が
三つ目スライム入りのコーヒーフロートを
食べていた。
「…探し物は?」
「…ゐすゞね。」
「…ちがう。」
…若宮が甘くささやく。
「…もなみ。」
…ちがうのね。…
「…魂を食べちゃうぞ。」
「…やだ。」
…カラリン。とbellが鳴って、
赤い靴を履いた踊る足だけの幽霊と
足のない少女のゴーストが店に入ってくる。
「…今し方、みかけたわ。」
…足のない少女は言う。
「…橋のふもとにある
駄菓子屋に行けばいい。」
…赤い靴を履いた踊る足だけの幽霊は言った。
「…駄菓子屋ね。」
…もなみは分かったと言って、手を上げた。
…マスターが宝島の地図メニューを
渡して、砂糖とレモンとミント入りの
お冷と猫の手おしぼりをテーブルまで届けた。
…テーブルにマスターの目玉が落ちる。
〈こノ世〉と〈あノ世〉の使いをする
掬矢名タ姫乃ゐ琴が鳥の被り物をし、
アンティークドレスを着て、
アイスロイヤルミルクティーを飲んだ。
…夕歩危の村でのこと。
秋祭りの妖たちの太鼓の音が響く昼おけに、
もなみと若宮はカラオケに行っていた。
こねき猫に行くと、若宮ともなみと
平家一族三人の彦火と優人と火海(てみ)と
茜と若颯と花音と
天狗の天ノ河と妖たちがカウンターで
予約の手続きをとった。
「…毎度ありがとうございます。」
カウンターには、へのへのもへじって
顔に描いた案山子のお化けがレジをしてて、
部屋は12番の、JAMを使って歌う。
「…かわいいね。」
「…ね。」
「…うん。」
子ども達がお化けたちのポスターやちらしを
見上げて、不思議そうに答えた。
壁に子どもの落書き広場あって、
部屋には、楽しげな流行歌が
流れていて、賑やかだった。
「…何にする?」
もなみは部屋の桜模様で桜型の
クッションイスに座り、若宮に問いかける。
こねき猫にある、猫の手クッションを
もきゅもきゅとさわる。
「…これ、ほし‐!」
もなみが猫の鳴き声のマネをする。
JAMにもなみが桜坂恋の〈恋ノ花びら〉に
若宮がapple paiの〈恋〉を入力して、
平家一族が三人でTelepathyの〈虹〉を歌った。
「…若宮の〈花相撲〉を歌う♥!」
❀❀❀
〈…ゆらゆら。…ゆらゆら。
…ゆらゆら。…ゆらゆら。
…桜ノ花のおかげの咲ク…
常しゑの庭で…あなたに会う。
白い花畑のなか…そっと、眠る君…
…ゆらゆら。…ゆゥらんダ。
…あなたの腕。…小舟の上…
…桜花ははか乃枝を火た折りて…
たよル花文。想ふ花わタ。
…あなたの琴ノ花を探して…
…ゆゥらんダ。…あなたの腕のなか…
…おして…座りて…ゆゥらんダ。
…手と手。…あなたの火のユラ。
…ゆらゆら。…ゆゥらんダ。
…あなたの凛々しい顔。
…揺れる桜木の花衣も…
…のこった。…ノコッタ。
…はっけや。よいよい。
…はっけや。よいよい。
…誰そ彼れのあなたに、会いたかった…
…ゆらゆら。…ゆらゆら。
…ゆらゆら。…ゆらゆら。
これわ…秘密にしないといけない。
…あなたの口グセ。
…ゆらゆら。…ゆゥらんダ。
…ゆらゆら。…花ユラ。
…削られた名を、とりニ行って…
…もとに戻ス。
…あなたに会いたくて。
…そゥ。桜木の咲るなか…
…長唄のきこゑる、白袴の花衣も…
…君を、離さない…
…ゆらゆら。…ゆゥらんダ。
…あなたとの美玉ノ結ヒ…
…ずっと… …ずっと…
…ノコッタ…
…あなたとともに、生きてユク。
…掬矢名タ姫ヲ守って…
…のこった。…ノコッタ。
…はっけや。よいよい。
…はっけや。よいよい。
…はっけや。よいよい。
…はっけや。よいよい。
…のこった。…ノコッタ。
…のこった。…ノコッタ。〉
若宮の甘い面顔に低い声が
妖カラオケルームに響く。
「…若宮は歌が上手だね。」
タンバリンをもなみが鳴らして、
マラカスを子ども達がふらす。
天ノ河は、チョコチップの入った
ポテトチップスを食べた。
「…これ、おいしい。」
「…そうだね♪」
茜が若颯に唐揚げをひとつ、
つまんで口にほうり込んであげる。
そうこうしているうちに、
「…差し入れ‐!」
妖たちがお皿に入れたタルトを持ってくる。
途中、買い物してると、
竜(りつ)にあったと茜が言っていた。
「…はい、召し上がれ。」
…竜が言う。
プリズムを使って写した星空が
カラオケルームに広がると、とって食べた
夢のチェリータルトだった。
「…夢を、食べる。」
「…え‐?!ユ夢めクイ?!」
…火海が苦しんで言う。
「…恋ちゃんのチェリーの
のったクイニーアマン。」
「…そう。ユ夢めクイ…。」
もなみが独り言のようにつぶやいた。
「…ユ夢めクイは、
鬼に魂食われるって言うよ?!」
花音がオレンジジュースを
じゅ‐っと飲んだ。
「…食べないほうがいいね。」
と、天ノ河。
「…そうなの?」
「…タルトだから、指輪が入ってるかも。」
…優人が言った。
「…クイニーアマンは災いの鎖を
切る力があるって、古い言い伝えがあるってさ♥」
…火海が言った。
「…鎖?」
「…そう、紡ぎ。」
…平家一族の火海が続けて言った。
「…長めの赤いリボンを結んで…」
そう言うと、もなみは茜に頼んで
妖から赤いリボンをもらうと、
結び目に一つ目は花束を、二つ目は
ビスケットやクッキーのお菓子を、
三つ目はバスセットを結んだ。
「…こう?」
「…うん。」
…彦火が頷いた。
「…結び目のプレゼントを
一つずつひらいて。」
…烏天狗の天ノ河がプレゼントをはずした
リボンを花結びにして、部屋に飾ってゆく…。
「…ユ夢めを、食べる。」
…もなみが呟いた。
❀❀❀
「…竜(りつ)、どこにいるんだろう。」
…あノ世の喫茶店で、ホットコーヒーを
飲みながらゐすゞが言う。
❀❀❀
「…そう。」
「…考えすぎ。」
…茜が楽しそうに言う。
天ノ河がミュージックボールを
指差したら、流れ星が流れた。
「…みんな星座になったんですか?」
「…え‐?!(全員)」
「…アンタレス。」
「…天秤ね。」
彦火が星空にお化け天秤を浮かべて
砂糖のついたお菓子の寒天を乗せてゆく。
「…じゃあ、次は、あノ世喫茶ね。」
…次の集まりは、そこで決まり!
❀❀❀
…あノ世の喫茶店…
花化野の近く、おかげの入ったコーヒーを入れる。
「…こっちだよ。」
「…わ‐い!」
若颯と花音が店内を走り回っている。
こんもりとしたファットな胴体に
ずんぐりっとした大きな山みたいな魂の形を
した一つ目のお化けがマスターをする。
黄色や緑色をした体に狐の耳や
鹿の尻尾がついた手足の長いお化けの
お客さんが座っている。
「…マスター。目玉入りの
カフェアフォガードひとつ。」
帽子を被った動物のお化けが
カウンターで注文する。
壁にかかったタペストリーの悪魔が
ニンジンがほしいと言っていた。
悪魔は風船みたいに空に浮いていて、
小さな体で人の言葉を話す生き物だった。
ぼっこ達が口々に物を言う。
ぼっこが口に運んだ血の池地獄入りの
クリームソーダを分けっこする。
「…はい!あ‐ん、して。」って
スプーンでアイスクリームをすくう仕草を
すると、口に運ぼうとしてさっと食べていた。
鬼の使いをする花茨ノ君が
三つ目スライム入りのコーヒーフロートを
食べていた。
「…探し物は?」
「…ゐすゞね。」
「…ちがう。」
…若宮が甘くささやく。
「…もなみ。」
…ちがうのね。…
「…魂を食べちゃうぞ。」
「…やだ。」
…カラリン。とbellが鳴って、
赤い靴を履いた踊る足だけの幽霊と
足のない少女のゴーストが店に入ってくる。
「…今し方、みかけたわ。」
…足のない少女は言う。
「…橋のふもとにある
駄菓子屋に行けばいい。」
…赤い靴を履いた踊る足だけの幽霊は言った。
「…駄菓子屋ね。」
…もなみは分かったと言って、手を上げた。
…マスターが宝島の地図メニューを
渡して、砂糖とレモンとミント入りの
お冷と猫の手おしぼりをテーブルまで届けた。
…テーブルにマスターの目玉が落ちる。
〈こノ世〉と〈あノ世〉の使いをする
掬矢名タ姫乃ゐ琴が鳥の被り物をし、
アンティークドレスを着て、
アイスロイヤルミルクティーを飲んだ。


