…涼しい秋の風が
萩の穂を揺らした朝のこと…
宮中で平家一族がばたばたと走り回っていた。
「…宮中に暗書が届いたぞ。」
「…暗書ォ?!」
「…ど、どこどこ?」
「…依頼文書のことです。」
「…みせて。みせて。」
平家一族の人たちが暗書を手に、
朝ご飯の支度を
していたもなみたちを横目に、
慌てたようにいっていた。
小さな目玉のない妖たちが
ショックをうけたような顔をする。
…がぁん!
〈 探してください 〉
「……(全員)。」
「…誰を?!」
御台所でいた全員が声をそろえて言う。
「…妖からの依頼ですね。」
お手伝いさんの茜が言う。
「…〈ゆらめき〉みて。」
もなみがタコさんウインナーを
お皿から取って、ひとくち食べる。
「…ええっと、妖のティアラ、と。」
隣市の朝の野菜売りの声が宮中まで響く。
「…ティアラ。おいで…」
平家一族が呪文を唱えて、妖を召喚する。
白い煙がたって、ぼわん!と
胡桃を持った栗鼠の妖があらわれた。
「おな‐り‐!(パチパチパチ)」
胡桃の実が転がり落ちてゆく。
…えへん!…大威張り!
「何を隠そう、
このティアラ様がやってきた!」
あらわれたのは、
胡桃の木のおかげのついた
栗鼠のお化けだった。
強気の発言がチャームポイントになる。
「…どうしたの?」
「…さる高貴なお方の橘様の
お使いでまいりました。ティアラです。」
栗鼠は急に態度を翻して、恭しく言った。
「…橘様が病気で床に
臥せっておいでですので、
この花荻野ノ国に幽世から
なかなか来ることができません。」
「…それで、宮中のもなみ殿に
幽花世まできていただいて、
さる宴会をなそうと思っております。」
「…私を?」
「…はい。」
「…橘様の病気が良くなれば、
あの二人が結婚できると思って…。」
栗鼠は途中まで言うと、
言い過ぎたとはたと手で口を覆った。
「…どういうこと?」
もなみは問いかける。
「…橘様は幽花世の大神様でいらっしゃいます。」
「…この花荻野ノ国のお宿まちの
端にある茶屋でご内密に働かれており、
結婚相手の竜(りつ)殿と
一緒に夜逃げされてしまった、
と言われています。」
「…そりゃ、びっくりする。」
「…だから、表向き床に
臥せってるってことになってるわけ?」
「…そういうことだね!」
栗鼠のお化けが胡桃の実を
カリカリかじっている。
「…替え玉ってこと?」
「…つまりは、しばらくの間、
桜恋宮楼でお取次ぎ致しとうございます。」
「…え‐!」
「…というのも、またの機会に
よろしゅうございます。」
「…お迎えに上がりますので、
その時までにお待ちしておいでください。」
「…は‐い。」
平家一族が言う。
「…それで、橘殿は政略結婚とか?!」
「…そうでは、ございませんけど。
おちこんでいらっしゃいます。」
「…なるぼとね。」
平家が頷く。
「…それで、さる高貴な素戔嗚尊殿に
幽花世の橘様の縁結びをお願いしとうございます。」
「…あい。分かった。ありがとう。」
「…それでは。」
栗鼠はいくつか胡桃を取り出すと、
かじって食べると、
「…おいしい。」
と、言って、
しばらくしてドロン!て消えた。
萩の穂を揺らした朝のこと…
宮中で平家一族がばたばたと走り回っていた。
「…宮中に暗書が届いたぞ。」
「…暗書ォ?!」
「…ど、どこどこ?」
「…依頼文書のことです。」
「…みせて。みせて。」
平家一族の人たちが暗書を手に、
朝ご飯の支度を
していたもなみたちを横目に、
慌てたようにいっていた。
小さな目玉のない妖たちが
ショックをうけたような顔をする。
…がぁん!
〈 探してください 〉
「……(全員)。」
「…誰を?!」
御台所でいた全員が声をそろえて言う。
「…妖からの依頼ですね。」
お手伝いさんの茜が言う。
「…〈ゆらめき〉みて。」
もなみがタコさんウインナーを
お皿から取って、ひとくち食べる。
「…ええっと、妖のティアラ、と。」
隣市の朝の野菜売りの声が宮中まで響く。
「…ティアラ。おいで…」
平家一族が呪文を唱えて、妖を召喚する。
白い煙がたって、ぼわん!と
胡桃を持った栗鼠の妖があらわれた。
「おな‐り‐!(パチパチパチ)」
胡桃の実が転がり落ちてゆく。
…えへん!…大威張り!
「何を隠そう、
このティアラ様がやってきた!」
あらわれたのは、
胡桃の木のおかげのついた
栗鼠のお化けだった。
強気の発言がチャームポイントになる。
「…どうしたの?」
「…さる高貴なお方の橘様の
お使いでまいりました。ティアラです。」
栗鼠は急に態度を翻して、恭しく言った。
「…橘様が病気で床に
臥せっておいでですので、
この花荻野ノ国に幽世から
なかなか来ることができません。」
「…それで、宮中のもなみ殿に
幽花世まできていただいて、
さる宴会をなそうと思っております。」
「…私を?」
「…はい。」
「…橘様の病気が良くなれば、
あの二人が結婚できると思って…。」
栗鼠は途中まで言うと、
言い過ぎたとはたと手で口を覆った。
「…どういうこと?」
もなみは問いかける。
「…橘様は幽花世の大神様でいらっしゃいます。」
「…この花荻野ノ国のお宿まちの
端にある茶屋でご内密に働かれており、
結婚相手の竜(りつ)殿と
一緒に夜逃げされてしまった、
と言われています。」
「…そりゃ、びっくりする。」
「…だから、表向き床に
臥せってるってことになってるわけ?」
「…そういうことだね!」
栗鼠のお化けが胡桃の実を
カリカリかじっている。
「…替え玉ってこと?」
「…つまりは、しばらくの間、
桜恋宮楼でお取次ぎ致しとうございます。」
「…え‐!」
「…というのも、またの機会に
よろしゅうございます。」
「…お迎えに上がりますので、
その時までにお待ちしておいでください。」
「…は‐い。」
平家一族が言う。
「…それで、橘殿は政略結婚とか?!」
「…そうでは、ございませんけど。
おちこんでいらっしゃいます。」
「…なるぼとね。」
平家が頷く。
「…それで、さる高貴な素戔嗚尊殿に
幽花世の橘様の縁結びをお願いしとうございます。」
「…あい。分かった。ありがとう。」
「…それでは。」
栗鼠はいくつか胡桃を取り出すと、
かじって食べると、
「…おいしい。」
と、言って、
しばらくしてドロン!て消えた。


