ゐ二し古ゑ乃宮中妖りんレん花恋絵巻

…鈴(レイ)が古ぼけた夜中のお店で、
たくさんの妖たちに見守られながら…

…青いチューリップをもなみに手渡す…

…これが月花藍鈴草
(つきはならんりんそう)と

…呼ばれる由縁である…

それは、こノ世で最も恋しい人に贈る、甘く薫る
二藍の淡桃にチューリップの咲く直衣(なおゐ)だった…


…空花世(うつしよ)の花夢月の四ッ刻…

春先、庭に赤い木瓜の花の咲く宮中の
〈春の花ノ戸〉で、幼いもなみと鈴(レイ)は

白い花ててふをとって、遊んでいた。

   …てふてふを、追いかけて…

     …つかもふか…
      …むすほふか…

     …つかもふか…
       …むすほふか…

    ‐…あなたに、会いたくて…‐


     …仄かに匂ふ香のかほり…

        かけよる私は、

       …つかもふか…
         …むすほふか…

       …つかもふか…
         …むすほふか…

        …そうしたら…
 

      …ててふが舞い込んでくる…

         …そうしたら…

        …そうしたら…


         …つかまえた…


        ‐…抱きしめた…‐

    …両手を広げて抱きしめた、あなた…

        …私を、ててふを、
         …抱きしめる…

      …抱きしめる…

       …抱きしめる…
      …抱きしめる…

       …抱きしめる…

     …想ゐ出すあなたヲ…

     あなたを、そう…想ふのに、
      …てふてふのように…

     …この手ヲ、すり抜けてユク…

      …わたし、だけのもの…

    ‐…あなただけヲ想ゐ描いて、
       いて…そう、いて ほしい…‐

      …つかまえた…ててふヲ、

        …抱きしめた…

…鈴と一緒に遊んだ、この幼い頃の
おぼろげな記憶は、空花世にいる

もなみと鈴の輪郭をくっきり写した。

…もなみはつかまえた花ててふを
手に鈴に向かって、笑ってこう叫んだ。

…あなたをとても愛しいと想っている…

  「…もう一回、寝たいゾ♥」

 「…そ‐ゆう、人でしょ♥?!わら」

   (…大好きだよッ♥…)

  「…そ‐ゆうカンケ‐♥!わら」


…春花山に白雪の積もる十七年の
長い刻が経ち、二人は二十ニ、二十三に…


❀❀❀


‐…月の雫の垂れる夜に、一刻一刻
月がかげるごとに、桜花ははかの実がなる…‐


…桜花ははかノ花の舞い込む疾風ノ刻…

…おかげののった春風のなかを…
…鈴(レイ)ともなみ…

結ばれた二人が喜び合いながらかけてゆく…。


ねじ曲がった時空のひずみにある
桜花ははか乃野…このtimesliphallに行っては、

鈴は、小さく春息吹をついた。

「…恋しい人、あなたヲ
想い出さずにはいられなかった…。」


❀❀❀


さぁさぁ小雨の降る小道をゆくと、
鈴は勿忘草の咲く野の続く

…小屋の端を走っていった。

小屋の傍を抜けると、
楠の木の立ち並ぶ森につく。

鈴は水たまりの近くにどろんこになって
落ちた桜花ははかの実のイヤリングを拾って、

ポケットに突っ込んだ。

「…僕じゃないと、いけないんです♥!」


…夢輝星に瞬く、夜半の月夜のかげる日に、
桜花ははかの実を摘む。

そして、その桜花ははかの枝からとれる…

甘い花蜜を小瓶に入れ、その実を浸す。

人差し指を花の懐剣で切って、
その人差し指から流れ出た、

人魚の血を一滴垂らすと〈花血蜜〉なる秘薬ができる。

‐…その〈花血蜜〉を飲むと、永遠の恋が叶うという…‐


……                      ……
 …                      …


花荻野ノ国 AM10:00 -
〜Denmark . copenhagen .  PM10:00 -

そこは、
christmasの夜に魔法がかかった

フランスの桃色の岩塩の入った
クロッククッキーやchocolateでできた

お菓子の家だった。

クッキーやビスケットでできたドアや
大きなアメの形をした小窓に

カラフルな作りの屋根、丸みを帯びた
デフォルメの小さな家だった。

春のおぼろ風(おぼろる)の
舞い込む夜に鈴はその家のドアを叩いた。

…カラリ‐ン。

薔薇の鉢植えのなかに眠っていた小人が
人が来るのをみて、ランタンのなかの火を消して

油入れの取っ手をとると、下に引っ張った。

この魔法のお菓子の家は、
カラクリが回ると、季節の扉が開く。

この花荻野ノ国ではtimesliphallの
修復がネジやバネを使った機械で

動いていることが多くて、
手作業の修理に時間がかかることが多い。

今回のクライアントも厄介だ。

christmasの魔法のかかった
クッキーを一口かじると、

timesliphallに無花果ジャムがつく。

可愛い茶色いくまちゃんのアイシングクッキーで
できたドアを開ければ、春から冬へ季節が変わった。

鈴のいる花荻野ノ国では、
このドアを開けると…

冬のcopenhagenへとつながっていた。


…copenhagen…

ボイラーの火が零れ落ちていて、
煙突から黒い煙が立ち上っている。

christmasのイルミネーションが
この街を飾る雪の夜に彼は叫んだ。

「…ど‐ゆう、ことですかッ?!」

部屋のなかに入ると、鈴は

体格のいいレティに噛みつくように
いうと、鈴はchristmasプレゼントの

一つを掴むと、近くのソファに放り投げた。

さっきいた小人にもらったものだ。

timesliphallを抜けてきたせいか、
まだ白雪の積もるこの街は

彼の纏う空気の、
春のおかげに違和感を感じていた。

「…僕じゃないなんて、考えられません!」

「…ほんとは僕だったって、彼女が言ってたんです!」

christmas marketのモミの木の下に
プレゼントがいっぱい置いてある街並みの

なかの一つの家に、人魚が海から歩いてきて
部屋のドアを開ける。

「…待って!」

彼女は赤毛のロングヘアーに栗色の愛夕瞳、
細身で華奢な姿にコリンヌという名前が

ついていた。

「…ミスレティ♥!」

レティは鈴の顔をじっと見つめると、
しばらく考えてゆっくりドアのほうをみた。

「…待ってたわ。」

まだ暗い真夜中の雪の降る中、
大きな体のレティは彼女の外套を取る。

彼は、

for youと描いたHEARTをもったくまちゃんの
アイシングクッキーのドアをコンコンを叩いた。

「…はい。」

…花荻野ノ国の秋のお部屋で
もなみは無花果のジャムに赤ワインを

入れて、ジャムを作っていた。

「…彼だけだったって、顔に描いてる。」

すると、もなみは小人からお菓子の家の
壁の砂糖漬けのサブレを1枚とって、

鈴の口に放り込んだ。

「…それで??」

もなみはクッキーにジャムを塗っていく。

作り立てのジャムクッキーに
手を伸ばしながら鈴はもなみの方をみて言った。

「…だから、ほんとは僕だってことでしょ♥??」

「…そうそう♥鈴だけだよ♥!」

もなみはもう一つ瓶に詰めたできたばかりの
苺ジャムをクッキーにおいて、鈴の口に突っ込んだ。

…ドアごしに隣の部屋をまたぎ、
レティは、部屋の暖炉の上にある

甘い香りのする〈花血蜜〉を
魔法の鍋のなかで、くるくるかき混ぜている。

「…それと、これと、どう関係が?」

…小人が話を聞いて、言う。

「…あら、可愛らしいイヤリングじゃない!」

レティが言う。

「…これ、桜んぼね…。」

レティがどろんこになった手からloop hallにあった
イヤリングを受け取ると、コリンヌが言った。

「…ちがう!」

「…loop hallはとても危ない!」

「…行ってはいけなかった!!!」

小人が鉢のなかの薔薇の花を摘んで、
花瓶に生けている。

「…そう。」

もなみは瞳を瞬かせて、
鈴の顔をじっとみる。

「…あなたにしか、
わからないことがあるんです。」

…ど‐ゆう、ことなんだろう。

「…大変!」

もなみは目を見開いて、
鈴の雨に打たれて

どろんこになった姿をみる。

かちゃかちゃと花血蜜の瓶の音がして、
レティがお薬を合わせていった。

「…やっぱり!」

「…悪魔が心臓を掴んでる!!!」

鈴のどろんこになった姿にタオルを
持ってくると、コリンヌが鈴に手を伸ばす!

「…あっ!」

悪魔がつながった魂の器を食い破っている!

鈴の心臓がそのままtimesliphallで
もなみの心臓につながっていた。

「…危ない!!!」

loop hallにtimeslipした玲斗の心臓は
泥だらけになった胸の砂の跡を

もなみの手で拭ってゆく。

「…心臓がすり替えられてる!!!」

悪魔の心臓は花血蜜を流すと、
悪魔との契約が切れるという。

「…危ない!!!」

「…きゃっ!」

悪魔が空を飛んできて、もなみの
背中に花紅色の薔薇の硝子の欠片を

…差し込んできた。

「…いたっ!!!」

「…それって、桜んぼってこと?」

小人さんが言う。

鈴がイヤリングにたわわになった
桜花ははかの実を摘み取り、レティに渡した。

「…じゃあ、花恋絵巻じゃない?」

すると、どろだらけの鈴が

花恋絵巻を広げると、
鍋にくべている花血蜜を掬いあげて、

花恋絵巻に一滴垂らして
筆で何か書き始めた。

「…うう。」

背中に硝子の欠片が食い込んでくる。

「…やめて!」

コリンヌが鈴のポケットのなかに
入った桜花ははかの実を掴むと、花血蜜を

くべている鍋に放り込む。

「…eat me♥!」

すると、ぐつぐつ火にかけた
魔法の鍋から悪魔がでてきて

スグリとベリーのパイが話しかけてくる。

かぼちゃのランタンみたいな尖った歯に
鬼灯みたいな目に黒いすすコケた姿、それに、

しっぽが生えてた愛らしい悪魔がパイにのっている。

お鍋の底に沈んだイヤリングがことこと煮詰まる。

いかにも可愛らしい姿とはいえない。

「…お前の大事な物と
引き換えに欲しいものをやろう。」


…らぁん。…らぁん。

雪が降るDenmarkの街並みを照らす
アメ色のビジューアテードに

常世にある…桜花ははかノ杜の鐘が鳴る。

もなみの魂が桜花ははかノ杜で
花鞠を転がして遊んでいる。

「…あっちの鞠は、一ノ宮さん…。
…こっちの花は、二ノ宮さん…。」

…水たまりの円を描いて、
鞠を放り投げては

遊び歌を、もなみが口づさむ。

…鈴の描いた花恋絵巻から
絵が飛び出してきては、人はそれを魂と呼ぶ。

花ノ墨で滲んだ花恋絵巻は物語のなかで桜の花の
舞い込む花吹雪になって、そうして淡い光に包まれる。

黒くすすけた悪魔の言葉に、

勿忘草色の雨が降り、ポツポツと
花恋絵巻にできたしみが黒く滲む。

花恋絵巻に琴ノ花(コトノハ)が浮かんでくる。


…あなたのほんとに大切なものは、なんですか?…


悪魔は意地悪そうに笑うと、
鈴の持っていた桜花ははかの実と

共に空色の雨になって消えた。

「…あっ!!!」

もなみの背中に薔薇の欠片が
刺さると、耳が聞こえなくなった。

…何も聴こえない!

「…あ‐ッ。」

美しい歌声が自慢だったもなみの声もでなくなった。

「…悪魔の心臓に花血蜜を流すといい。」

庭の綺麗な薔薇の花園が広がるところで
もなみが一輪花を摘み取ると、悪魔にばらまいた。

「…ちがう。」

「…世界中で誰よりも、あなたが欲しい…。」

花の懐剣で悪魔の心臓を一突きして、
心臓に流れた悪魔の血を一滴もなみは飲み込むと、

体中に痺れがきて、悪魔になった。

「…悪魔だッ♥!」

コリンヌが花血蜜を心臓に流して、
悪魔との契約を破棄すると、

悪魔になったもなみに鈴が
手を取ってぐるんと回ってdanceをする。

花血蜜の瓶に楠の葉と波ノ花と
わたの水、桜ノ穂をまぜて、

桜花ははかの実、くぐつ人形のもなみの
血をまぜて花血蜜を作る。

クロッククッキーの家は閉ざされた城のよう。

つながれた白い部屋は、積み木で遊ぶ
子どもたちの声がして、明るい灯火がする。

花茨でできたその城の大広間から入った
女王の部屋に魔法の鏡があって、

その魔法の鏡の中に入ると、勿忘草の
花畑の広がった野について、しばらく歩くと、

白い部屋はクロッククッキーの
香りがして、お菓子の家になった。

「…預かっていたあなたが選んだ指輪を渡すわ。」

「…うん。」

「…さぁ、頑張って♥!」

レティが鈴の背中を押す。

「…でも、本当に好きな人で
縁結びしないといけないから…

だから、それはお前ってことね。」

「…えぇ?!私ッ?!!」

コリンヌが慌てたように言った。

「…もなみ、あなたよ!」

「…つまり、私が愛してるって
想うのは、鈴、一人だけだよッ♥」

「…世界中で誰よりも♥!」

花血蜜のお鍋から離れて、

もなみが子ども達と一緒に
一個ずつクッキーを切っていく。

この生地がからまって、もみくちゃになる。

ハートの型を手にとって、子ども達に
くり抜いた生地にハートのクッキーを

プレートの上に置いてゆく。

「…そんなに好きなんだ。」

「…うん!」

「…まさかカクザトウじゃあるまいし!」

「…幽閉って、こと?」

「…そ‐じゃないけど!」

「…cafeに行けばい‐のよ♥!」

レティが困ったように言った。

「…そんなに捕まっちゃう人いないわ!」

「…手錠が指輪になって、
牢がお菓子の家になったら

ここから逃げ出せるわ♥!」

「…鈴、一緒に
ここから連れ出してあげるから!」

もなみは鈴の手を引いて、
花ブルーのエプロン姿のまま

お菓子の家を出ていく。

chocolateの煙突からわた菓子が
でていて、薔薇の花の咲く庭は

1枚の絵のようで、とても美しかった。

2時の振り子時計の鐘がなった
薔薇の花園のなかで、鈴がもなみに言う。

「…これから僕にどんなことがあっても、
愛しているのは、もなみだけだと想う。」

「…鈴…私も。」

空花世(うつしよ)を二人でみに行こう。

窓際からみえたbed♥の傍で
月明かりのなか指輪を交換する。

薔薇に飾られた城で魔法の鏡を覗くと、

汽笛の音と共にお菓子の家の周りを
白い鳩が空を飛び舞う。

そして、花恋絵巻を読んで
近い未来で二人の子どもができるのを知った。

…鈴と甘いkissをする…。

花茨の森のなかで小鳥のさえずりを
聞きながら、女王は…目が覚める…。


❀❀❀


チェックアウトが少し遅れたけど、

…もなみは花桃色の春コートを翻して、
近くのスタバに入ると、青いカップに入った

コーヒーを頼む。

鈴はカウンターにホテルのキ―を置いた。

スタバのマスターに入れてもらった
苺のキャラメルマキアートを

一口飲んでそれを机に置くと、
もなみは鈴にコーヒーを渡した。

「…またいつもみたいに笑って♥」

「…ダーリン♥」


……                       ……
 …                       …

…Denmark…
…Copenhagen…

〈Tivoli〉

…刻はかねて、12月24日。
…今日は、クリスマスイヴ。

…サンタクロースの雪降る夜…

…初雪の降るこの街にイルミネーションの光が輝く…。

…白や赤や緑に飾られた星屑の瞬くこの夜にゆく…
クリスマスマーケットが楽しげな笑い声のなかに揺れる。

厚手のコートにイチゴにchocolate dipを食べて。
chocolate stickの入ったhot cocoaにviscuitを添えて。

❀❀❀

…カチ。カチ。カチ。 …桜天秤の重りが揺れる…。

…時空をこえた、渦をまいた花ノ疾風刻…

大気の壁に穴があいて、花の渦がとけた
御魂の霊花イ〈レイカイ〉になったもの…が

桜天秤とともに、揺れる。

❀❀❀

金のイルミネーションのガーラントのなか、
ゲートが開く。真夜中の遊園地…。

ウェディングドレスを着て、幽体になった
妖たちと一緒に、メリーゴーランドに乗る。

コーヒーカップに乗って、
くるくるテーブルの上を回る。

後は、街中見下ろせる観覧車!

キラキラ光るイルミネーションに揺れる
街と観覧車はとても綺麗だった。

…ボーン。…ボーン。…ボーン。
……午前0時。

…振り子時計の鐘が鳴る。

「…結婚おめでとう!」

…チボリ公園の教会のミサ。

教会のなかにぽっくり浮かんだ花海に
幾千の魚たちの妖精の群れが人魚の歌声と共に祝福する。

星のクルクルキャンディ棒のstickを持った
天使たちが空を飛んで、カゴに入れた花束を

ふわ…っと花嫁にかけながら喜びの声をかけた。

正装した牧師が教典を手に教壇に立つ。
パイプオルガンの音が響く。

「汝、病めるときも健やかなるときも、
富めるときも、貧しきときも、互いに愛し、敬い、

支え合うことを誓いますか。」

竜王と王女は二人とも手を取り、誓い合う。

「はい、誓います。」

ケラケラ(一つ目小僧のお化け)や
ケセランパサラン(鼓草の小人のお化け)などの

妖たちが声を上げる。

竜王は言った。

「…結婚してほしい。」

栗色の腰まであるふわふわパーマのロングヘアの
王女は、美しい面顔と大きな瞳を振るわせて願った。

「…この結婚がいつまでも叶いますように。」

Frouxのサクラコフレをエンゲージリングの代わりに
…そっと彼女の目の前に渡して、竜王は、その草薙ノ剣に

…星や花やハート柄のダイヤモンドやビジューを
霊剣に埋め込んで飾った細長いスティック状の六角形の
クリスタルの形をした霊剣…に、

…誓いを立てる。

「…竜王一族の名において…。」

ゆるふわパーマの茶髪に頬に無数の三ツほくろ、
蘇芳色の直衣を着た竜王は、その美しい横顔をみせて言った。

…竜王はス咲乃オ乃ゐ琴、
王女は眠り姫と呼ばれていた。


胸元から肩にかけてクロスしたチュールが
花々を飾る腰元のリボンが華やかな夢色の

チュールドレスを着た王女が両手を握って祈りを込める。

白金の果物を形どった宝石でできたtiaraに白いレースの
チュールのベールをふわ…っと上げて、彼女は誓いの

…kissをする…。

…竜王と王女は二人甘いkissをする…

頬を伝う涙が宝石となって、ポロポロと床にちらばった。

…たくさんの人たちに愛されて、
たくさんの妖たちに囲まれて、

お祝いの声と花畑とライスシャワーに
包まれて、二人バージンロードをかけてゆく…。

…バンッ!
…突然、教会のドアが開く。

ホテルのキーが桃色の天然石の床に
かちゃん!と、音を立てて落ちた。

黒いシャツに黒いスーツ、
癖のある黒髪に香水の香りのする

彼が、

…二人の目の前に立ちはだかる。

「…どうしても叶えたい、ものがある…。」

…ぼっこ(子どもの妖怪)たちがやんや言う。

「…お前、そうだろ!」
「…ちがわい!」

…片手をドアの横において倒れかかる
ようにして花嫁に話しかける。

「…私の嫁になってほしい。」

「…え?」

土でできたくぐつ人形が鬼にかわって、
二人の周りを取り囲む。

すると、

王女の前に天秤を持った、老婆の魔法使いが現れた。
妖おこじょが天秤に乗っている。

「…この天秤を揺らして!」

「…天秤?」

…老婆が声を張り上げると、
王女は天秤を揺らして、夢の重りをのせたら

眠りについてしまった…

‐…千年の眠りにつく…‐

「…この呪いは、千年は続くだろう。
それまで長い間王女は、眠り続けるだろう…。」

魔女が高笑いして、教会をでていく。

…竜王が手を伸ばす。
土鬼がそれをかわして、彼が腰をついた。

…ドスン!
竜王の腹に拳が届く。

竜王の意識が遠のいた…。

黒服の彼が王女を横抱きにすると、
…ガッシャーンッ!

ステンドグラスの窓を割って、
光の欠片の舞う粉雪の降るtivoliのなかを

サンタクロースのそりに乗って
土鬼とともに去ってゆく…。

ガラスの飛び散った教会のなかで
舞い込んだ雪風と共にロウ束の光が

…ふっとかき消えた。

……                     ……      
 …                     …

…カチ。カチ。カチ。カチ。…カチリ。

…白金の桜天秤の重りが揺れ止まる。


‐…千年の刻をこえて、花恋絵巻が幕を開ける!…‐