ゐ二し古ゑ乃宮中妖りんレん花恋絵巻


‐…月の雫の垂れる夜に、一刻一刻
月がかげるごとに、桜花ははかの実がなる…‐


さぁさぁ小雨の降る小道をゆくと、
玲斗は勿忘草の咲く野の続く

…小屋の端を走っていった。

小屋の傍を抜けると、楠の木の森につく。

玲斗は水たまりの近くにどろんこになって
落ちた桜花ははかの実を拾って、ポケットに突っ込んだ。

「…僕じゃないと、いけないんです♥!」


…夢輝星に瞬く、夜半の月夜のかげる日に、
桜花ははかの実を摘む。

そして、その桜花ははかの枝からとれる…

甘い花蜜を小瓶に入れ、その実を浸す。

人差し指を花の懐剣で切って、
その人差し指から流れ出た、

人魚の血を一滴垂らすと〈花血蜜〉なる秘薬ができる。

‐…その〈花血蜜〉を飲むと、永遠の恋が叶うという…‐


「…ど‐ゆう、こと?」

christmas marketのモミの木の下に
プレゼントがいっぱい置いてある街並みの

一つの家に、人魚が海から歩いてきて
部屋のドアを開ける。

「…待って!」

彼女は赤毛のロングヘアーに栗色の愛夕瞳、
細身で華奢な姿にコリンヌという名前が

ついていた。

「…ミスター♥!」

「…待ってたよ。」

暗い真夜中の雪の降る中、
大きな体のレティは彼女の外套を取る。

そこは、
christmasの夜に魔法がかかった

フランスの桃色の岩塩の入った
クロッククッキーやchocolateでできた

お菓子の家だった。

茶色いくまちゃんのアイシングクッキーで
できたドアをコンコンを叩く。

「…はい。」

魔法の鍋のなかの甘い香りのする

〈花血蜜〉が
くるくるかき混ぜられている。

「…これ、桜花ははかの実。」

どろんこになった手からloop hallにあった
桜花ははかの実を受け取ると、コリンヌが言った。

「…ちがう!」

「…loop hallはとても危ない!」

「…行ってはいけなかった!!!」

もなみは瞳を瞬かせて、
玲斗の顔をじっとみる。

「…あなたにしか、
わからないことがあるんです。」

…ど‐ゆう、ことなんだろう。

「…大変!」

もなみは目を見開いて、
玲斗の雨に打たれて

どろんこになった姿をみる。

かちゃかちゃと花血蜜の瓶の音がして、
レティがお薬を合わせていった。

「…やっぱり!」

「…悪魔が心臓を掴んでる!!!」

玲斗の歪んだ顔の切り裂いた
胸の傷跡にコリンヌが手を伸ばす!

「…あっ!」

悪魔がつながった魂の器を食い破っている!

玲斗の心臓がそのままtimesliphallで
もなみの心臓につながっていた。

「…危ない!!!」

loop hallにtimeslipした玲火の心臓は
深くついた胸の傷跡を血だらけになった

もなみの手で止めてゆく。

「…心臓がすり替えられてる!!!」

悪魔の心臓は花血蜜を流すと、
悪魔との契約が切れるという。

「…危ない!!!」

「…きゃっ!」

悪魔が空を飛んできて、もなみの
背中に花紅色の薔薇の硝子の欠片を

…差し込んできた。

「…いたっ!!!」

「…それって、花恋絵巻ってこと?」

すると、どろだらけの玲斗が

花恋絵巻を広げると、
鍋にくべている花血蜜を掬いあげて、

花恋絵巻に一滴垂らして
筆で何か書き始めた。

「…うう。」

背中に硝子の欠片が食い込んでくる。

「…やめて!」

コリンヌが玲斗のポケットのなかに
入った桜花ははかの実を掴むと、花血蜜を

くべている鍋に放り込んだ。

「…eat me♥!」

すると、ぐつぐつ火にかけた
魔法の鍋から悪魔がでてきて

スグリとベリーのパイが話しかけてくる。

「…お前の大事な物と
引き換えに欲しいものをやろう。」

悪魔は意地悪そうに笑うと、
玲斗の持っていた桜花ははかの実になって消えた。

「…あっ!!!」

もなみの背中に薔薇の欠片が
刺さると、耳が聞こえなくなった。

…何も聴こえない!

「…あ‐ッ。」

美しい歌声が自慢だったもなみの声もでなくなった。

「…悪魔の心臓に花血蜜を流すといい。」

庭の綺麗な薔薇の花園が広がるところで
コリンヌが一輪花を摘み取ると、悪魔に投げた。

「…ちがう。」

「…世界中で誰よりも、玲斗が欲しい…。」

花の懐剣で悪魔の心臓を一突きして、
心臓に流れた悪魔の血を一滴もなみは飲み込むと、

体中に痺れがきて、悪魔になった。

「…悪魔だッ♥!」

コリンヌが花血蜜を心臓に流して、
悪魔との契約を破棄すると、

悪魔になったもなみに玲が
手を取ってぐるんと回ってdanceをする。

花血蜜の瓶に楠の葉と彼が拾った椎の実を
まぜて、波の花とわたの水、桜ノ穂に

桜花ははかの実、くぐつ人形のもなみの
血をまぜて花血蜜を作る。

クロッククッキーの家は閉ざされた城のよう。

つながれた白い部屋は、積み木で遊ぶ
子どもたちの声がして、明るい灯火がする。

花茨でできたその城の大広間から入った
女王の部屋に魔法の鏡があって、

その魔法の鏡の中に入ると、勿忘草の
花畑の広がった野について、しばらく歩くと、

白い部屋はクロッククッキーの
香りがして、お菓子の家になった。

「…預かっていたあなたが選んだ指輪を渡すわ。」

「…うん。」

「…さぁ、頑張って♥!」

レティが玲斗の背中を押す。

「…でも、本当に好きな人で
縁結びしないといけないから、お前ってことね。」

「…えぇ?!私ッ?!!」

コリンヌが慌てたように言った。

「…もなみ、あなたよ!」

「…つまり、私が愛してるって
想うのは、玲斗さん一人だけだよッ♥」

「…世界中で誰よりも♥!」

花血蜜のお鍋から離れて、

もなみが子ども達と一緒に
一個ずつクッキーを切っていく。

この生地がからまって、もみくちゃになる。

ハートの型を手にとって、子ども達に
くり抜いた生地にハートのクッキーを

プレートの上に置いてゆく。

「…そんなに好きなんだ。」

「…うん!」

「…まさかカクザトウじゃあるまいし!」

「…幽閉って、こと?」

「…そ‐じゃないけど!」

「…cafeに行けばい‐のよ♥!」

レティが困ったように言った。

「…そんなに捕まっちゃう人いないわ!」

「…手錠が指輪になって、
牢がお菓子の家になったら

ここから逃げ出せるわ♥!」

「…玲斗さん、一緒に
ここから連れ出してあげるから!」

もなみは玲斗の手を引いて、
花ブルーのエプロン姿のまま

お菓子の家を出ていく。

chocolateの煙突からわた菓子が
でていて、薔薇の花の咲く庭は

1枚の絵のようで、とても美しかった。

2時の振り子時計の鐘がなった
薔薇の花園のなかで、玲斗がもなみに言う。

「…これから僕にどんなことがあっても、
愛しているのは、もなみだけだと想う。」

「…玲斗さん…私も。」

こノ世を二人でみに行こう。

窓際からみえたbed♥の傍で
月明かりのなか指輪を交換する。

薔薇に飾られた城で魔法の鏡を覗くと、

そして、近い未来で
二人の子どもができるのを知った。

…玲斗と甘いkissをする…。

花茨の森のなかで小鳥のさえずりを
聞きながら、女王は…目が覚める…。


❀❀❀


チェックアウトが少し遅れたけど、

…もなみは花桃色の春コートを翻して、
近くのスタバに入ると、青いカップに入った

コーヒーを頼む。

玲斗はカウンターにホテルのキ―を置いた。

スタバのマスターに入れてもらった
苺のキャラメルマキアートを

一口飲んでそれを机に置くと、
もなみは玲斗にコーヒーを渡した。

「…またいつもみたいに笑って♥」

「…ダーリン♥」



第一宮

……                       ……
 …                       …

…Denmark…
…Copenhagen…

〈Tivoli〉

…刻はかねて、12月24日。
…今日は、クリスマスイヴ。

…サンタクロースの雪降る夜…

…初雪の降るこの街にイルミネーションの光が輝く…。

…白や赤や緑に飾られた星屑の瞬くこの夜にゆく…
クリスマスマーケットが楽しげな笑い声のなかに揺れる。

厚手のコートにイチゴにchocolate dipを食べて。
chocolate stickの入ったhot cocoaにviscuitを添えて。

❀❀❀

…カチ。カチ。カチ。 …桜天秤の重りが揺れる…。

…時空をこえた、渦をまいた花ノ疾風刻…

大気の壁に穴があいて、花の渦がとけた
御魂の霊花イ〈レイカイ〉になったもの…が

桜天秤とともに、揺れる。

❀❀❀

金のイルミネーションのガーラントのなか、
ゲートが開く。真夜中の遊園地…。

ウェディングドレスを着て、幽体になった
妖たちと一緒に、メリーゴーランドに乗る。

コーヒーカップに乗って、
くるくるテーブルの上を回る。

後は、街中見下ろせる観覧車!

キラキラ光るイルミネーションに揺れる
街と観覧車はとても綺麗だった。

…ボーン。…ボーン。…ボーン。
……午前0時。

…振り子時計の鐘が鳴る。

「…結婚おめでとう!」

…チボリ公園の教会のミサ。

教会のなかにぽっくり浮かんだ花海に
幾千の魚たちの妖精の群れが人魚の歌声と共に祝福する。

星のクルクルキャンディ棒のstickを持った
天使たちが空を飛んで、カゴに入れた花束を

ふわ…っと花嫁にかけながら喜びの声をかけた。

正装した牧師が教典を手に教壇に立つ。
パイプオルガンの音が響く。

「汝、病めるときも健やかなるときも、富めるときも、
貧しきときも、互いに愛し、敬い、支え合うことを誓いますか」

竜王と王女は二人とも手を取り、誓い合う。

「はい、誓います。」

ケラケラ(一つ目小僧のお化け)や
ケセランパサラン(鼓草の小人のお化け)などの

妖たちが声を上げる。

竜王は言った。

「…結婚してほしい。」

栗色の腰まであるふわふわパーマのロングヘアの
王女は、美しい面顔と大きな瞳を振るわせて願った。

「…この結婚がいつまでも叶いますように。」

Frouxのサクラコフレをエンゲージリングの代わりに
…そっと彼女の目の前に渡して、竜王は、その草薙ノ剣に

…星や花やハート柄のダイヤモンドやビジューを
霊剣に埋め込んで飾った細長いスティック状の六角形の
クリスタルの形をした霊剣…に、

…誓いを立てる。

「…竜王一族の名において…。」

ゆるふわパーマの茶髪に頬に無数の三ツほくろ、
蘇芳色の直衣を着た竜王は、その美しい横顔をみせて言った。

…竜王はス咲乃オ乃ゐ琴、
王女は掬矢名タ姫乃ゐ琴、と呼ばれていた。


胸元から肩にかけてクロスしたチュールが
花々を飾る腰元のリボンが華やかな夢色の

チュールドレスを着た王女が両手を握って祈りを込める。

白金の果物を形どった宝石でできたtiaraに白いレースの
チュールのベールをふわ…っと上げて、彼女は誓いの

…kissをする…。

…竜王と王女は二人甘いkissをする…

頬を伝う涙が宝石となって、ポロポロと床にちらばった。

…たくさんの人たちに愛されて、
たくさんの妖たちに囲まれて、

お祝いの声と花畑とライスシャワーに
包まれて、二人バージンロードをかけてゆく…。

…バンッ!
…突然、教会のドアが開く。

黒いシャツに黒いスーツ、
癖のある黒髪に香水の香りのする

彼が、

…二人の目の前に立ちはだかる。

「…どうしても叶えたい、ものがある…。」

…ぼっこ(子どもの妖怪)たちがやんや言う。

「…お前、そうだろ!」
「…ちがわい!」

…片手をドアの横において倒れかかる
ようにして花嫁に話しかける。

「…私の嫁になってほしい。」

「…え?」

土でできたくぐつ人形が鬼にかわって、
二人の周りを取り囲む。

すると、
王女の前に天秤を持った、老婆の魔法使いが現れた。
妖おこじょが天秤に乗っている。

「…この天秤を揺らして!」

「…天秤?」

…老婆が声を張り上げると、
王女は天秤を揺らして、夢の重りをのせたら

眠りについてしまった…

‐…千年の眠りにつく…‐

「…この呪いは、千年は続くだろう。
それまで長い間王女は、眠り続けるだろう…。」

魔女が高笑いして、教会をでていく。

…竜王が手を伸ばす。
土鬼がそれをかわして、彼が腰をついた。

…ドスン!
竜王の腹に拳が届く。

竜王の意識が遠のいた…。

黒服の彼が王女を横抱きにすると、
…ガッシャーンッ!

ステンドグラスの窓を割って、
光の欠片の舞う粉雪の降るtivoliのなかを

サンタクロースのそりに乗って
土鬼とともに去ってゆく…。

ガラスの飛び散った教会のなかで
舞い込んだ雪風と共にロウ束の光が

…ふっとかき消えた。

……                     ……      
 …                     …

…カチ。カチ。カチ。カチ。…カチリ。

…白金の桜天秤の重りが揺れ止まる。


‐…千年の刻をこえて、花恋絵巻が幕を開ける!…‐