あの受賞作を読めた方は、情報をください。

はじめに記しておく。
ここに記録するのは、ある小説をめぐって残された情報の断片である。

その作品は、某出版社が主催したモキュメンタリーホラーコンテストに応募され、優秀賞を受賞したものだ。
当時の受賞発表記事には、著者の喜びの言葉が掲載され、SNSには祝福のコメントがあふれていた。
受賞の事実に疑いはない。公的な記事も、スクリーンショットも複数残っている。
だからこそ、その後の経緯は不可解としか言いようがない。

現在、その小説は本文をどこからも閲覧できない。
タイトルでさえ、文字化けした記号の羅列になっている。
検索をかけても断片的なキャッシュが残るだけで、文章そのものは復元できない。
にもかかわらずだ。投稿された作品の、感想ノートと呼ばれる欄には、今もなお新しい書き込みが投稿され続けている。
その内容は一読して矛盾に満ちて、語り手ごとに異なる場面を描写している。
しかし、不思議なことに、ひとつの同じ物語を読んだ感想であるかのように収束しているのだ。

以下に示すのは、その小説をめぐって残された資料である。
受賞発表の記事、作者自身のSNSの投稿、匿名掲示板に立てられたスレッドの抜粋、そして感想ノートの記録。
私はそれらを時系列に並べる。誇張も脚色もしていない。ただ淡々と、事実を記す。

これが、あの受賞作をめぐるすべてである。