きっかけは小学四年生の頃だった。


それまでの友達付き合いは、純粋で、穢れがなかったのだと思う。


男女関係なく普通にしゃべったり、入り混じって鬼ごっこやドッチボールをしたりしていた。

これからも、そういう日々が続くと思っていた。


でも、その終わりは突然訪れることになる。


通院してから登校し、ちょうど休み時間に教室のドアを開けた瞬間。


いつもと空気が違うのが分かった。


男子たちはみんな校庭に出ていて、教室には女子が五、六人。

彼女たちは、中央に集まって何か話していたようだった。

いつもなら「楓おはよう!」と声をかけてくれるのだが、ドアが開いてから一瞬の沈黙があり、その後みんなはまた話し始めた。



私に気付いていないわけではない。



ちくん、と胸が痛むのと同時に、頭の中が真っ白になった。


無視された?どうして?

私、何か悪いことをしたのかな?

誰かを怒らせるようなことをしたのかな?

今みんなが話していることはさっきまで話してたことと違うよね。

さっきまで何を話していたんだろう?私のこと?


よくない妄想が浮かんでは、消そうとしたけど、

それがもう現実になっていることを感じずにはいられなかった。


「自分からおはようって言えば…」とも考えた。

でも、返事が返ってこないという未来が簡単に想像できてしまう。


結局私は、みんなが楽しそうに話す声が響く教室で、息を殺すように、ランドセルから教科書を出して机にしまったり、筆箱の中身を確認するふりをしたりしていた。



早く休み時間が終わってほしいと思ったのも、このときが初めてだった。