おばあちゃんを見送った後、お母さんと一緒に病室に戻ろうと売店の前を通ったとき、私の目にある物がとまった。


れは、折り紙の本。

その表紙には、おばあちゃんから教えてもらって作った、ぴょんぴょんとはねる蛙の折り紙が写っていた。

私はすぐに、心に決めた。


「お母さんわたし、この本買いたい。さっきおばあちゃんからもらったお金で」

お母さんは笑って言った。
「楓がおばあちゃんからもらったお小遣いだもん。好きに使っていいんだよ」


私はうなづくと、自分でレジへ行き、ポチ袋から千円札を取り出して本を買った。


おばあちゃんに教えてもらったことである程度の基本を身に付け折り紙が好きになったので、

もっといろいろな作品にも挑戦してみたかった、というのもある。


しかしこれは、寂しい気持ちに飲み込まれないための自分なりの作戦だったとも言える。


病室に戻ったら私は一人。その現実は変えられない。


だから私には、「やること」が必要だ。そう、直観で考えたのだ。


実際に私はその本を見ながら折り紙に熱中し、
退院するころには本の中で「むずかしい」と書かれているものも折れるようになった。


お母さんや看護師さんが、来る度に増え、レベルも上がっていく私の折り紙を見てたくさんほめてくれたのも、いい思い出だ。



それも、おばあちゃんがもたらしてくれた小さな幸せであり、せまい病室という世界での、私の生きる希望だった。



おばあちゃん、本当にありがとう。