「私、孫にお年玉やお小遣いをあげるのが夢だったのよ。差し出がましいけど、年寄りのわがままを聞いてやる気持ちで、ゆるしてもらえると嬉しいわ」


数分後に病室に来たお母さんに、おばあちゃんはそう言った。


「はい、楓ちゃん」

 そう言って手渡されたのは、可愛い蛙のイラストが描かれているポチ袋。


「ありがとう、おばあちゃん。大事につかうね」


その後、私も調子がよかったので、病院の玄関で見送りをすることができることになった。

そのとき、私はもう泣かなかった。


心からの笑顔で祝福し、ばいばいすることができた。


おばあちゃんも笑って、「じゃあ楓ちゃん、またね」と言って、明るい日が差す方へ、ゆっくりと歩いて行く。


その後ろ姿は、いつもよりさらに背筋が伸びているように見えた。

私は、おばあちゃんが見えなくなるまで、手を振っていた。



「また、会えるといいね」

お母さんが、私の肩に手を置いて言った。


「ぜったい会えるよ。やくそくしたもん」

私はそう、言い切った。