前半洋介視点→後半純視点
漫画原稿30〜35ページ前後想定

地の文:ト書き
「」:発話フキダシ
():思考フキダシ
ーーーー:視点者のモノローグ



冒頭、朝、洋介の自宅の部屋の中


『バレるなら お前以外がよかった』
前話ラスト純のセリフだけ


鏡の前でネクタイを締めながら呆然としている洋介(ネクタイを締める手を中途半端に止めたまま、ぼーっと鏡を眺めている)
前話ラストで純に言われた言葉を思い出している

葵「……にい」
葵が声をかけているが、ぼーっとしていて洋介の耳に入っていない

葵「洋兄!」

ようやく声に気づいてはっとする洋介
葵がドアを開けて洋介に声をかけていた

洋介「ああ……なに?」
葵「なに?じゃないよ! 時間! 学校遅れるよ!?」
洋介「あー……」心ここに在らずな感じで答える

葵「ぼーっとするなんて めずらしー…… なんかあったの?」
洋介「ないない」疲れた顔で笑う洋介
葵「もしかして 純さんのこと?」

洋介「ちげーよ」俯いたままぼそりと答える洋介。笑顔は消えている

葵「ねー洋兄 また純さん、うちに呼ばないの?」笑顔で言う葵
洋介「…………あー」

葵「私 純さん好き。外見もすごいきれいだけど なんていうか雰囲気? 人柄がきれいな人だよね 純さんって」
葵「また会いたいなあ 純さん」
くったくなく笑いながら、本心からの言葉という感じの葵

洋介「…………」俯いたまま何も答えない洋介

通学用のリュックを背負って、葵の横を通り過ぎる洋介

洋介「お前も遅れるよ」無表情の洋介

残された葵は ふくれ面で
葵「なにあれー」と洋介の背中に向かって言う




以下、洋介が通学路を歩く絵とモノローグで進める


ーーーーこの結果になることは 予想できた

ーーーー不安そうな顔を見て見ぬフリした

ーーーー安全な場所から楽しんで、卑怯者

ーーーー東を泣かせた 本当に傷つけた


学校に着き、教室のドアを開く洋介

洋介(来てる……)
教室には、すでに純が席に座っている。それをドアの位置から見る洋介

洋介「…………」苦虫を噛み潰したような顔で俯く洋介


ーーーーたぶんもう 何を言っても言い訳だ


『やめてくれよ もう うんざりなんだよ』
純の最後のセリフがと泣き顔がよぎる


洋介(東の言う通り、もう関わらないのが一番東のためなんだろうな)

沈んだ表情で純から目を逸らし、自分の席に着く洋介




時間経過効果コマ+場面転換 
帰りのホームルーム直後の教室

キーンコーンカーンコーン、とチャイムの音

ホームルームが終わり、生徒が席を立ったり話したりしている。

洋介の周りに数人のクラスメイトが集まって話している
一人の男子生徒がドアを開いて洋介に声をかける

男子「モモー! ちょっと来てほしいってー」

男子の後ろの方には、緊張した様子の女子生徒が立っている(洋介に告白しに来た女子)


場面切り替え、階段の踊り場的な場所(他の生徒はいない)
洋介と告白しにきた女子が対面している

女子「彼女さんがいるのは知ってます……! でも どうしても気持ちだけでも伝えたくて……」

女子「彼女さん、お仕事とか大変だって聞いて……」「私、話だけでも聞けるし……」
女子「これからもずっと 先輩のこと待ってるんで……」
一生懸命に気持ちを伝える女子

一瞬、純の顔がよぎる。
デート中の横顔、おうちデートのときの笑顔、最後に見た泣き顔。

洋介「……あー……」俯く洋介(このとき頭ぐちゃぐちゃな状態で冷静に考えられていない)
洋介「ちょっと……考えさせて……」思わず出た言葉



場面転換 学校の廊下
純が一人で廊下を歩いている(リュックを背負い、帰ろうとしているところ)

モブ女子「ねー やばい!!」
純の横を女子が走って通り過ぎ、向こうにいた何人かで集まって、興奮した様子で話し始める
純の位置的に女子たちの話はすべて聞こえている

モブ女子「聞いた?! 一年の女子がさっきモモに告白して」

モブ女子「OKだったんだって!!」
その言葉を聞いて体をこわばらせる純

モブ女子「うそ! 〝考える〟って答えたって聞いたけど!」
モブ女子「それもう付き合うじゃん!」
モブ女子「てかモモってフリーだったの!? モデルの彼女いたんじゃないの!?」
モブ女子「振らなかったってことは別れてたんじゃないの」
モブ女子「えーやだ 一年に取られるのだけは無理」

話で盛り上がっている女子たちの横を歩いて通り過ぎる純(前のめりで足早な感じに)
表情はこわばっていて、唇を噛んでいる(自分から遠ざけたけれど、やっぱり洋介への想いがあるので、新しい彼女ができたと聞いて悲しい気持ち)(やっぱり普通の女がいいんだ、と諦めと悔しさが混同した気持ち)


純が黙々と歩き、階段の曲がり角を曲がろうとしたとき、

ドンッ

と正面から誰かの胸の辺りにぶつかる。
純が顔を上げると、目の前に洋介が立っている。



近くで目が合う2人。びっくりしている表情
純は洋介を見て、一瞬泣き出しそうな表情になる→隠すようにぱっと目を伏せる

俯いたまま、黙って洋介を横切り、階段を降りていく純

男子生徒「モモ?どしたん?」
洋介の横にいた男子生徒が洋介にたずねる
洋介は俯いていて顔が見えない。何も答えない

男子「モモ?」
男子は不思議そうに洋介を覗き込む


ーーーーやっぱ だめだこんなの
ーーーーだって 顔見ただけで


洋介が自分のシャツの胸のあたりを手でつかむ。
ドク、ドク、と洋介の心臓が鳴っている

男子「あ、モモ……」
男子が何かに気づいたように目配せをする
その方向を見ると、洋介に告白した後輩女子が立っている

告白女子「あの モモ先輩……」
告白女子「さっき私 焦って聞くの忘れてて…… 先輩の連絡先 聞いてもいいですか?」


ーーーー東のために もう関わらない?


告白女子「それで今日 連絡してもいいですか……?」


ーーーークソかよ俺は この後に及んで保身とか


告白女子「モモ先輩?」


ーーーーさすがにわかる 今何もしなかったら俺 たぶん一生変わらない 一生このままだ


告白女子「先輩……?」
告白女子が洋介の腕を触る

洋介「ごめん」
女子の手を振り払う洋介

男子「モモ!?」

男子が呼び止めるが、それに構わず走って純を追いかける洋介


純を追いかけて道を必死で走る洋介
ーーーーもう追いつかないかも

ーーーーでも関係ないそんなの


駅の構内っぽい場所まで来た洋介
洋介(東が使ってる路線はたしか……)
息を切らしながら、あたりを見回す 

駅のホームへ続く階段を駆け上がる
ホームにはたくさんの人か行き来している

洋介(東……っ)
必死で人混みの中を見回しながら探す洋介
洋介(東)

洋介「!」
人の隙間に、純の背中がちらりと見える

必死に手を伸ばして、人混みの中の純の腕を掴む洋介

純「っ!」
突然腕を掴まれて、後ろを振り返る純


純「桃……っ」

洋介「俺 ゲイなんだ」


汗だくで必死な表情の洋介
驚いて言葉も出ない純


洋介「最初から彼女なんかできないんだ できないんだよ」
純の腕を掴んだまま、切実な表情の洋介

洋介「俺、東に酷いことした。弱み握って、不安にさせて。でもそばにいたくて。自分のこと打ち明ける勇気もないくせに」

洋介「めちゃくちゃ勝手なこと言ってるってわかってる」

洋介「死ぬまで誰にも言うつもりなかったこんなこと……でも東だけには 預けたいんだ」

洋介「世界で一人、お前だけでいい だから」

洋介「だから お願い おなじ場所にいさせて」

洋介「お願いそばに いさせて」
俯き、前髪で目が隠れる

洋介「好きなんだ」
洋介の頬を涙が伝う



反対側のホームの電車が通り過ぎる
ホームの人が少なくなる

ゆっくりと、不安そうに顔を上げ、純を見る洋介

純の目からは、ぼろぼろと涙が溢れている

驚いて戸惑う洋介
洋介「えっ……あ……あず……」
オロオロして自分の涙が引っ込む

純「……てよ……」

洋介「えっ?」

純「だきしめてよ」純の涙顔アップ

改ページ大ゴマ、純を抱きしめる洋介(無音)



余韻の数コマ後、改ページ
純を抱きしめていた洋介が、ゆっくり体を離す

そのとき、ちょうどホームに電車が着く
純は、黙って洋介の手を引っ張って、その電車に一緒に乗り込む

洋介「わっ なに」
純「うちきて」
洋介「えっっ」

〝うちきて〟のセリフがコマの余白埋めるようなデフォルメ描写と、頬を赤らめる洋介→めぐりめぐる下心を打ち消すようにぶんぶんと頭を振る洋介
洋介(いや、たぶんちがう!)

洋介「いや ぜんぜん行くけど……どしたの」

純「見せたいものがある」
硬い表情の純。どこか緊張したような、こわばった表情

それを見て、すぐに真面目な表情になる洋介
洋介「わかった……」


※ここから純視点に切り替え
場面転換、純の自宅の玄関

純「こっち」
階段を上がり、自分の部屋に洋介を入れる純

洋介(東の部屋だ……)初めて純の部屋に入ったことにひっそりと感動する洋介

純のほうは、部屋に入るなり、抱えられるくらいのサイズの箱を取り出してきて、

洋介「わっ」
純が洋介の目の前でその箱をひっくり返す
床にたくさんのアクセサリーが散らばる

間を置かず、続いて女物の服、ウィッグ、化粧品、をどさどさと洋介の目の前に出していく純

洋介「これな……」
純「ぜんぶ俺の」遮るように
純「男物なんかほぼない」

散らばった品物を見下ろしながら、悲しい、苦しそうな表情の純


純「俺だって ずっと桃田が好きだった……」

純「ずっと桃田が俺を好きになってくれたらいいのにって考えてた」

純「でも無理すぎて」

純「こんな奴のどこを好きになるのか自分でもわからないくらい無理すぎて」
眼鏡を外して涙を拭う純

純「俺はさ これ付けないと外出れないような奴なんだよ」


ここから(純の脳内?)イメージ映像
白い空間の中に、白いシャツ姿の純が座っている。純の体や女物の服やアクセサリーがまとわりついて、髪にはアクセサリーが引っかかっている。
ごみの山のような女物の服や物の中に純の体が埋まっている感じの絵

ーーーーきれい きれい きれいなものが好き
純の体には綺麗なアクセサリーや服がたくさん被さっている

ーーーー勇気が出る 自信がわく
髪には宝石のようなアクセサリーやロングヘアのウィッグが引っかかっている

ーーーーでも 自分がどこにいるのか 自分でもわからない


イメージ映像終わり 現実の純に戻る
純「女装は趣味なんかじゃない これがないと無理だからやってるんだ」
悔しい、苦しそうな表情で叫ぶように言う

純「俺はーー」

洋介「東」
純の言葉を遮り、両手で純の頬を包むように触れる

洋介「なんか勘違いしてるみたいだけど 俺別に東が女の格好してるから好きなんじゃない」
洋介「女装してる東が可愛いんじゃないよ」


「俺は東が可愛いんだよ」「くそ、ちゃんと伝わってるのかこれ」
「俺は東が」「東が好きなんだよ」


再びイメージ映像 白い空間

〝東〟

女物の装飾まみれの純
そんな純の頬を洋介(純と同じ白いシャツ姿)優しく包んでいる(現実のシーンと被るように)
装飾がぽろぽろと落ちて、何も付けてない純が残る

〝可愛いよ〟

向かい合う二人の引きの絵


現実、純の部屋 イメージ映像と同じ構図で向かい合う二人

純「うっ…え……」嗚咽して泣く瞬純

洋介は純のを抱きしめながら
洋介「東」「東 可愛い」「ずっと言いたかった」「ごめん言えなくて」「臆病でごめん」

嗚咽して泣く純
純「ゆる…さない」
純「ずっと好きでいてくれなきゃ…ゆるさない」

改ページ 二人がキスする大ゴマ

顔が離れてびっくりする純と、嬉しそうな洋介の顔

洋介「ほんとに? それだけでいいの?」
愛おしそうに純を見つめる洋介

洋介「そんなの楽勝すぎ」
洋介が純にキスしてラスト引き