純視点
漫画原稿30〜35ページ想定
地の文:ト書き
「」:発話フキダシ
():思考フキダシ
ーーーー:視点者のモノローグ
冒頭、学校の休憩時間、教室内
洋介が同級生数人と話している場面
モブ男子「モモ そーいえば彼女と最近どーなん?」
モブ女子「あーそれ 気になるー!」
洋介「どうって べつに普通だよ……」
モブ男子「普通に順調ってこと?」
洋介「あー まあ うん」
モブ男子「モモって彼女と喧嘩とかすんの?」
洋介「うーん……あんましないかも」
モブ女子「モモ喧嘩しなさそー」
モブ女子「てかまずモモが感情的になってるとこが想像できない」
モブ男子「わかるわー」
同じ教室内には純が自分の席に座って本を読んでいる。
洋介たちの会話が聞こえるくらいの位置。
純は本をしまって立ち上がり、教室を出ていく(洋介たちの話をこれ以上聞きたくなかった)
純が渡り廊下を歩いていたとき、ポケットの中のスマホの通知バイブが鳴る。
その場でスマホを開く純。
《土曜日 11時 いつもの改札前集合》
というメッセージが届いている。洋介からのメッセージ。アイコンに桃田と書いて、洋介からとわかるように。
純は無表情でそのメッセージを見た後、スマホをポケットにしまって歩き出す。
『喧嘩しねーの?』
さっきのモブ男子のセリフを思い出す純
純(するわけないだろ)
歩いている純がコマをフェードアウト
□
場面転換 デート当日、純の自宅
洗面台で髪をセットしている純
純の姉の美咲「やったげようか?」
鏡越しに声をかける美咲
美咲は大学生、シンプルで大人っぽい私服姿、ロングヘア、美人
純「うん……」
純の後ろに立って、ロングヘアをハーフアップにセットする美咲。
二人の身長はほぼ同じくらい
美咲「出かけるの?」
純「うん……」
美咲「なら、私のアクセ貸してあげる。今日のトップスに合うやつ」優しい笑顔で言う美咲
純「…………」
美咲「嫌なら行かなくていいんじゃない?」
純「……っ!」
驚いて顔を上げる純
純「なんか知ってんの……?」
美咲「なにも?」飄々と
美咲「知らなくてもわかるわよ」
美咲「母さんが父さんと喧嘩した日にしてた顔と そっくりだもん」
純の髪を優しくとかす美咲
美咲「あんたは 見たことないと思うけどさ」
※美咲と純の母親は、純が幼い頃に病気で他界している
純「…………」
純「……喧嘩でもできりゃ よっぽどいいよ」ぼそりと言う純
美咲は何も言わずに、哀しそうに微笑むだけ
美咲「よし、できた」純の肩をぽん、と叩く
純「……ありがとう 姉ちゃん」
美咲「純」
引き止められて振り返る純
美咲「今日もきれいよ」
優しく笑う美咲
純「うん……」
場面転換
電車の中。ドア付近で立つ純
ーーーー偽装彼女役は まだ続いてる
ーーーーこうやって連絡が来れば行く
ーーーーあの日のことは お互いに一度も触れてない
ーーーー桃田はあれから ああいうことはしなくなった
頬に触れたときのシーンが一瞬よぎる
場面転換 デートの待ち合わせ場所
洋介「東」
純を見てぎこちなく笑う洋介(純視点)
純「ああ……」
洋介のいる場所に歩いて近づいてくる純(洋介視点)
ーーーーあれから何回か偽装デートをした
ーーーー桃田の口数は前よりも少なくて
ーーーー何かを話したそうな顔をする瞬間がある
回想コマを入れる。過去のデート中に「あのさ……」と言いかけてから「いや、なんでもない」と止める洋介(重苦しい雰囲気の洋介)
※実はこのとき洋介は純にゲイカミングアウトしようと試みていた(が、毎回失敗していた)。それはこの時点ではそれは明示せず、「ひょっとして純のこと振ろうとしてる?」と読者をミスリードさせるくらいの曖昧な表現で。
ーーーーそれが何なのかは わからないけど
ーーーー楽しい話じゃないことくらいは わかる
純(どーせ あいつのカップルごっこを俺が真に受けたのを見て ドン引きしたんだろーな)
純(でも あいつお人好しだから 俺のことすぐ捨てんのは 可哀想でできなくて)
純(だからお情けであと何回かデートしてやろう 的なやつだろ)
純(もう いいのに)
悲しい+諦めたような純の表情
デート中、純に切り出す洋介
洋介「今日さ……ちょっと話したいこと、あってさ……」
純「うん」
ーーーーほらな
その瞬間、純にジュースを持った子どもが「ドンッ」とぶつかってこける
ジュースがすべてこぼれて、純のスカートにジュースがかかってしまう
子どもの母親「キャー!! ごめんなさい!!!」
子ども「う…うぇ……っ」
今にも泣き出しそうな子ども
純はすぐに地面に膝をついて子どもと同じ目線になる
純「怪我してない?」
子ども「う、うん……」
純「よかった」優しく微笑む純
母親「ごめんなさい あの、弁償を……!」
純「いいです これくらい 洗えば落ちるし」
子ども「ごめ……なさ……っ」ポロポロ泣き出す子ども
純「大丈夫だよ」優しく頭を撫でる純
純「びっくりしたよね。ジュース、また買ってもらいな?」
子どもに優しく笑顔を向ける純を 切なそうな顔で見つめる洋介。優しく落ち着いた態度の純を人として尊敬+けれど本当の自分を見せられない自分自身への後ろめたさ、が混ざった表情
立ち上がって洋介の方を向く純
純「ちょっとトイレで洗ってくる」
洋介「あ、ああ……」
純がトイレに立ち、残される洋介
洋介(くそ……)
俯いて頭を掻く洋介
洋介は、カミングアウトすることが怖い気持ちがこの時点ではまだ残っている
同級生女子の谷口「あれ? 洋介?」
洋介が顔を上げると、洋介の中学時代の同級生女子が立っている。
洋介「谷口?」
谷口「うんうん!わー!めっちゃ久しぶりー!元気だった!?」
洋介を見て嬉しそうに頬を赤らめながら興奮した様子の谷口さん
場面切り替え。トイレから出た純。
純(意外ときれいに落ちたな……)スカートを見ながら
純(やっぱ汚れはノータイムで洗うに限る……)
洋介が待っている場所に戻ろうとするが、洋介が谷口と話しているのを見て、思わず壁の陰に隠れる純
洋介たちと純は、会話が聞こえるくらいの距離感
純(知り合い……?)ちらっと壁の陰から洋介たちの様子を見る
場面切り替え 洋介サイド
純には全く気付かず、会話をする洋介と谷口
谷口「そういえば、洋介彼女できたんだってね!リサから聞いたよお」
洋介「ああ……うん」
谷口「マジでそれ聞いた元中の女子全員泣いたー」「私も泣いたわー」
洋介「はは……」
谷口「しかも彼女、芸能活動してるんでしょ?」
谷口「エグい可愛い雑誌モデルだって」
谷口「やっぱ洋介の彼女レベル高すぎ!」
矢継ぎ早に飛んでくる谷口のセリフを壁の向こうで聞いている純
谷口「ねー彼女の写真ないの? めっちゃ見たい」
洋介「あー……それは、ごめん」
谷口「ああ、やっぱ事務所の事情とかあるんだもんね?」
谷口「でもさー 洋介とカップルアカウントとか作ったら無双するんじゃない?その子」「やらないの?」
洋介「しねーわ」疲れた顔で答える洋介
場面切り替え 純サイド
ーーーーこれ 誰の話してんだ?
ーーーーああ俺か
ーーーーでも俺のことじゃない
物陰で会話を聞きながら、傷ついている純
谷口「あ、もしかして 今彼女待ってるの?」
そのセリフを聞き、壁の向こうでビクッと反応する純
場面切り替え 洋介サイド
洋介「あーいや」苦笑いしながら
洋介「ちがうちがう」
洋介のその言葉が純の心に突き刺さる。ショックを受ける純の表情
洋介(谷口噂好きだし、今は出てこさせない方がいいか…)スマホでメッセージを送る洋介
場面切り替え 純サイド
物陰にいる純のポケットでスマホの通知バイブが鳴る。
スマホを開く純
《知り合いと会ったからちょっと待ってて》
というメッセージが表示されているスマホ画面
純(隠された)
純(隠すんだ)
純(当たり前か だって)
『恥 ず か し い か ら』
その言葉が背中に覆い被さってくるような描写
場面切り替え 洋介サイド
洋介のスマホの通知音が鳴る。
確認すると、純からメッセージが届いている。
《用事できたから帰る》
洋介のスマホのロック画面に表示される通知+本文
洋介「は……? 用事……?」
思わず口に出す洋介
谷口「え? 友だち用事できたの?」
洋介「…………らしー……」スマホを持ったま呆然とつぶやく洋介
谷口「えー洋介かわいそー。ならさーこれからリサたちと会うから、洋介も来てよ!」
谷口の誘いに反応できないほど呆然としている洋介
場面切り替え 同時間の純
歩道を一人で黙々と歩いている純(帰っている)
俯きながら歩く横姿
ーーーー馬鹿かよ
ーーーーなにを今更 傷ついてるんだ俺は
「ドンッ」と、すれ違う男性の肩にぶつかる純
男「ってーな……」苛立つ顔の男
純「ごめんなさい」男に向かってすぐに謝る純(純の顔は見えない後頭部からのアングル)
男「っ……!!」
純の顔を見て、あまりの美少女に驚き+頬を赤らめて絶句する男
ーーーーそもそも はじめから わかってた
〝彼女のふりして〟
一話のラストのシーンの再現コマ。純視点の洋介の絵
ーーーー受け入れたらだめだって
〝女友達に頼んでゴタったらだるいからさ 東がしてくれたらいいなーって〟
再現コマ。純視点の洋介の絵
ーーーーどうせ傷付くだけだって
〝わかった〟
再現コマ。純の全身、引きの絵
ーーーーなんで言っちゃったかなあ
ーーーーたぶん今思えば あの瞬間 ほんのちょっとだけ
ーーーー嬉しかったんだと思う あいつに気付かれたことが
ーーーー別人みたいなあの姿の中の『俺』を見つけてもらえた気がして
ーーーー好きになったよ 当たり前だろ
優しい笑顔の洋介の絵(純の記憶の中の過去のデート中の洋介)
ーーーーだって あんな笑顔も 優しさも あたたかさも
もらったの初めてだったんだ
純(なんでそんな優しい顔するの?)
純(誰にでもするの?)
純(するか。するよなそりゃ。だって俺男だし)
過去のデート中の純。当時こう思ってたということが伝わるように
ーーーー優しいから 優しくしてくれるから〝俺〟が優しくされてるみたいな気がしてた
純(馬鹿だろ。なわけないじゃん だって)
純の脳内イメージ→現実に戻る 歩道を歩く純
歩道に沿って建てられている店のショーウィンドウが鏡のようになって、純の姿が映っている
立ち止まって、ショーウィンドウに映る自分の姿を見る純
誰がどう見ても女の姿が映っている
ーーーーだって この姿以外で会いたいって 一度も言われたことない
純の目から涙が溢れる
純(馬鹿だ それなのに)
純(こいつじゃなくて、俺を好きになってほしい、なんて)
ショーウィンドウに映る女が泣いている 別人を見るような気持ちで、泣きながらその女を見つめる純
純(本当 馬鹿すぎる……)
時間経過+場面転換
夜、暗い部屋(純の自宅の部屋)
ヴヴヴヴ、ヴヴヴヴ
と暗い部屋の中でスマホのバイブ音だけが鳴っている描写
ずっと鳴り続けるバイブ音
机の上に置かれたスマホ(着信中、バイブで震えている)
手が伸びてきて、スマホを持つ(純の手)
スマホを耳に当てる純(目は描かない)
純「もしもし……」
場面転換
夜、純の家の近くの公園
純と洋介が公園で待ち合わせをしている
公園の中で向かい合って立っている二人(純はデートの時の服のままの女装姿。着替える気力もなかった)
洋介「ごめん電話、すげーかけちゃって」
純「いや……」
洋介「急に帰ったから心配で……あ、用事……大丈夫だった?」
どこか気まずそうに多弁な洋介
黙って何も答えない純
洋介「東……?」
純「もうやめる」俯いたままつぶやく純
洋介「え?」
純「女装のこと、言いふらしていい。お前と会うの、もうやめる」
洋介「は……? なに言っ」
純「充分暇つぶしになったろ」
洋介の言葉を遮る純
純「お前はいっぱい居場所があるじゃん。周りにたくさん人がいるじゃん」
純「やめてくれよ もう うんざりなんだよ 惨めで……」
純の目から涙が溢れる
純「ばれるなら お前以外がよかった」
泣いている純の横顔でラスト引き
漫画原稿30〜35ページ想定
地の文:ト書き
「」:発話フキダシ
():思考フキダシ
ーーーー:視点者のモノローグ
冒頭、学校の休憩時間、教室内
洋介が同級生数人と話している場面
モブ男子「モモ そーいえば彼女と最近どーなん?」
モブ女子「あーそれ 気になるー!」
洋介「どうって べつに普通だよ……」
モブ男子「普通に順調ってこと?」
洋介「あー まあ うん」
モブ男子「モモって彼女と喧嘩とかすんの?」
洋介「うーん……あんましないかも」
モブ女子「モモ喧嘩しなさそー」
モブ女子「てかまずモモが感情的になってるとこが想像できない」
モブ男子「わかるわー」
同じ教室内には純が自分の席に座って本を読んでいる。
洋介たちの会話が聞こえるくらいの位置。
純は本をしまって立ち上がり、教室を出ていく(洋介たちの話をこれ以上聞きたくなかった)
純が渡り廊下を歩いていたとき、ポケットの中のスマホの通知バイブが鳴る。
その場でスマホを開く純。
《土曜日 11時 いつもの改札前集合》
というメッセージが届いている。洋介からのメッセージ。アイコンに桃田と書いて、洋介からとわかるように。
純は無表情でそのメッセージを見た後、スマホをポケットにしまって歩き出す。
『喧嘩しねーの?』
さっきのモブ男子のセリフを思い出す純
純(するわけないだろ)
歩いている純がコマをフェードアウト
□
場面転換 デート当日、純の自宅
洗面台で髪をセットしている純
純の姉の美咲「やったげようか?」
鏡越しに声をかける美咲
美咲は大学生、シンプルで大人っぽい私服姿、ロングヘア、美人
純「うん……」
純の後ろに立って、ロングヘアをハーフアップにセットする美咲。
二人の身長はほぼ同じくらい
美咲「出かけるの?」
純「うん……」
美咲「なら、私のアクセ貸してあげる。今日のトップスに合うやつ」優しい笑顔で言う美咲
純「…………」
美咲「嫌なら行かなくていいんじゃない?」
純「……っ!」
驚いて顔を上げる純
純「なんか知ってんの……?」
美咲「なにも?」飄々と
美咲「知らなくてもわかるわよ」
美咲「母さんが父さんと喧嘩した日にしてた顔と そっくりだもん」
純の髪を優しくとかす美咲
美咲「あんたは 見たことないと思うけどさ」
※美咲と純の母親は、純が幼い頃に病気で他界している
純「…………」
純「……喧嘩でもできりゃ よっぽどいいよ」ぼそりと言う純
美咲は何も言わずに、哀しそうに微笑むだけ
美咲「よし、できた」純の肩をぽん、と叩く
純「……ありがとう 姉ちゃん」
美咲「純」
引き止められて振り返る純
美咲「今日もきれいよ」
優しく笑う美咲
純「うん……」
場面転換
電車の中。ドア付近で立つ純
ーーーー偽装彼女役は まだ続いてる
ーーーーこうやって連絡が来れば行く
ーーーーあの日のことは お互いに一度も触れてない
ーーーー桃田はあれから ああいうことはしなくなった
頬に触れたときのシーンが一瞬よぎる
場面転換 デートの待ち合わせ場所
洋介「東」
純を見てぎこちなく笑う洋介(純視点)
純「ああ……」
洋介のいる場所に歩いて近づいてくる純(洋介視点)
ーーーーあれから何回か偽装デートをした
ーーーー桃田の口数は前よりも少なくて
ーーーー何かを話したそうな顔をする瞬間がある
回想コマを入れる。過去のデート中に「あのさ……」と言いかけてから「いや、なんでもない」と止める洋介(重苦しい雰囲気の洋介)
※実はこのとき洋介は純にゲイカミングアウトしようと試みていた(が、毎回失敗していた)。それはこの時点ではそれは明示せず、「ひょっとして純のこと振ろうとしてる?」と読者をミスリードさせるくらいの曖昧な表現で。
ーーーーそれが何なのかは わからないけど
ーーーー楽しい話じゃないことくらいは わかる
純(どーせ あいつのカップルごっこを俺が真に受けたのを見て ドン引きしたんだろーな)
純(でも あいつお人好しだから 俺のことすぐ捨てんのは 可哀想でできなくて)
純(だからお情けであと何回かデートしてやろう 的なやつだろ)
純(もう いいのに)
悲しい+諦めたような純の表情
デート中、純に切り出す洋介
洋介「今日さ……ちょっと話したいこと、あってさ……」
純「うん」
ーーーーほらな
その瞬間、純にジュースを持った子どもが「ドンッ」とぶつかってこける
ジュースがすべてこぼれて、純のスカートにジュースがかかってしまう
子どもの母親「キャー!! ごめんなさい!!!」
子ども「う…うぇ……っ」
今にも泣き出しそうな子ども
純はすぐに地面に膝をついて子どもと同じ目線になる
純「怪我してない?」
子ども「う、うん……」
純「よかった」優しく微笑む純
母親「ごめんなさい あの、弁償を……!」
純「いいです これくらい 洗えば落ちるし」
子ども「ごめ……なさ……っ」ポロポロ泣き出す子ども
純「大丈夫だよ」優しく頭を撫でる純
純「びっくりしたよね。ジュース、また買ってもらいな?」
子どもに優しく笑顔を向ける純を 切なそうな顔で見つめる洋介。優しく落ち着いた態度の純を人として尊敬+けれど本当の自分を見せられない自分自身への後ろめたさ、が混ざった表情
立ち上がって洋介の方を向く純
純「ちょっとトイレで洗ってくる」
洋介「あ、ああ……」
純がトイレに立ち、残される洋介
洋介(くそ……)
俯いて頭を掻く洋介
洋介は、カミングアウトすることが怖い気持ちがこの時点ではまだ残っている
同級生女子の谷口「あれ? 洋介?」
洋介が顔を上げると、洋介の中学時代の同級生女子が立っている。
洋介「谷口?」
谷口「うんうん!わー!めっちゃ久しぶりー!元気だった!?」
洋介を見て嬉しそうに頬を赤らめながら興奮した様子の谷口さん
場面切り替え。トイレから出た純。
純(意外ときれいに落ちたな……)スカートを見ながら
純(やっぱ汚れはノータイムで洗うに限る……)
洋介が待っている場所に戻ろうとするが、洋介が谷口と話しているのを見て、思わず壁の陰に隠れる純
洋介たちと純は、会話が聞こえるくらいの距離感
純(知り合い……?)ちらっと壁の陰から洋介たちの様子を見る
場面切り替え 洋介サイド
純には全く気付かず、会話をする洋介と谷口
谷口「そういえば、洋介彼女できたんだってね!リサから聞いたよお」
洋介「ああ……うん」
谷口「マジでそれ聞いた元中の女子全員泣いたー」「私も泣いたわー」
洋介「はは……」
谷口「しかも彼女、芸能活動してるんでしょ?」
谷口「エグい可愛い雑誌モデルだって」
谷口「やっぱ洋介の彼女レベル高すぎ!」
矢継ぎ早に飛んでくる谷口のセリフを壁の向こうで聞いている純
谷口「ねー彼女の写真ないの? めっちゃ見たい」
洋介「あー……それは、ごめん」
谷口「ああ、やっぱ事務所の事情とかあるんだもんね?」
谷口「でもさー 洋介とカップルアカウントとか作ったら無双するんじゃない?その子」「やらないの?」
洋介「しねーわ」疲れた顔で答える洋介
場面切り替え 純サイド
ーーーーこれ 誰の話してんだ?
ーーーーああ俺か
ーーーーでも俺のことじゃない
物陰で会話を聞きながら、傷ついている純
谷口「あ、もしかして 今彼女待ってるの?」
そのセリフを聞き、壁の向こうでビクッと反応する純
場面切り替え 洋介サイド
洋介「あーいや」苦笑いしながら
洋介「ちがうちがう」
洋介のその言葉が純の心に突き刺さる。ショックを受ける純の表情
洋介(谷口噂好きだし、今は出てこさせない方がいいか…)スマホでメッセージを送る洋介
場面切り替え 純サイド
物陰にいる純のポケットでスマホの通知バイブが鳴る。
スマホを開く純
《知り合いと会ったからちょっと待ってて》
というメッセージが表示されているスマホ画面
純(隠された)
純(隠すんだ)
純(当たり前か だって)
『恥 ず か し い か ら』
その言葉が背中に覆い被さってくるような描写
場面切り替え 洋介サイド
洋介のスマホの通知音が鳴る。
確認すると、純からメッセージが届いている。
《用事できたから帰る》
洋介のスマホのロック画面に表示される通知+本文
洋介「は……? 用事……?」
思わず口に出す洋介
谷口「え? 友だち用事できたの?」
洋介「…………らしー……」スマホを持ったま呆然とつぶやく洋介
谷口「えー洋介かわいそー。ならさーこれからリサたちと会うから、洋介も来てよ!」
谷口の誘いに反応できないほど呆然としている洋介
場面切り替え 同時間の純
歩道を一人で黙々と歩いている純(帰っている)
俯きながら歩く横姿
ーーーー馬鹿かよ
ーーーーなにを今更 傷ついてるんだ俺は
「ドンッ」と、すれ違う男性の肩にぶつかる純
男「ってーな……」苛立つ顔の男
純「ごめんなさい」男に向かってすぐに謝る純(純の顔は見えない後頭部からのアングル)
男「っ……!!」
純の顔を見て、あまりの美少女に驚き+頬を赤らめて絶句する男
ーーーーそもそも はじめから わかってた
〝彼女のふりして〟
一話のラストのシーンの再現コマ。純視点の洋介の絵
ーーーー受け入れたらだめだって
〝女友達に頼んでゴタったらだるいからさ 東がしてくれたらいいなーって〟
再現コマ。純視点の洋介の絵
ーーーーどうせ傷付くだけだって
〝わかった〟
再現コマ。純の全身、引きの絵
ーーーーなんで言っちゃったかなあ
ーーーーたぶん今思えば あの瞬間 ほんのちょっとだけ
ーーーー嬉しかったんだと思う あいつに気付かれたことが
ーーーー別人みたいなあの姿の中の『俺』を見つけてもらえた気がして
ーーーー好きになったよ 当たり前だろ
優しい笑顔の洋介の絵(純の記憶の中の過去のデート中の洋介)
ーーーーだって あんな笑顔も 優しさも あたたかさも
もらったの初めてだったんだ
純(なんでそんな優しい顔するの?)
純(誰にでもするの?)
純(するか。するよなそりゃ。だって俺男だし)
過去のデート中の純。当時こう思ってたということが伝わるように
ーーーー優しいから 優しくしてくれるから〝俺〟が優しくされてるみたいな気がしてた
純(馬鹿だろ。なわけないじゃん だって)
純の脳内イメージ→現実に戻る 歩道を歩く純
歩道に沿って建てられている店のショーウィンドウが鏡のようになって、純の姿が映っている
立ち止まって、ショーウィンドウに映る自分の姿を見る純
誰がどう見ても女の姿が映っている
ーーーーだって この姿以外で会いたいって 一度も言われたことない
純の目から涙が溢れる
純(馬鹿だ それなのに)
純(こいつじゃなくて、俺を好きになってほしい、なんて)
ショーウィンドウに映る女が泣いている 別人を見るような気持ちで、泣きながらその女を見つめる純
純(本当 馬鹿すぎる……)
時間経過+場面転換
夜、暗い部屋(純の自宅の部屋)
ヴヴヴヴ、ヴヴヴヴ
と暗い部屋の中でスマホのバイブ音だけが鳴っている描写
ずっと鳴り続けるバイブ音
机の上に置かれたスマホ(着信中、バイブで震えている)
手が伸びてきて、スマホを持つ(純の手)
スマホを耳に当てる純(目は描かない)
純「もしもし……」
場面転換
夜、純の家の近くの公園
純と洋介が公園で待ち合わせをしている
公園の中で向かい合って立っている二人(純はデートの時の服のままの女装姿。着替える気力もなかった)
洋介「ごめん電話、すげーかけちゃって」
純「いや……」
洋介「急に帰ったから心配で……あ、用事……大丈夫だった?」
どこか気まずそうに多弁な洋介
黙って何も答えない純
洋介「東……?」
純「もうやめる」俯いたままつぶやく純
洋介「え?」
純「女装のこと、言いふらしていい。お前と会うの、もうやめる」
洋介「は……? なに言っ」
純「充分暇つぶしになったろ」
洋介の言葉を遮る純
純「お前はいっぱい居場所があるじゃん。周りにたくさん人がいるじゃん」
純「やめてくれよ もう うんざりなんだよ 惨めで……」
純の目から涙が溢れる
純「ばれるなら お前以外がよかった」
泣いている純の横顔でラスト引き
