純視点
漫画原稿30〜35ページ想定
地の文:ト書き
「」:発話フキダシ
():思考フキダシ
ーーーー:視点者のモノローグ



冒頭、純のモノローグ+回想から

ーーーークラスの人気者の男に 秘密がバレた

洋介に女装がバレた時の場面
洋介と女装した純が向かい合っているシーン

ーーーー「終わった」
ーーーーとっさに思ったのはそれだけ

ーーーーとはいえ 我ながら 普通じゃないことをしている とは思っていて
鏡の前でレディースの服を自分の体に当てがっている純の絵

ーーーーやめときゃいいのに それで出歩いてたりしたから
女装姿で街を歩く純の引きの絵

洋介『東だよな?』

ーーーーまあ 自業自得 なんだけど


ーーーー自分のセクシュアリティとかよくわかんないけど 別に女性に興味がないわけじゃない
ーーーーきれいだと思うし 憧れもある
ーーーーでも

純の自宅の居間、テレビで恋愛ドラマが流れているのを、少し離れた場所から立ったまま眺める純
ドラマの中で、ヒロインがヒーローにベッドに押し倒されているシーンが流れる

(押し倒されているヒロインを見て、)
純「いいなあ……」
※純がヒーローではなくヒロインのほうに共感、憧れていることがわかるような描写

ーーーーこれが一般的な感覚とは違うってことは気づいてた

ーーーーしかも追い打ちをかけるみたいに
家の洗面所、姉のファッションウィッグが置き忘れてあるのに気づく純

純(ウィッグ……? 姉ちゃんの?)

洗面台の鏡の前で、そのウィッグを被る純
ゆるふわロングヘアになった鏡に映る自分を食い入るように凝視する純。

ーーーーそれを知ってしまった

ーーーー女装は鎧 前を向いて歩ける
ーーーー女になりたいわけじゃない ただ別人のように可愛くなれることがうれしかった

自分の部屋で女装をする純の引きの絵

ーーーー本当に別人にでもなった気でいて 調子に乗って

ここから純の元彼(もどき)のエピソードをさらっと描く

カフェで本を読んでいる女装姿の純に声をかける男
〝その本、俺も好き〟
純と元彼のデートのハイライトを数コマ入れる(公園ぽい道を歩く純と元彼、本屋で本を選ぶ二人など。嬉しそうな表情の純)

元彼が純にキスしようとするシーン→ギリギリのところで純が止め、カミングアウトする
〝あの……実は……俺〟

〝は……? 男なの?〟
急に冷たい態度になる元彼

〝いや……キモすぎだろ〟
純を置いて一人で去っていく元彼

ーーーーだから これも自業自得
置いて行かれた純の呆然とした横顔


ーーーーそれでも女装をやめられなくて

ーーーー結局あの日 あいつにバレた
洋介にバレたときの場面

純(あー終わった。しかもバレたのが学年一モテ男で人気者とか)
もはやじたばたする元気も出ず、諦め切る純
純(明日から学校は地獄だな)

洋介「彼女のふりしてくれたら黙ってる」

純(は……???)

ーーーーいや さすがに意味不明

純(ドッキリ? 罰ゲーム? ネタ作り? 冷やかし? 新手のいじめ?)頭の中でぐるぐる考える純


ーーーーもちろん最初は警戒したし

純(他の連中が動画撮ってる?)初回デート中、と手書きで書き込む。洋介とのデート中に辺りを見渡す純

純(実況してる様子もない……)2回目デート中、と手書きで書き込む。デート中に洋介がスマホを触らないことを確認する純

純(え…もしかして)5回目デート中、と手書きで書き込む。
純(こいつ本気で俺とカップルごっこしてんの?)驚く純の顔

純(人気者の考えること マジでわかんねえ)
純(わざわざこんなゲテモノ食わんでも 身近で可愛い女子選びたい放題だろーに)

純(おかしな奴……)


ーーーーあいつとのデートは 俺としては別に嫌じゃなくて

ーーーーというか むしろ……
優しい顔で自分に笑いかけてくれる洋介の姿を思い出している

ーーーーだって あいつが なんでかわかんないけど すごく優しいから

ーーーーすごい優しい顔で 俺に笑うから

ーーーーそれに馬鹿みたいに 喜んでしまう自分がいる


初回デートのとき コーヒーを買う洋介を遠目から見ながら
純(誰にでもしてる……に 決まってんのに)
純(だから《みんなに人気の桃田くん》なんだろ)
純(我ながら 陽キャへの耐性なさすぎて 引く)



場面転換 純の自宅の自室
自分の部屋のベッドに寝転がっている純

その時、近くに置いてあったスマホの通知音が「ポコンッ」と鳴る

寝転んだままスマホの画面を開く純

純「桃田だ……」
洋介からメッセージが届いていた

《土曜日空いてる? こないだ言ってた映画のDVD、谷川が貸してくれたから うちで観よ》

純(うち…!?)驚いて思わず体を起こす純

純(うち……って、桃田んち……?)
純(家ん中で偽装彼女する意味ってあんの?)

純(まさか、家族に紹介……!?)ピシャ…!!と背景に雷のような効果音が入る

純(いやいや まさかそれはない……)ぶんぶんと頭を振る純

純(あいつの考えてることが本格的にわかんなくなってきた……)
純(いいのかな……このままで……)スマホに目を落としながら悩む純



  □



場面転換 洋介の家の最寄駅
駅から出てすぐの広場のような場所

花壇の端に腰をかけて純を待っている洋介
部屋着っぽい格好。ラフなパーカーを着ている

洋介「あ 東! こっち!」
純を見つけて ぱっと笑顔になる洋介(純視点の洋介の姿)

視点が逆(洋介視点)になって、女装姿の純の全身コマ
ゆったりしたニットにデニムのコーデ ロングヘアを後ろでまとめている

純「迎え……ありがとう」
洋介「いえいえー」笑顔の洋介

洋介「電車混んでなかった?」
純「大丈夫……」

純「あ……これ、おうちの人に」
手に持っていた手土産の紙袋を洋介に差し出す純。
洋介「えー! いいのにわざわざ!」

洋介「えーこれ駅ナカとかにあるお菓子じゃん! たけーやつ!」

純(え……やめたほうがよかった?)←人の家に招かれることがほぼ初めてなため何が正解かわからなかった と手書きで書き込む

純(なんか 失敗した……? 逆に誤解を生む……?)じわじわ後悔してきて顔が青ざめる純

洋介「ありがとう東 すげー喜ぶと思う」優しい笑顔を向ける洋介
それを見て安心と嬉しさが混ざった表情を浮かべる純



場面転換 洋介の自宅の玄関

純「お邪魔、します……」
洋介「どーぞー」

純「あの……おうちの方は……」
洋介「今日は二人とも仕事」

純(不在……!?)ピシャッ…!とまた背景に雷の効果

洋介「あーでも たぶん妹が……」
洋介がそう言い終わる前に、階段の上から「洋兄ーーー?」と声がする。

葵「ねーー課題教えてくれるって言っーーー」
階段から降りてくる葵
玄関の純と鉢合わせて固まる葵と純の引きの絵

葵「……っ!!」感動した表情で両手で口を覆う葵
純(兄の彼女だ!って顔してる……!)純の心の声が同じコマに

葵「えっと……葵です 妹です!」深々と頭を下げて挨拶をする葵
葵(きっ……きれーーー!!)同じコマに

純「あ……東純です」同じくらい深々とお辞儀をする純

純(あっ 本名言っちゃった……!)お辞儀をしたまま冷や汗を流す純

葵「純さん……!よろしくお願いします」ぜんぜん気にしていない葵
葵(声ハスキーで素敵だなあ)
純(大丈夫だった……!)同じコマに

洋介「葵 これ東から」手土産の紙袋を葵に差し出す洋介

葵「えー!駅ナカとかにあるやつだ!リッチなお菓子だ!」紙袋を見ながら喜ぶ葵
純(反応が同じだな……)同じコマに

葵「ありがとうございます 純さん!」
純「いえ……」
洋介「じゃあ 俺ら部屋行くから」葵の横を通り過ぎる洋介

純「あっ……桃田」洋介を呼び止める純
純「葵ちゃんの課題……見てあげるって約束してたんじゃないの?」
純「先に見てあげなよ」「お……自分も一緒に教えてあげられるし……」

葵「純さん……!いいの!?」感動する葵
洋介「えーーー……」嫌そうな洋介

でも優しい笑顔を浮かべて葵を見ている純の横顔を見て、「はあ」と息を吐く洋介

洋介「ならソッコー終わらせるからな」しぶしぶ承諾する洋介
葵「ありがとう!純さん!洋兄!」



場面転換 洋介の部屋

葵「あ! わかった! そーゆーことか!」
葵「純さん 教えるの上手ー!!」
純「葵ちゃんの理解力があるんだよ」
葵「そうかなあ……!」嬉しそうな葵

洋介「てかなんで俺の部屋でやってんのお前」
葵「だって!ちょっと散らかってたからあ」焦る葵
洋介「もう充分進んだだろ課題」「部屋戻れよ」
純「まあまあ……」困った顔の純

葵「でも、おかげで全部終わった! 本当にありがとうございます 純さん!」
洋介「俺にはー?」
葵「洋兄もありがとう!」

葵「私 これから友だちと約束してるから出かけるね!」「純さん、ゆっくりして行ってくださいね!」
葵(退散してあげるよ洋兄!後はファイト!)

洋介(こいつ……)葵の意図を察して少しイラッとする洋介

バタン、とドアが閉まって葵が出ていく。
二人残される純と洋介。

純(葵ちゃん、用事あったんだ……)
閉まったドアを見ながら思う純(葵の意図は気付いていない)

洋介「あーあ」机に突っ伏す洋介
純「?」
洋介を見て どうしたんだろう?と不思議そうな純

洋介「せっかく東が来てくれたのに 一緒に遊ぶ時間が減った」
不貞腐れた顔で純を見上げる洋介。上目遣いの洋介を見下ろす純視点の絵

純はそれを見て一瞬驚いた後、「ふっ」と吹き出す

純「ええ? なにそれ」思わず笑う純(大ゴマ)可愛い笑顔
※純の笑顔はこのコマで初出し

純の笑顔を見て無言で驚く洋介。
洋介(笑っ……)
初めて見る純の笑顔があまりに可愛くて言葉を失っている

純はくすくすと笑い続けている(ちょっとツボにはまった感じで)
純(休憩時間 減らされて不貞腐れる小学生……?)
純(意外とガキっぽいんだな こいつ)

洋介が手を伸ばして、純の頬に触れる(指先だけかすかに)

純「え……」状況が飲み込めない、という表情の純

洋介「今 2人きりなんだけど 東はなんとも思わない?」
真剣な表情の洋介。驚いて硬直している純

純「……いや……何言って……」

洋介「意味、わかんない……? わかってくんないの……?」
純の頬を優しく撫でる洋介 硬直したままの純

ーーーーあ
ーーーーこの感じ あのときと
元彼(もどき)にキスされそうになったシーンが一瞬よぎる
真剣な表情で純を見つめる洋介に元彼の顔(目は描かない)が重なって見えているように表現

『キモすぎでしょ』
元彼の最後の言葉と侮蔑の表情(目無し)がよぎる

純「やっ……」

身をよじりながら洋介の手を払いのける純
直後、はっと我に返って
純「いや……はは……冗談きついってお前」
無理に引きつった笑みを浮かべながら

純「なに……してんのお前 男相手に」
純「カップルごっこは せめて外だけにしとけって じゃないと」

純「……後悔……するから」
涙を堪えるような純の横顔。

洋介「は……?」
意味がわからない、という表情の洋介(正面)

洋介「え……後悔ってな」
純「次からさ」洋介の言葉を遮って話し出す純

純「やっぱ外で会おうぜ」
純「そのほうが わかりやすいじゃん だって」
純「偽装彼女なんだろ」
無理やり笑顔を作りながら言う純

洋介「…………」
洋介は何て言えばいいかわからないという感じで言葉に詰まっている

純「ごめん 今日は帰るわ」
洋介「ちょ……東……」

純「ごめん」
洋介の顔も見ずに立ち上がる純
そのまま一人で部屋を出ていく

一人残される洋介(純を追いかけたりはしない。そこまで必死な自分をさらけ出すこともできない)

洋介「……なんだよ……それ……」
洋介独り言でラスト引き