P1(扉絵/1コマ)

大コマ:沈黙の間。名帳の前に立つ朔真、少し離れて千歳。上方の天窓から斜光。床の黒い水面が低く呼吸する。見開きには〈榊 朔□〉。二人の間に遠拍ラインが細光でつながる。
T:第9話「沈黙の間・後篇」

P2(4コマ)

1 宰導が杖で床を二度打つ。
SFX:カン カン
宰導:『次は血印だ。心の名を、血のひと滴で確かめる』

2 女官が朱盃と針を運ぶ。
女官:『痛みは一瞬。迷えば沈む』

3 UI:鈴 3/名印 60%/喉砂 45%(開始値)

4 千歳、喉札に指を触れ、短く息。
千歳(心の声):(怖くない。——怖くても、進む)

P3(5コマ)

1 朔真、左の指先を自ら刺す。
SFX:ち…

2 朱盃の縁に一滴が落ちる——だが、沈黙の床が滴を吸おうと逆流。
SFX:す…
UI:喉砂 45→43%

3 宰導、口元冷笑。
宰導:『弱い名は沈む』

4 千歳、壁に二拍。
SFX:トン トン
千歳(無声):〈導〉

5 朔真、胸で二拍を返す。滴が揺らぎ、落下の速度が整う。
UI:遠拍ラインが太く。

P4(4コマ)

1 宰導、さらに床を低拍で鳴らす(沈め拍)。
SFX:ド…ン
UI:喉砂 43→41%

2 千歳、指先で机端をそっと押さえる仕草——見えない手が盃の反対側を押さえる演出。
SFX:こと(盃の揺れ止まる)

3 朔真、目尻をわずかに緩め、滴を盃の中心へ落とす。
SFX:ぽと

4 名帳の頁が低く鳴り、□枠の赤光がわずかに薄まる。
名帳の声 SFX:とく…(軽)

P5(5コマ)

1 宰導:『榊 朔——“□”を書け。それが汝の名ならば、通る』

2 朔真、筆を取り、□の左上に**“楔の点”**を置く(前話の位置)。
SFX:と

3 千歳、空中に筆。指先が赤く灯る。
千歳(心の声):(痛くない位置に、息の道を——)

4 朔真、一画目(縦)を迷いなく。
SFX:す…
UI:喉砂 41→40%/名印 60→68%

5 梁上の黒羽紗那、扇で小さく拍。
紗那(小声):『いいテンポ。共拍まで、あと一息』

P6(4コマ)

1 宰導が沈め拍を重ねる。回廊の壁が水紋のように震え、視覚が滲む。
SFX:ド…ン ド…ン
UI:喉砂 40→38%

2 千歳の視界に深幻——王都の穏やかな婚礼、安全な微笑。
幻の声:『彼を忘れれば、息は楽に』

3 千歳、まぶたを伏せ、白薔薇の刺の記憶を指先に思い出す。
千歳(囁き)『痛みも、私の名』

4 千歳、二拍+短。
SFX:トン トン トン(短)
二人(口形)〈在雪・遠〉
UI:遠拍ラインが音符のように結ばれる。

P7(4コマ)

1 朔真、二画目(横)を引き切り、払いの起点に筆を立てる。
SFX:す…
UI:名印 68→78%/喉砂 38→37%

2 宰導、苛立ちの杖。
宰導:『書記官——拍を禁ずる』

3 近衛が千歳の手首に拍止め金具をかけようとする。
SFX:カチャ…

4 その瞬間、紗那が梁から笙の低音。
紗那:『観客は音楽を持ち込むの。規にはないけど、面白いでしょ?』

P8(5コマ)

1 笙の単音が空間に漂い、千歳と朔真の心拍が同位相に揃う。
UI:遠拍 → 共拍(ラインが一拍の輪に)

2 千歳、拍を打たずに、ただ息で合図。
千歳(無声):(一緒に、ここ)

3 朔真、喉の“真”の小字をそっと押す。
UI:喉砂 37→36%

4 筆が払いへふわりと入る。
SFX:ふ…

5 □の中で**〈真〉が結ぶ直前、床の圧が急増**。
名帳の声 SFX:とく…(重)

P9(4コマ)

1 宰導が冷たく宣す。
宰導:『**贄声(にえごえ)**を出せ。名の代価だ』

2 朔真の喉がひときわ軋み、声が零れかける。
SFX:きし…
UI:喉砂 36→34%

3 千歳、自分の喉札を指で押さえ、息の道を“差し出す”ように顔を上げる。
千歳(心の声):(私の息を使って)

4 朔真、極小の声で。
朔真(極小)『……ち、と、せ』
UI:共拍の輪が一段明るく。

P10(5コマ)

1 その呼名が楔になり、名帳の□が裂け、〈真〉の最後の払いが通る。
SFX:す…
UI:名印 78→86%/喉砂 34→33%

2 千歳の喉の鈴が一つ、ほどけ落ちる。
SFX:ころん…
UI:鈴 3→2

3 宰導、顔色を変える。
宰導:『……他者の呼名で通したと? 規を弄ぶな』

4 紗那、扇で頬を扇いで観客の拍手。
紗那:『名は関係。唯一無二なら、道もひとつ増えるの』

5 朔真、筆を置かず、最後の止めを静かに入れる。
SFX:とん

P11(4コマ)

1 見開きが書き換わる。〈榊 朔真〉の名が黒銀に定着。
UI:名印 86→90%

2 千歳の胸に熱。鈴がもうひとつほどける。
SFX:ちり…
UI:鈴 2→1

3 宰導が最後の抵抗——沈め拍最大。
SFX:ド…ン!
UI:喉砂 33→32%(一瞬)

4 千歳、口を開かず、ただ目で〈近〉を送る。朔真、目で〈ここ〉。
UI:共拍の輪、さらに太く。

P12(5コマ)

1 千歳の前に名帳が回る。
官人:『書記官・白瀬千歳。汝の名を記す』

2 筆を受け取る千歳の指が少し震える。
千歳(心の声):(私の名は、私たちでできている)

3 千歳、筆先で小さな点——**“楔”**を自分の名の一画目に置く。
SFX:と

4 朔真、胸で一拍。
SFX:トン
千歳、同時に胸で一拍。
SFX:トン
UI:共拍が一つの音に重なる。

5 千歳、白瀬 千歳と書き切る。
SFX:す…
名帳の声 SFX:とく…(軽)
UI:喉砂 32→35%(彼女の名が息を返す演出)

P13(3コマ・大きめ)

1(大) 千歳の喉の最後の鈴が、静かに解けて落ちる。
SFX:ころ…
UI:鈴 1→0

2 千歳、胸に手。輪紋が円に近づき、淡い光で二重になる。
UI:輪紋重なり度 +10

3 紗那、扇を閉じて満足げ。
紗那:『約束のご褒美、全部返したよ。——ここからは自力でね』

P14(5コマ)

1 名帳の見開き全景。〈榊 朔真〉〈白瀬 千歳〉が対頁に並び、紙面の黒が割れる。
SFX:パキ…
官人:『扉が——』

2 沈黙の間の奥壁に縦の裂け目。白光が滲む。
SFX:す…

3 宰導が震える声。
宰導:『王は——問われる側に立つのか』

4 朔真、千歳の方を見ない規矩のまま、壁に二拍。
SFX:トン トン
千歳(無声):〈在〉(微笑)

5 UI:名印 90%/喉砂 35%/鈴 0(完)

P15(4コマ)

1 裂け目の奥から古い声。
王の声(オフ):『——だれが、わたしを呼んだ』

2 千歳、前へ半歩。
千歳(はっきり)『私たちです。ふたりで一つの拍で』

3 朔真、剣に触れず、喉の“真”の小字を軽く押す。
朔真(極小の声)『……開け』

4 裂け目が一段広がる。光の内に影が揺れる。
SFX:ギ…
宰導(小声):『——来る』

P16(ラスト1コマ)

大コマ 裂け目の向こう、王座のシルエット。光が二人の輪紋と喉紋を一つの輪に重ねる。紙片が舞い、笙の低音がひとつだけ鳴る。
T(モノローグ・千歳):(偽りは沈む。だから私たちは——同じ拍で浮かぶ)
C:To Be Continued