P1(扉絵/1コマ)

大コマ:月の下、山裾の古社。石段に霜。千歳が和紙と小筆を持ち、朔真の喉元にそっと指先を添える。二人の距離は息が触れそう。刀「月白」は社殿の灯影に置かれ、刃に淡い古文字。
T:第4話「名を贈る」

P2(4コマ)

1 書庫。桂庵が古文書を掲げる。見開きに「贈名」「名は刃」と大書。
桂庵:『“名は刃”。失われた一字を返せば、封は半歩だけ退く』

2 千歳:『半歩でも——欲しい』
桂庵(頷き):『ただし偽名では扉は開かぬ。贈るのは“仮の鍵”』

3 朔真の喉紋クローズ。**砂時計+「明」**に細いひび。
UI:砂が半分を少し切る(時間圧)

4 千歳、紙束と墨を抱える。
千歳(心の声):(私の一字で、あなたの息が少しでも)

P3(5コマ)

1 千歳が文籍をめくる。「沈黙の儀」の挿絵:少年の喉に印、名簿から一字が掠れ落ちる図。
UI:戒壇・王印

2 フラッシュ。少年期の朔真、王城の間で声を供出する儀式。
司祭(回想):『声は王の剣となれ』

3 名簿の「榊 朔**□**」に朱。二字目が削られる。
UI:切り取られた紙片

4 現在。机上の剣士台帳に「榊 朔」と記載。
千歳(眉を寄せる):『記録ではずっと……“朔”』

5 千歳がそっと呟く。
千歳(小声):『——でも、あなたは“朔真(さくま)”であってほしい』

P4(5コマ)

1 古社へ向かう石段。夜気が白い。朔真、無言で横を歩く。
SFX:とっ…とっ…

2 千歳、歩きながら掌で拍を刻む。
千歳:『一拍目、私。二拍目、あなた』

3 朔真、掌に指で返す(〈双拍〉の合図)。
SFX:す…

4 社殿。灯の前に座す二人。千歳、和紙を広げ、細筆に蘇芳(すおう)色の墨を含ませる。
桂庵(オフ):『皮膚に書くなら“点(てん)”で。すべらせるな、痛む』

5 朔真、鉢巻を緩め、喉元をさらす。封印紋が静かに脈動。
UI:紋の呼吸

P5(4コマ)

1 千歳、指先を軽く喉へ。触れるか触れないかの距離。
千歳(囁き):『痛かったら、合図して』

2 朔真、目だけで〈大丈夫〉。喉に千歳の手を重ねさせる。
SFX:とく…(振動)

3 千歳、小さな“点”を一つ、封印紋の裂け目の端に置く。
SFX:と

4 一瞬、紋がざわめく。千歳の肩が震える。
千歳(息):『……っ』

P6(5コマ)

1 千歳、深呼吸。耳元に口を寄せ、短い共語で“鍵”を添える。
千歳(耳元・息):『〈結〉(ゆ)』

2 刀身の古文字が一拍だけ強く明滅。刃に**“真”の一画**のような光が走る。
UI:刀身に短い縦画

3 朔真の喉に灯。封印線の間を一筋の白がすべる。
SFX:す…

4 朔真、喉がかすかに震え、微音。
朔真(掠れ)『……っ』
千歳(はっと顔を上げ)『今——』

5 微音は風に紛れ聞き取れない。千歳、微笑で涙。
千歳:『少し、帰ってきた』

P7(4コマ)

1 仕上げ。千歳、“真”の小字を和紙に記し、御名札として喉へ貼り合わせる。
SFX:ぴたり

2 朔真、顎を引いて受け入れる。二人の距離—呼吸が触れる。
千歳(囁き):『——朔“真”。これは、私からの“刃”』

3 鎖骨の輪紋が淡く強まる。
UI:半円→重なり度が+10%

4 静寂。行灯の火がぽ、と鳴る。
SFX:ぽ

P8(5コマ)

1 千歳が筆を置いた瞬間——
SFX:ヒュウ…

2 古社の欄間から式紙烏が数羽滑り込む。紙の嘴、朱の目。
隊士(遠景・外から)『風?』

3 千歳、反射で御札を払って防御。
千歳:『〈罩〉(つつ)』

4 朔真、踏み込み→斬撃。紙が斜めに切れ、朱墨が飛ぶ。
SFX:ギン/ぱら…

5 だが一羽が喉札を狙い急襲。
千歳(目を見開く)

P9(4コマ)

1 朔真が抱き寄せ、自分の胸で烏を受けて弾く。
SFX:ドッ
千歳:『っ!』

2 朔真の肩に紙片の切り傷。朱墨が滲む。
UI:赤ではなく朱で上品に

3 千歳、手巾で押さえながら、耳元に極短の息。
千歳(息):『〈和〉(や)』

4 刀身が柔光。紙烏の動きが鈍り、朔真の一閃で一掃。
SFX:ザシュ/ひら…

P10(4コマ)

1 静けさ。床に散る紙片に、王城印の細印。
千歳(眉を寄せる):『王……城?』

2 桂庵が社の外から駆け込む。
桂庵:『式紙……王の目だ。贈名に反応したな』

3 千歳、喉の御名札に指先。
千歳(心の声):(「真」を贈ったことが、届いた)

4 朔真、千歳の筆を取り、彼女の掌に一字。
UI:〈在〉(いる)
朔真(目で):〈ここにいる〉

P11(5コマ)

1 古社裏の屋根。黒羽紗那が脚をぶらぶら、笙を膝に。
紗那:『ふふ。偽名で扉は開かない——でも上出来。痛みが、二人の字を濃くする』

2 朔真、紗那を鋭く見る。
朔真(目が細い刃)

3 紗那:『王は気づいた。**“沈黙の儀”**がまた動く。——本名を差し出す日取り、間もなく』

4 千歳:『本名を——奪うつもり?』
紗那(肩をすくめ):『奪う? 違うわ。“暴かせる”だけ』

5 紗那、扇を開き、紙片を風に。
紗那:『さ、続きを。今夜の鈴は“恋結び”。真実じゃなきゃ解けないよ?』

P12(4コマ)

1 夜の街上。鈴陣が千歳の喉で二重に絡む。
UI:鈴8の表示(小)

2 千歳、朔真の耳へ至近。
千歳(無声の口形)〈好き。怖いけど、好き〉

3 鎖骨の輪紋が一瞬、円に近づく。鈴結びがほどける。
SFX:ほど…

4 UI:8→7。紗那、満足げに指を鳴らす。
紗那:『合格。あと七つ』

P13(4コマ)

1 明け方手前。帰路の橋。息は白い。
千歳、朔真の袖を小さく掴む。
千歳(小声):『……王城が、来る』

2 朔真、袖越しに指を絡め返す。
朔真(目で):〈恐れない〉

3 千歳、胸元で拍を二つ。
千歳:『一拍目、私。二拍目——あなた』

4 朔真も机を打つ仕草の二拍を空気に。二人の足音が重なる。
SFX:たっ たっ

P14(5コマ)

1 書庫。桂庵が封蝋つきの公文を掲げる。封は未だ割れていない。
桂庵:『今、城使が門に。——勅の本書だ』

2 千歳、喉の御名札に触れ、小さく頷く。
千歳(心の声):(もう、逃げない)

3 朔真、刀をそっと立て掛け、千歳の手を包む。
朔真(目で):〈共に〉

4 桂庵、封を割る寸前で視線を上げる。
桂庵:『読むぞ』

5 封蝋アップ——王印が冷たく光る。
SFX:ぱき…

P15(3コマ・大きめ)

1(大) 本文見開き。筆太く——
公文(本文・抜粋):
『筆頭剣士 榊 朔、書記官 白瀬 千歳を勅して召す。
 明三日、王城“沈黙の間”に参列し、儀に供すべし。』
UI:王印・宰印

2 千歳の瞳に決意の光。
千歳:『——行こう。言葉で殴りに』

3 朔真、喉元の**“真”の小字**を指先で軽く押さえ、頷く。
SFX:とん(自分に誓う音)

P16(ラスト1コマ)

大コマ 夜がほどけ、薄青の黎明。王城の塔が遠景に黒く立ち、道の先で二人の影が重なる。千歳の鎖骨の輪紋は淡く光り、朔真の喉の砂時計はわずかに砂を吐く。
T(モノローグ・千歳):(偽の名でも、零れた声でもいい。——本物に届くまで、二人で刻む)
C:To Be Continued