P1(扉絵/1コマ)

大コマ:夜の書庫。行灯の灯。千歳と朔真が向かい合い、互いの手の甲に小筆で文字を書く。額と額がコツンと重なる直前。刀「月白」は壁に立て掛け、刃に淡い古文字の波。
T:第3話「共語(ともご)を編む」

P2(4コマ)

1 書庫長・桂庵、古文書を開く。見開きに「共語」「二人一振」の文字。
桂庵:『“共語”——二人の拍と心で織る言葉。片方だけでは響かぬ』

2 千歳、真剣な目。
千歳:『二人で……言葉を作る』

3 朔真の喉紋が薄く明滅。
UI:封印紋の呼吸(かすかな脈)
桂庵:『急くな。拍は“生”に寄り添うほどいい』

4 書庫の外窓に、遠く鈴の影。黒羽紗那の気配が一瞬《コロリ》と転がる。
SFX:ころ…

P3(5コマ)

1 千歳、深呼吸。自分の胸元でトン、トンと二拍。
千歳:『一拍目、私——』

2 朔真、左手で机をコツ、コツ。
UI:無言の二拍(音符記号のような小さな描写)

3 額コツン。
SFX:こつ
千歳(囁き):『——合わせるね』

4 千歳、朔真の喉に手を添え、振動を読む。
SFX:とく…とく…

5 二人、同じ息で短い音価。「ふたり——ひと」。
千歳(息):『……ふ』
朔真(無声の口形):〈たり〉

P4(5コマ)

1 初試行。千歳、耳元で新たな鍵。
千歳(耳元囁き):『共に——響け』

2 刀身、通常の古文字にもう一段、薄い譜線が重なる(共語の前兆)。
UI:古文字譜が二重に

3 しかし鈴紋が千歳の喉できゅと締まる。
SFX:きゅ…

4 朔真の喉紋がビリと波打ち、痛み。
朔真(息)「…っ」
千歳:『ごめん!』

5 桂庵、制止。
桂庵:『焦らず、言葉を“短く”してみなさい』

P5(4コマ)

1 夜の屋根上。二日目の鈴解き。細い月。
UI:千歳の喉元に鈴の輪が十—一つだけ淡く揺れる

2 紗那が対屋根で笙を鳴らし、挑発的に微笑。
紗那:『今夜は“二結び”——外せたら一点。遊びましょう?』

3 千歳、結び目に手を伸ばすが、触れるだけでは解けない。
千歳(息):『……解(ほど)け……』

4 足場が崩れ、千歳が滑る。
SFX:ガラ…
朔真が抱き寄せる。
朔真(腕で固定)
千歳(赤面)『っ!』

P6(5コマ)

1 抱き寄せた体勢のまま、千歳が無声囁き。
千歳(息・点線):『——(鍵・一拍)』

2 朔真、喉の振動を千歳の掌に伝える。
SFX:とく…とく…

3 二人で短い共語の断片。
二人(小さな口形)〈双拍〉(そうび)

4 鈴の結びがふっと緩む。
SFX:ほど…

5 鈴輪が一つ消える。
UI:10→9のビジュアル変化
紗那(遠景で微笑)『いい子』

P7(4コマ)

1 屋根の端で一息。千歳、胸に手。
千歳:『“短く、二人で”——それが、合う』

2 朔真、千歳の手の甲に指で〈双拍〉の字を書く。
SFX:す…す…

3 千歳、微笑。
千歳:『合図、決めよう。私が——』

4 朔真、顎をわずかに引く(承認)。
UI:簡易シグナル表(目線→“耳”、指→“喉”、握り→“起動”)の極小コマ

P8(5コマ)

1 翌夕。町家の座敷で怪異。簪(かんざし)に怨が宿り、風もないのに襖が鳴る。
依頼人:『嫁入り道具が急に……』

2 千歳、簪にそっと触れ、拍を刻む。
千歳(囁き):『——寂しい音』

3 襖が勢いよく開き、紙片が舞う。
SFX:バサッ

4 朔真が一歩前へ。千歳、背に手を添えテンポを送る。
千歳(息):(一、二)

5 二人、目を合わせ短い共語。
二人(口形)〈抱〉(いだ)

P9(4コマ)

1 刀身に二重譜がくっきり。古文字が円環に織り、簪の怨を抱きすくめるように光が包む。
SFX:トン…

2 座敷の空気が柔らぐ。
依頼人(涙)『泣き声が……消えた』

3 千歳、喉を押さえつつも微笑。
千歳:『痛かったのよね……大丈夫、もう行ける』

4 簪の影が花弁になって散る。
UI:小花の紋→風にほどける

P10(5コマ)

1 外へ。夕焼け。朔真の喉紋が突然きしむ。
SFX:ピシ…
千歳:『……!』

2 喉紋クローズ。砂時計(ひび)の印が現れ、砂が上から下へ落ち始める演出。
UI:夜明け刻印

3 桂庵が駆け寄り、顔を曇らせる。
桂庵:『夜明けまでに“音”が尽きる——刻印か』

4 千歳、決意。
千歳:『夜が終わる前に、毎夜ひとつずつ“鈴”を解く』

5 朔真、千歳の肩に手を置く。
朔真(目で「共に」)

P11(3コマ・大きめ)

1(大) 路地の屋根上、紗那が笙の指を止め、面白がる瞳で見下ろす。
紗那:『へぇ——夜明け刻印まで出したの。いいね、その焦り』

2 紗那、扇で口元を隠し、艶やかに囁く。
紗那:『“名”をくれたら楽にしてあげる。筆頭の沈黙——すぐ解けるよ?』

3 千歳、まっすぐに首を振る。
千歳:『名は刃。無闇に振るわない』

P12(5コマ)

1 書庫へ戻る道。灯が揺れる小橋。
千歳、朔真の手の甲に**小筆で〈双拍〉**と書く。
SFX:さら…

2 朔真、同じ場所に指でなぞり返す。
SFX:す…

3 千歳、ためらいがちに筆を持ち、朔真の喉の皮膚の上で“点”だけ置く(痛くない位置)。
千歳:『……ごめん、痛くない?』

4 朔真、小さく首を横(痛くない)。
UI:点の位置=“次回の鍵の置き所”の印

5 千歳、笑って涙を指で拭う。
千歳:『ありがとう。——一緒に、作ろう』

P13(4コマ)

1 夜。三日目の鈴解き。屋根の渡り廊下。
UI:鈴輪 9→8にできるチャンス

2 紗那の鈴陣が二重の結びに。
紗那:『今夜は“噓の結び”。本心でなければ解けないよ』

3 千歳、朔真の耳へ口形だけで言う。
千歳(口形)〈こわい。でも、あなたとなら〉

4 二人の鎖骨の半円が強発光し、結びが解ける。
SFX:ほどり…
UI:9→8

P14(4コマ)

1 紗那、嬉しそうに目を細める。
紗那:『まっすぐは、甘い。……ねえ、書記姫』

2 紗那、屋根の縁に腰掛け足をぶらぶら。
紗那:『本丸(ほんまる)は王城。“沈黙の儀”。——物語は、そこで口を開く』

3 朔真の喉紋がさらにひび。砂時計の砂が半ば。
UI:夜明けまでの残量可視化

4 千歳、握った拳を胸に。
千歳(心の声):(夜ごと一つ、昼は言葉を——積む)

P15(3コマ・大きめ)

1(大) 書庫。机上に共語ノート。見開きに〈双拍〉〈抱〉〈和(やわ)〉など、短い“二人語”が並ぶ。
T(モノローグ・千歳):(短く、真っ直ぐ、二人で——)

2 千歳、筆を走らせ、空白の欄に**〈名(な)〉**と小さく書いてから、ためらって消す。
SFX:す…(消し線)

3 朔真、千歳の手を上から包む。
朔真(目で〈急がない〉)
千歳(小声)『……うん』

P16(ラスト1コマ)

大コマ 明け方。屋根の縁、薄明の空。朔真の喉紋が形を変え、**砂時計の下に小さく「明」**の字が灯る=夜明け刻印。千歳の鎖骨の輪紋は淡く円に近づく。
T(モノローグ・千歳):(夜明けが来るたび、彼の音が減る。だから——今夜も、言葉で戦う)
C:To Be Continued