P1(扉絵/1コマ)
大コマ:昼の稽古場。朔真が背後から千歳の手を取り、筆と木刀の角度を揃える。千歳は頬を赤く、耳元には前話の輪紋が薄く残光。
T:第2話「声の代償」
P2(4コマ)
1 屋外稽古場。桂庵が拍子木を鳴らす。
桂庵:『言霊は拍子。千歳、君は“拍”が美しい』
2 千歳、深呼吸しながら短い音節の練習。
千歳:『は・く/し・ろ』
SFX:す…(息の音)
UI:口元の小さな波線
3 朔真、千歳の背中越しに手を添え体の軸を正す。
朔真(無言・顎で「肩を落とせ」の合図)
千歳(小声)『は、はい……』
4 木陰の上、黒羽紗那が扇で口元を隠し、遠巻きに観察。
紗那(心の声):(拍も声も蜜の香り)
P3(5コマ)
1 千歳、耳に手を当てリズム取り。
千歳:『月白——二拍、静——一拍』
2 朔真、刀を抜き構える。喉元の封印文様が微かに波。
UI:封印紋の呼吸(薄く明滅)
3 千歳、耳元へ寄り囁く直前の距離。
SFX:とん(朔真が肩に軽く触れる)
4 囁き。
千歳(耳元囁き):『醒めよ、《月白》』
5 刀身に古文字が走る。稽古用の藁束を斬り、切断面が美しい。
隊士(見学):『ひゅ〜、今日も合ってる』
P4(5コマ)
1 連続起動の練習。千歳の喉が少し掠れる。
千歳:『——っ、く、……』
SFX:ぱさ(喉札の角が乾いて反る)
2 朔真、御札ケースから新しい札を取り出す。
SFX:しゃり(紙の音)
3 喉札を貼り替え。朔真の指が千歳の喉のラインをなぞる。
千歳(赤面)『……ありがとうございます』
4 朔真、薬湯の湯呑みを差し出す。
朔真(目で「飲め」と促す)
5 千歳、湯呑みを受け取り指が触れる(ドキ)。
千歳:『あ、熱……でも優しい味』
P5(4コマ)
1 市中巡邏へ。昼の露店通り。
桂庵:『街にも出て、拍の“流れ”を感じなさい』
2 千歳、店先の猫と目が合い微笑む。
千歳:『かわいい……』
3 路地に怯えた妖の子(白い輪郭)がうずくまる。
千歳:『待って——怖くないわ』
4 千歳が膝をつき、指でゆっくり拍を刻むと、妖の子の震えが和らぐ。朔真が少し驚く。
朔真(目がわずかに丸くなる)
P6(5コマ)
1 妖の子、千歳の手をぺたりと触れ、白い指跡が残る(祝福のしるし)。
UI:白い小花模様
2 朔真、その手跡に視線を落とし、手巾で軽く押さえる。
朔真(目だけで「よくやった」と伝える)
千歳(微笑)『……はい』
3 路地の奥、笙の音色が細く流れ込む。
SFX:ひゅる…
4 紗那、路地の屋根に腰かけ笙を吹く。音の糸が千歳の喉元へ細く伸びる。
紗那(心の声):(少しだけ“鈴”を結びましょう)
5 千歳の喉に鈴紋が一瞬だけ浮かび、すぐ消える。千歳は気づかない。
UI:小鈴の紋・点滅
P7(4コマ)
1 夕刻の警鐘。
SFX:カン…カン…
伝令:『北堀に裂け目!』
2 千歳・朔真が駆ける。
SFX:タッ タッ
3 裂け目から鳥型の妖が群れで出現。
隊士:『数が多い!』
4 千歳、耳元に行こうとするが咳が出る。
千歳:『こほ……っ』
SFX:から…(声が絡む)
P8(5コマ)
1 千歳、詠唱を試みるが声が絡まる。
千歳:『醒、——っ……』
UI:喉元に鈴紋が浮かび、音の輪が縛られる演出
2 妖の爪が迫る。
隊士:『逃げろ!』
3 朔真、千歳の腰を抱え横跳躍で回避。
SFX:バッ
4 着地。千歳、悔しさに唇を噛む。
千歳(心の声):(だめ、声が——奪われてる)
5 朔真、千歳の頬に手を当て、目で合図「落ち着け、近く」。
朔真(視線で“耳”を指す)
P9(4コマ)
1 千歳、朔真の耳元に極接近。
千歳(無声囁き・点線吹き):『……(鍵)』
2 刀身が微振動、古文字が浮かび始める。
SFX:ビィ…
3 だが鈴紋が再び締め、音が途切れる。
UI:鈴の結びがきゅっと締まる
4 千歳、筆談で『もっと近く』と朔真の指に書く。
SFX:す…(指先の筆談)
P10(5コマ)
1 朔真が千歳の手を自分の喉に添えさせ、喉の振動で拍を伝える。
SFX:とく…とく…
2 千歳、息だけの鍵を耳へ。
千歳(無声囁き):『……(鍵・二拍)』
3 刀身、完全起動。古文字が濃く走る。
SFX:キィィィン
4 朔真、群れの中へ切り込む。
SFX:ギン/ザッ
5 千歳、喉を押さえつつ拍を送り続ける(手の合図)。
UI:千歳の指→朔真の肩へ、リズムの矢印
P11(4コマ)
1 強い個体が滑空、隊士に襲いかかる。
隊士:『ぐっ——!』
2 朔真が割り込み受け流し→斬り下ろし。
SFX:ガキィ/ド
3 千歳、無声の共語の欠片を口形で送る。
千歳(口形アップ)『〈君と刃はひとつ〉』
4 一瞬だけ輪紋が淡く重なり、斬撃が伸びる。
UI:輪紋の半円→円
SFX:スッ
P12(4コマ)
1 小康。妖の群れが怯み後退。
隊士:『押し返した!』
2 千歳、壁に手をつき息を整える。喉札の端がさらに反り小さく裂ける。
SFX:ぱり…
3 朔真、千歳の背に手を置き、支える。
朔真(目で「無理をするな」)
4 千歳、悔し涙を拭う。
千歳(小声)『……奪われたままなんて、嫌』
P13(3コマ・大きめ)
1(大) 屋根上から黒羽紗那が拍手。笙を肩に担ぎ、余裕の笑み。
紗那:『見事。声を絡め取られても、息で鍵を渡すなんて』
2 朔真、無言で警戒。刀先がわずかに紗那へ向く。
SFX:す…
3 紗那、千歳へ視線を落とす。
紗那:『あなたの声、甘いの。少し味見をしただけ』
P14(5コマ)
1 千歳、一歩前に出る。
千歳:『返して。私の声を』
2 紗那、扇で口元を隠しながら愉快そう。
紗那:『交渉しましょう? “鍵”と“鍵”の物々交換』
3 千歳:『鍵?』
紗那:『筆頭の沈黙を解く鍵。——彼の“本名”。』
4 朔真、僅かに肩が動く(反応)。
UI:喉の封印がぴしとひび割れる極小カット
5 紗那:『あなたの声、全部返す。だからその鍵、ちょうだい?』
P15(4コマ)
1 桂庵が駆けつけ、二人の前に一歩出る。
桂庵:『黒羽……君の狙いは王城の沈黙儀式か』
2 紗那、肩をすくめる。
紗那:『狙いなんて無粋。——ただ、物語を前に進めたいだけ』
3 千歳、躊躇なく首を振る。
千歳:『渡しません。彼の“名”は、彼のもの』
4 紗那、楽しげに目を細める。
紗那:『いい返事。じゃあ——遊びを続けましょう』
P16(ラスト1コマ)
大コマ 紗那が指を弾くと、空中に鈴紋が連なる陣が現れ、千歳の喉に響きが返ってくる。
紗那:『十日間で“声”を覚えて返すのはどう? その間、あなたは毎夜——私の鈴を解いてみせて』
T(モノローグ・千歳):(十日で——声も、名も、私たちのものにする)
C:To Be Continued



