P1(扉/1コマ)
大コマ:沈黙の間の裂け目がさらに開き、白光の奥に王座の陰。紙片が雪のように舞う。
T:第10話「雪どけの誓い」
王の声(オフ):『——名とはなにか。唯一無二とは、なにによって立つ』
P2(4コマ)
1 宰導が一歩進み、冷ややかに。
宰導:『答えよ、榊 朔真。白瀬 千歳。言葉で』
2 朔真、喉の“真”の小字に指をあて、短く息。
朔真(極小の声)『……名は、呼ばれて立つ』
3 千歳、頷き、遠拍→共拍の輪をそっと指で撫でる仕草。
千歳:『呼び返されてほどけず、二人で進む道。——それが唯一無二』
4 王の声、低く。
王の声:『証を示せ』
P3(5コマ)
1 名帳が自動で開き、白紙の補遺頁。
官人:『王前補筆(おうぜんほひつ)。——刃の名を満たせ』
2 朔真が刀「月白」を台へ置く。刃文が心音のように脈打つ。
UI:名印 90%
3 千歳、空中に筆の形——最小の“点”を刃に重ね示し。
千歳(無声):〈楔〉
4 朔真、最後の払いへ筆致を預ける動作。
SFX:ふ…
5 宰導、床を沈め拍。
SFX:ド…ン
UI:喉砂 35→34%(吸われる)
P4(4コマ)
1 千歳、拍を打たず、ただ耳元の記憶で囁く——(無声の吹き出し)。
千歳(無声):〈ここ〉
2 朔真、極小の声で応じる。
朔真:『……いる』
3 刃上の名印が一気に走る。最後の払いが光で結ばれる。
SFX:しゃん
UI:名印 100%
4 王の声、わずかに色を帯びる。
王の声:『通った』
P5(5コマ)
1 刃から白い息が立ちのぼり、朔真の喉紋へ逆流。
UI:喉砂 34→40%
2 朔真が驚きに目を瞬き、小さく咳。
SFX:こほ…
微かな声:『……ち』
3 千歳、ぱっと顔を上げ、笑む。
千歳(小声)『——さい』
4 共拍の輪が一段明るく、二人の間の空気が近づく。
UI:喉砂 40→45%
5 宰導、顔を歪める。
宰導:『声を返すとは——王命を減ずることだぞ』
P6(4コマ)
1 王の声、静かに遮る。
王の声:『命は分かち合うほど増す。——沈黙の儀は、過去のもの』
2 宰導、蒼白。
宰導:『王よ……!』
3 梁の黒羽紗那、扇で小さく拍手。
紗那:『やっと面白くなってきた』
4 千歳が王へ向き直る。
千歳:『お願いがあります。——城外の広場で、皆の前に言葉を残したい』
P7(5コマ)
1 宰導、即座に拒否の口。
宰導:『儀の外での発声は——』
2 王の声:『許す』
空気がふっと軽くなる。
3 回廊の扉が開き、王城前広場へ導く石段。冬の陽が差す。
SFX:きい…
4 朔真、喉に手を置き、千歳を横目で一瞬だけ見る。
朔真(極小)『……行こう』
5 UI:喉砂 45→48%
P8(4コマ)
1 広場は冬晴れ。人々がざわめき、二人の姿に目を見張る。
群衆:『書記姫だ!』『筆頭の声が——?』
2 宰導の差し金か、旧王太子派の近衛が列の端で手に影鎖。
近衛(小声)『……隙あらば』
3 黒羽紗那が柵上で足をぶらぶら。
紗那:『観客は前のめり』
4 千歳、石段の途中でふり返り、朔真に視線だけの問い。
千歳(無声):〈一緒に〉
P9(5コマ)
1 二人、並んで前へ。千歳が深く息。
千歳(はっきり)『——私は白瀬 千歳。名は、呼び合って立つものです』
2 群衆のざわめきが収束。
SFX:す…
3 朔真、喉がきしみつつ一語。
朔真(低く)『俺は、榊 朔真。彼女に呼ばれてある』
4 旧近衛が影鎖を投げる。
SFX:びゅっ
5 朔真、刀を抜かず、足運びだけで鎖を絡め返す。
SFX:からん
近衛:『ッ——!』
P10(4コマ)
1 千歳、机も紙もない空に筆先を描き、文字の骨格を示す。
千歳:『名前は鎖じゃない。橋です。——渡るための』
2 朔真、千歳の空筆に手の甲を添える(触れず、影だけ重ねる)。
朔真(極小)『……渡ろう』
3 二人の共拍が広場全体に波紋のように広がる。
SFX:トン(低く、広い)
4 UI:喉砂 48→52%(声が温まる演出)
P11(5コマ)
1 群衆の中の少女が口ずさむ。
少女:『わたしも、だれかに——呼ばれたい』
2 老職人:『名は仕事でもある。呼ばれて手が動く』
3 その声々が合奏になり、石畳の霜がきらめく。
SFX:しゃり…
4 千歳、最後の言葉。
千歳:『手を放しても、拍でそばにいる』
5 朔真、短く。
朔真:『ここにいる』
P12(4コマ)
1 朔真が片膝。剣を地に。群衆が息を呑む。
SFX:す…
2 朔真(低く、確かな声)『契約ではなく、俺の心で。——生涯、隣に立ってくれ』
3 千歳、潤んだ目で笑い、一歩。
千歳:『はい。私の言葉で、あなたに』
4 二人、公衆の前で口づけ。冬陽が白く反射。
SFX:ふ…
P13(3コマ・大きめ)
1(大) 群衆の歓声。雪が舞い、鐘が遠くで鳴る。
群衆:『おめでとう!』『唯一無二だ!』
2 UI:喉砂 52→55%(声の返還、安定)/名印 100%(安定)/輪紋:完全な円(薄光の二重)
3 黒羽紗那、扇の陰でいたずらな笑み。
紗那:『甘い。——だから苦味も映えるのよ』
P14(5コマ)
1 王城の高みへ黒い烏が舞い戻る。宰導の袖で震え。
烏(ささやき)『古社(ふるやしろ)——欠け名の灯が点く』
2 宰導、薄笑い。
宰導:『王が沈黙を解いたなら——忘れ名狩りを放つまで』
3 紗那、ふと表情を翳らせる。
紗那(心の声):(……黒羽の血が、また騒ぐ)
4 千歳、群衆の彼方に古い鳥居の影を見上げる(遠景)。
千歳(小声)『……あの向こうに、次の言葉』
5 朔真、千歳の指に自分の指を重ね(触れる)。
朔真:『行こう。橋を、つくりに』
P15(4コマ)
1 兵たちが槍を掲げて祝う。
兵:『将軍と書記姫に栄えあれ!』
2 マリル(群衆の隅で手を振る):『お二人とも——おめでとうございます!』
3 桂庵、苦笑い。
桂庵:『蜜のあとには渋茶だ。道具と地図を用意しよう』
4 千歳、頷き。
千歳:『次は古社。——王都の外、北の峠』
P16(ラスト1コマ)
大コマ:城外の街路。雪どけの滴が光る。二人が並んで歩き出す足元に、白い小花が顔を出す。遠く、霧の中に鳥居の影。
T(章末キャプション):
第一部・完
——第二部「古社と黒羽」編 予告:
「忘れ名狩り」「欠け名の灯」「黒羽の来歴」。
唯一無二は、血を越えて名前を編み直す。
大コマ:沈黙の間の裂け目がさらに開き、白光の奥に王座の陰。紙片が雪のように舞う。
T:第10話「雪どけの誓い」
王の声(オフ):『——名とはなにか。唯一無二とは、なにによって立つ』
P2(4コマ)
1 宰導が一歩進み、冷ややかに。
宰導:『答えよ、榊 朔真。白瀬 千歳。言葉で』
2 朔真、喉の“真”の小字に指をあて、短く息。
朔真(極小の声)『……名は、呼ばれて立つ』
3 千歳、頷き、遠拍→共拍の輪をそっと指で撫でる仕草。
千歳:『呼び返されてほどけず、二人で進む道。——それが唯一無二』
4 王の声、低く。
王の声:『証を示せ』
P3(5コマ)
1 名帳が自動で開き、白紙の補遺頁。
官人:『王前補筆(おうぜんほひつ)。——刃の名を満たせ』
2 朔真が刀「月白」を台へ置く。刃文が心音のように脈打つ。
UI:名印 90%
3 千歳、空中に筆の形——最小の“点”を刃に重ね示し。
千歳(無声):〈楔〉
4 朔真、最後の払いへ筆致を預ける動作。
SFX:ふ…
5 宰導、床を沈め拍。
SFX:ド…ン
UI:喉砂 35→34%(吸われる)
P4(4コマ)
1 千歳、拍を打たず、ただ耳元の記憶で囁く——(無声の吹き出し)。
千歳(無声):〈ここ〉
2 朔真、極小の声で応じる。
朔真:『……いる』
3 刃上の名印が一気に走る。最後の払いが光で結ばれる。
SFX:しゃん
UI:名印 100%
4 王の声、わずかに色を帯びる。
王の声:『通った』
P5(5コマ)
1 刃から白い息が立ちのぼり、朔真の喉紋へ逆流。
UI:喉砂 34→40%
2 朔真が驚きに目を瞬き、小さく咳。
SFX:こほ…
微かな声:『……ち』
3 千歳、ぱっと顔を上げ、笑む。
千歳(小声)『——さい』
4 共拍の輪が一段明るく、二人の間の空気が近づく。
UI:喉砂 40→45%
5 宰導、顔を歪める。
宰導:『声を返すとは——王命を減ずることだぞ』
P6(4コマ)
1 王の声、静かに遮る。
王の声:『命は分かち合うほど増す。——沈黙の儀は、過去のもの』
2 宰導、蒼白。
宰導:『王よ……!』
3 梁の黒羽紗那、扇で小さく拍手。
紗那:『やっと面白くなってきた』
4 千歳が王へ向き直る。
千歳:『お願いがあります。——城外の広場で、皆の前に言葉を残したい』
P7(5コマ)
1 宰導、即座に拒否の口。
宰導:『儀の外での発声は——』
2 王の声:『許す』
空気がふっと軽くなる。
3 回廊の扉が開き、王城前広場へ導く石段。冬の陽が差す。
SFX:きい…
4 朔真、喉に手を置き、千歳を横目で一瞬だけ見る。
朔真(極小)『……行こう』
5 UI:喉砂 45→48%
P8(4コマ)
1 広場は冬晴れ。人々がざわめき、二人の姿に目を見張る。
群衆:『書記姫だ!』『筆頭の声が——?』
2 宰導の差し金か、旧王太子派の近衛が列の端で手に影鎖。
近衛(小声)『……隙あらば』
3 黒羽紗那が柵上で足をぶらぶら。
紗那:『観客は前のめり』
4 千歳、石段の途中でふり返り、朔真に視線だけの問い。
千歳(無声):〈一緒に〉
P9(5コマ)
1 二人、並んで前へ。千歳が深く息。
千歳(はっきり)『——私は白瀬 千歳。名は、呼び合って立つものです』
2 群衆のざわめきが収束。
SFX:す…
3 朔真、喉がきしみつつ一語。
朔真(低く)『俺は、榊 朔真。彼女に呼ばれてある』
4 旧近衛が影鎖を投げる。
SFX:びゅっ
5 朔真、刀を抜かず、足運びだけで鎖を絡め返す。
SFX:からん
近衛:『ッ——!』
P10(4コマ)
1 千歳、机も紙もない空に筆先を描き、文字の骨格を示す。
千歳:『名前は鎖じゃない。橋です。——渡るための』
2 朔真、千歳の空筆に手の甲を添える(触れず、影だけ重ねる)。
朔真(極小)『……渡ろう』
3 二人の共拍が広場全体に波紋のように広がる。
SFX:トン(低く、広い)
4 UI:喉砂 48→52%(声が温まる演出)
P11(5コマ)
1 群衆の中の少女が口ずさむ。
少女:『わたしも、だれかに——呼ばれたい』
2 老職人:『名は仕事でもある。呼ばれて手が動く』
3 その声々が合奏になり、石畳の霜がきらめく。
SFX:しゃり…
4 千歳、最後の言葉。
千歳:『手を放しても、拍でそばにいる』
5 朔真、短く。
朔真:『ここにいる』
P12(4コマ)
1 朔真が片膝。剣を地に。群衆が息を呑む。
SFX:す…
2 朔真(低く、確かな声)『契約ではなく、俺の心で。——生涯、隣に立ってくれ』
3 千歳、潤んだ目で笑い、一歩。
千歳:『はい。私の言葉で、あなたに』
4 二人、公衆の前で口づけ。冬陽が白く反射。
SFX:ふ…
P13(3コマ・大きめ)
1(大) 群衆の歓声。雪が舞い、鐘が遠くで鳴る。
群衆:『おめでとう!』『唯一無二だ!』
2 UI:喉砂 52→55%(声の返還、安定)/名印 100%(安定)/輪紋:完全な円(薄光の二重)
3 黒羽紗那、扇の陰でいたずらな笑み。
紗那:『甘い。——だから苦味も映えるのよ』
P14(5コマ)
1 王城の高みへ黒い烏が舞い戻る。宰導の袖で震え。
烏(ささやき)『古社(ふるやしろ)——欠け名の灯が点く』
2 宰導、薄笑い。
宰導:『王が沈黙を解いたなら——忘れ名狩りを放つまで』
3 紗那、ふと表情を翳らせる。
紗那(心の声):(……黒羽の血が、また騒ぐ)
4 千歳、群衆の彼方に古い鳥居の影を見上げる(遠景)。
千歳(小声)『……あの向こうに、次の言葉』
5 朔真、千歳の指に自分の指を重ね(触れる)。
朔真:『行こう。橋を、つくりに』
P15(4コマ)
1 兵たちが槍を掲げて祝う。
兵:『将軍と書記姫に栄えあれ!』
2 マリル(群衆の隅で手を振る):『お二人とも——おめでとうございます!』
3 桂庵、苦笑い。
桂庵:『蜜のあとには渋茶だ。道具と地図を用意しよう』
4 千歳、頷き。
千歳:『次は古社。——王都の外、北の峠』
P16(ラスト1コマ)
大コマ:城外の街路。雪どけの滴が光る。二人が並んで歩き出す足元に、白い小花が顔を出す。遠く、霧の中に鳥居の影。
T(章末キャプション):
第一部・完
——第二部「古社と黒羽」編 予告:
「忘れ名狩り」「欠け名の灯」「黒羽の来歴」。
唯一無二は、血を越えて名前を編み直す。



