P1(扉絵/1コマ)

大コマ:月下の屋根縁。朔真が千歳を背に庇い、刃先に古文字が淡く灯る。千歳は朔真の肩越しに身を寄せ、耳元へ口を近づける。
T(題字):月下の筆頭剣士と書記姫
T(サブ):第1話「誓いの誤作動」

P2(4コマ)

1 夜の宮都外れ。鳥居列の向こうで妖が暴走、炎でなく冷たい瘴気が地面を這う。鐘の音。
M(モブ):『東門! 妖が裂けた!』
SFX:ゴウ…/ザワ…

2 筆頭隊が駆ける。朔真、無言で前へ。
隊士A:『筆頭、書記がまだ——!』
朔真(無言の鋭い視線)

3 妖の爪が石畳を裂く。
SFX:ガリ…ッ

4 その背後から、千歳が必死に走り込み、書記装束の紐を結び直す。
千歳(心の声):(怖い。でも、行く——)

P3(5コマ)

1 千歳、息を整え“拍”を取る仕草(指先でトン・トンと胸の前)。
千歳(小声):『拍は月、呼びは白——』

2 妖が跳ぶ。隊士が弾かれ、刃が鈍い。
隊士B:『刃が効かねぇ!』

3 朔真の横顔アップ。喉の封印文様が淡く浮く。無言のまま左手を差し出す。
SFX:す…

4 千歳の手首を掴む朔真。繋がりの瞬間、視線が合う(ドキ)。
千歳(心の声):(冷たい……でも、熱い)

5 朔真、顎で合図“来い”。
千歳(小声):『はい』

P4(4コマ)

1 朔真が千歳を背に位置取らせ、耳元へ顔を寄せさせる位置に軽く手で導く。
朔真(無言)
SFX:とん(肩に触れる)

2 千歳の口元寄り。囁きの吹き出しは細字。
千歳(耳元囁き):『醒めよ、《月白(げっぱく)》』

3 刀身に古文字が走る。キィンと高い刀鳴り。
SFX:キィィィン…
UI:〈月白〉の字形が光って流れる

4 一閃。妖の腕が切り裂かれ、瘴気が飛沫のように散る。
隊士C:『通った!』

P5(4コマ)

1 連続で押す朔真。千歳は拍を刻み、短い言霊を重ねる。
千歳:『白を二拍、静を一拍——』

2 妖が反撃。朔真が半身で千歳を庇い、斬り上げ。
SFX:ザッ/ギン

3 千歳の喉が掠れる。
千歳:『……っ、ぁ』
SFX:チリ…(喉札が乾く音)

4 朔真、御札ケースに手を伸ばし、千歳の喉元へ札を貼り直す。距離が近い。
朔真(目だけで“息を整えろ”と示す)
千歳(真っ赤)『す、すみません』

P6(5コマ)

1 新手の妖——体格の大きい“主(ぬし)”級が出現。
隊士A:『主だ! 退け!』

2 千歳、覚悟の目。
千歳(小声):『大丈夫……私の声で』

3 朔真、千歳の掌に指で字形を書く(刀名の合図)。
SFX:す…す…
千歳(心の声):(これで、合う)

4 ふたり同時の動き。
千歳(囁き):『月白、弐拍。』
朔真(踏み込み)

5 斬撃と共に、瘴気が大きく裂ける。
SFX:ドウッ

P7(4コマ)

1 瞬間、妖の背後に影。屋根上から笙の音がひゅうと滑り込む。
SFX:ヒュウウ…

2 千歳の喉元に黒い鈴紋が一瞬だけ浮く(誰もまだ気づかない伏線)。
UI:小さな鈴の紋が点滅

3 主が咆哮し、地面が軋む。
SFX:オオオ…

4 朔真、低い姿勢からの斬り上げ。刀身の古文字が一段濃く。
SFX:ギャリッ

P8(5コマ)

1 連携の最中、千歳の声が絡む。
千歳:『——つ、月——っ』
SFX:から…(声が結ばれない音)

2 妖の爪が迫る。
隊士B:『危ない!』

3 朔真が千歳の腰を抱え、跳躍。
SFX:バッ

4 屋根に着地。千歳、息が上がる。
千歳:『す、すみません……声が……』

5 朔真、筆談のように空気へ指で〈耳〉の字を描く合図。
朔真(無言で、耳を指す)
千歳(はっとして頷く)

P9(4コマ)

1 無声囁き。千歳、朔真の耳朶に唇だけを寄せ、声にならない“息の鍵”を送る。
千歳(無音の吹き出し:点線)『… …(鍵)』

2 刀身が微振動し、古文字が再起動。
SFX:ビィ…

3 朔真が視線だけで「行く」と問い、千歳が小さく頷く。
千歳(うなずき)

4 ふたりの足運びが拍で合うカット。
SFX:タッ タッ

P10(5コマ)

1 朔真、正面へ。千歳、背に片手を添えテンポを送る。
千歳(無声):(一、二、——)

2 千歳、思わず共語の欠片を口形で呟く(息だけ)。
千歳(唇形アップ)『〈君と刃はひとつ〉』

3 暴発。ふたりの鎖骨に半円の輪紋が輝き、磁石のように引き合う。
SFX:トクン(心音)

4 互いに引き寄せられ、距離ゼロ。
千歳・朔真(息が触れ合う距離)

5 屋根上の紗那の目が細まる。
紗那(心の声):(誓いの紋まで暴いたのね)

P11(3コマ・大きめ)

1(大) 誤作動のキス。ふたりの唇が触れる一瞬、時間が止まる。刀身と輪紋が同調発光。
SFX:シン…(静)

2 斬撃の余韻。主の妖が弾かれ、瘴気が霧散。
SFX:ザア…

3 距離が戻る。千歳、顔を真っ赤にして息を呑む。朔真は視線を逸らし、喉の文様が微かに波打つ。
千歳:『い、今の……』
朔真(無言・息だけ)

P12(4コマ)

1 隊士たちが駆け寄る。
隊士C:『筆頭! 鎮まったのか!?』
朔真(頷く)

2 千歳、喉を押さえて小さく咳。
SFX:こほ…
千歳:『大丈夫です……少し、声が…』

3 朔真、さりげなく千歳の肩を支える。
SFX:そ

4 屋根上の紗那、笙を持ち替えながら悪戯な笑み。
紗那:『——面白い鍵、見つけたわ』

P13(4コマ)

1 紗那、地へ降りるでもなく、風に髪を遊ばせて見下ろす。
紗那:『誓いの紋、まだ消えていない。ふふ』

2 千歳、胸に手を当て、鎖骨の輪紋の発光に気づく(薄く光り続ける)。
千歳(心の声):(……消えない?)

3 朔真、喉に手を当てる。封印文様が微かに揺れる。
UI:封印の文様に小さなひび模様

4 紗那、夜に溶けるように退場。
紗那:『また会いましょう、書記姫。——声は甘い蜜、あなたのは格別』

P14(5コマ)

1 隊員が報告。
隊士A:『周囲、異常なし!』

2 桂庵が駆け寄る。
桂庵:『千歳、無事か? ——おお、筆頭も』
千歳:『はい。すみません、少し、喉が』

3 桂庵、千歳の喉札を見て眉をひそめる(鈴紋の痕跡に気づく気配)。
桂庵(心の声):(いまの揺れは——)

4 朔真と桂庵が目だけで会話。“後で”の合図。
朔真(頷き)

5 千歳、ふと朔真を見る。互いに言葉はないが、眼差しが**「大丈夫だ」**と伝える。
千歳(小さく頷く)

P15(3コマ・大きめ)

1(大) 明け方の空。東が淡く白む。街は静けさを取り戻しつつある。
T(モノローグ・千歳):(彼の刃は、私の声で目を覚ます——)

2 千歳の鎖骨輪紋クローズ。微弱に灯り続ける。
T(モノローグ・千歳):(そして……この光は、二人でなければ消えない)

3 朔真の喉元クローズ。封印の紋が、微かな“ひび”とともにかすかに緩む。
T(モノローグ・千歳):(名も、声も、まだ秘密のまま——)

P16(ラスト1コマ)

大コマ 書庫の小机。朝光の中、千歳が筆をとる。ページには**〈月白〉の文字練習と、空白の欄に小さく「共語」**の二字。
T(モノローグ・千歳):(それでも——私たちははじめられる。二人でひとつの刃を)
C:To Be Continued
※欄外に小さく、黒羽紗那の影が紙縁に落ちる演出(不穏の余韻)。