続いて、鈴木健太。

「僕は将来的に親の農業を継ぎたいと思っています。農業とITがどのように融合するのかを知りたかったのですが、正社員になることが前提ということなので、今回は辞退します」

 最後は、高橋真由。

「はい。大丈夫です。私はむしろ、そのつもりなので、よろしくお願いします」

 高橋は、言葉少なにはっきりと自分の気持ちを伝えてくれたので好印象だった。

 俺は三人の意思を確認すると、大地の方を見た。大地は俺の目を見て大きく首を縦に振る。俺は三人に向かって言った。

「それでは、佐藤さんと高橋さんは採用ということで。鈴木さんは、残念ですが、ご縁がなかったということに……よろしいでしょうか? 」

 こうして、二人が採用となった。

 その後、正式に契約を交わすための書類を作成したり、研修をしたりして二人のアルバイトとの付き合いが始まった。

 二人はよく頑張ってくれていると思う。特に、高橋真由は熱心だ。彼女と話していると、俺も頑張らなきゃと思う。ただ、少し心配なこともある。彼女の熱意は凄まじく、それが空回りしているように感じることが度々あった。

 そんな時、佐藤雄介が彼女を気遣って声をかけている姿を幾度か見かけた。冷静な彼の声かけのおかげもあって、彼らの仕事ぶりはそれなりに順調だ。

 だが、俺にはどうしても、彼が彼女に気を遣いすぎていると感じることがあった。仕事が軌道に乗ったとはいえ、会社はまだまだこれからである。そんな時に社内恋愛などでゴタゴタされるのは避けたい。

 だから俺としては、二人にはこのまま仕事だけに注力してもらいたいと思っている。だが、所詮は当人たちの問題だ。干渉しすぎるのは良くないだろう。

 そう思って、しばらく様子を見ることにした。

 ところが、事態は思わぬ方向に進んでしまった。

 ある日、会社に行くと高橋真由が慌てていた。高橋は、俺の姿を見つけると血相を変えて駆け寄ってきた。

 どうやら、大地が「会社を辞める」という書き置きを残していなくなったらしい。俺はすぐに、大地に連絡を取ろうとしたが繋がらない。大地の住まいにも行ってみたが、すでにもぬけの殻だった。大地がどうして急に姿を消したのかはわからない。

 その日、俺は一日中大地を探し回った。しかし、見つからなかった。俺は途方に暮れた。

 その時、大地からメールが届いた。

“突然いなくなってすまない。実は、お前に伝えなければいけないことがあるんだ”

 そんな書き出しのメールだった。