“ このたびは、多くの企業から弊社へご応募頂き、誠にありがとうございました。
 厳正なる選考の結果、誠に残念ではございますが今回は採用を見送らせて頂くこととなりました。
 ご期待に沿えず大変恐縮ではございますが、ご了承くださいますようお願い申し上げます。
 荒井様の今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます。”

 そのメールを見た瞬間、俺の中で何かが崩れる音がした。

 それからのことはあまり覚えていない。気がついたら俺は電車に乗り、東京行きの新幹線に乗っていた。何も考えずに行動していた。

 そして今、こうして駅のホームにいる。さっきから何本も電車が来たり発車したりしているが、俺はベンチに座ってぼーっとしたままだった。

 これからどうしようか……。とりあえず、東京に来てしまったわけだが、どこに行くかも決めていなかった。

 いつもの習慣でスマホを取り出して、求人サイトを開くと、先程の会社以外からもメールが何件か届いていた。その全てが不採用を告げる内容だった。面接に行ったところもあったのだが、結果は全滅。

 やっぱりダメなのか……。

 そう思いながらため息をつく。

 もういっそどこか遠い田舎で農業でもやろうかな……。いや、それはないか……。農業なんてやったこともないし、野菜とかを育てたこともほとんどない。そもそも、農業ってどうやってやるんだ?

 あれこれ考えているうちにだんだん頭が痛くなってきた。体も怠い気がする。とにかく今日は、どこかで宿を取って休もう。

 重い腰を上げ、改札に向かって歩き出す。すると、ポケットの中のスマホが震えた。画面を見ると、そこには知らない番号が表示されていた。

 間違い電話だろうか。それともいたずら電話か?

 そう思って警戒しながら通話ボタンを押して耳にスマホを当てる。しかし、そこから聞こえてきた声を聞いて思わず足を止める。なぜなら、その声の主はよく知っている人物だったからだ。

「よぉ。お前、どうしてこんなところにいるんだよ!? 」

 スマホ越しに聞こえる声に俺は慌てて辺りを見回す。すると、改札口の向こう側に見知った顔があった。

 そこにいたのは、山本大地だった。俺が改札を抜けるなり、駆け寄ってきた大地はそのまま勢いよく肩を組んできた。

「久しぶりだなぁ〜! 元気にしてたか? お前、なんで東京にいるんだよ? 出張か?」

 久しぶりに会ったということもあってか、大地はテンションが高い。

 ていうか近い! めちゃくちゃ距離感がおかしいんだけど!