ケムダーの要塞は、銀警官の国の国境にそびえる黒鉄の城だった。外壁は無数の鉄の棘で覆われ、霧の光を鈍く反射した。内部は暗く、広大なホールに略奪品が山積みされていた――金銀の財宝、武器、異端者の遺品が乱雑に積まれ、埃と血の匂いが漂った。ホールの中央には巨大な黒鉄の門が立ち、表面に貪欲の呪文が刻まれていた。ケムダーは白髪を短く刈り、白瞳が飢えた獣のように輝いた。黒鉄の籠手は異常なまでに肥大し、指先には鋭い爪が突き出し、触れるものを奪う力を秘めていた。籠手の表面には無数の傷と血痕が刻まれ、動くたびに低く唸る音を放った。胸に刻まれた紋章の「底なしの袋」は、鉄の浮彫で、表面に貪欲の呪文が刻まれ、まるで無限の欲を象徴していた。
「あれも欲しい〜これも欲しい〜」
ケムダーは村を奪い、土地も人も自分のものとしたが、心の底では欲望が空虚に終わる恐怖に苛まれていた。
この朝、ケムダーは要塞のホールで新たな略奪を計画していた。黒鉄の門の前に立ち、籠手を握りしめ、爪が床を削る音を響かせた。略奪品の山が霧の光を鈍く反射し、白瞳が貪欲に輝いた。
「わがままな僕に見とれてる〜」
彼の声がホールに反響し、鉄の棘がかすかに震えた。霧が揺れ、純白の影が要塞の入口に現れた。朝日だった。白髪が霧に輝き、白金の瞳が黒鉄の闇を切り裂いた。純白の軍服は血と埃を拒絶し、肩に刻まれた秩序の紋章――無数の直線が交錯する幾何学模様――が冷たく光った。光条銃、秩序の裁銃は、銃身に細かな刻印が施され、銃剣の刃が鋭く輝いた。銃剣の先端に嵌められた水晶が、霧の光を屈折させ、白金の閃光を放った。朝日の足音が鉄の床を踏み、かすかな金属音が響いたが、埃は彼に触れず、霧に溶けた。
ケムダーは朝日を睨み、籠手を振り上げた。
「〜っ！？ 僕の邪魔すんなぁ！！！」
白瞳が朝日を射抜き、爪が空気を切り裂いた。籠手の呪文が輝き、略奪品の山が震えた。だが、朝日の白金瞳が一閃。
「法的無所属」
その声は氷のように冷たく、空間を凍らせた。籠手の爪が縮み、呪文が消え、鉄の浮彫がひび割れた。略奪品が霧に溶け、黒鉄の門が低く唸って崩れた。ケムダーの体が自壊し、底なしの袋の紋章が砕けた。
「墓場まで…欲…す…る…っ！」
彼は叫ぼうとしたが、声は途切れ、灰となって散った。要塞のホールが静寂に包まれ、鉄の棘が霧に沈んだ。
朝日は無言で立ち、光条銃を肩に担いだ。銃剣の水晶が一瞬だけ脈動し、白金の光を放った。霧が要塞を覆い、黒鉄の残響が消えた。朝日の姿が霧に溶け、要塞は暗闇に沈んだ。貪欲の輝きは失われ、ただ冷たい静寂だけが残った。