夏休みが終わった。久しぶりの学校だ。
「こっちゃん、おはよー!」
「きーちゃん、おはよ。焼けたね〜!」
「やっぱり?日焼け止めだけじゃダメだったかぁ〜!」
久しぶりに会うクラスメイトたちは雰囲気が変わったような、変わってないような。琴乃の周りはガヤガヤと騒がしかった。
「ん?」
「…こっちゃん?」
「ん〜ちょっと待ってね。」
琴乃が鞄を置き、席を立つ。麻冬は席で突っ伏していた。いつから、その姿勢だったのか誰も分からない。元々、麻冬は朝に弱い。久しぶりの登校で眠くてしょうがないのだろう。琴乃はそう思いながら、麻冬の横に立った。
「麻冬、おはよ。」
琴乃がそういうと、麻冬が急に立ち上がった。
「なぁんだ、起きてた…っ、ぁ⁈」
琴乃が麻冬に話しかけようとしたら、途中で麻冬が勢いよく、琴乃を抱きしめた。
「…???」
「…ん。」
抱きしめられたまま、大人しくしていると、麻冬が琴乃を離した。麻冬はなんでもなかったように席に座り直す。抱きしめられたときのままの姿勢で、少し放心状態になりながら、琴乃がギギギと歩き、席に戻った。
「こっちゃん、なんだったの?あれ?」
「わ、わかんない…」
「こっちゃんに会いたかった〜!ってことなのかな…?」
誰も答えは分からず、琴乃は自席に座るも心臓がバクバクして、夏休みのどの日よりも頬がじりじり熱かった。
「今日の移動教室はどの席でもいいらしいよ〜。」
「きーちゃん、どこ座るの?」
「どうしよっかな〜。あ、ちょっと忘れ物。取ってくる。」
「りょーかい。」
琴乃は先に次の授業が行われる教室に着く。普通の教室とは違い、長いテーブルに横並びで複数人が並ぶような形の教室だ。
「きーちゃん、1番前は座らないよね。ここらへん座ったらいいか。」
少し後ろの席に座る。持ってきたノートや教科書を並べていると、カタリと左隣で誰かが座った。
「あ、きーちゃん、ここらへんでよかった…?って麻冬!」
「ん?」
「ここ座るの?」
「ん。だめ?」
麻冬が小首をかしげる。
「いや、いいけど…いつも別にわざわざ隣に来ないし…」
「今日は琴乃と一緒にいたい気分。」
「なにそれ…」
まぁ、いいか。と琴乃は準備を続ける。
「こっちゃん〜!あれ?今日は麻冬さんと一緒?」
「きーちゃん…距離近…」
クラスメイトが麻冬を覗き込む。
「……。」
麻冬が気まずそうに顔をそらした。
「きーちゃん、ごめん。麻冬、ギャル怖いから。あんまり近くで顔覗かないで。」
「こっちゃんとは仲良いのに。」
「私はギャルじゃないでしょ。」
ふーん、と少し残念そうにクラスメイトが離れて、琴乃の右隣に座った。麻冬が安心したように息を漏らす。それを琴乃は少しあきれたように見ていた。そうこうしているうちに授業が始まる。
「…⁉︎」
いつも通り、琴乃がノートをとっていると、左手に、スリ…と温かい感触があった。
「麻冬、真面目にノートとりなよ。」
「あたし、左利き。」
「そうじゃなくてさ…。」
「ふふっ。」
2人が小声で話す。麻冬の右手が、琴乃の左手を包んでいる。感触を楽しむように、ふにふにと触られているのが少しくすぐったい。
「もう…」
琴乃はあきらめて、ノートに向き合う。授業中、麻冬は琴乃の手を握り続けていた。
「きーちゃん、先生の手伝いしなきゃいけないんだって。先戻ろ〜。」
「ん。」
琴乃と麻冬は教室を出た。
「ねー、琴乃〜。琴乃さ、麻冬さんとずっと手を繋いでるよね?」
琴乃のグループとも違うクラスメイトが、声をかけてきた。教室を出た後も、麻冬は琴乃の手を離すことなく握っている。琴乃は正直、声をかけてきたクラスメイトが苦手だった。直接的に言われなくても分かっている。『麻冬』というレアキャラとどうお近づきになったのか気になるんだろう。
「あ、もしかして付き合ってんの?そういう感じ?」
話しかけてる相手は琴乃だが、クラスメイトの好奇の目が、麻冬をなぞったのが分かった。麻冬が少し後ろに退がる。琴乃は、麻冬を隠すように、ズイとクラスメイトに近寄った。少し緩んでいた手を琴乃から繋ぎ直す。
「考えすぎじゃない?私、普通に距離感近いよ?」
「…ふーん。」
クラスメイトがつまらなそうな顔をする。そのまま離れていった。
「琴乃…。」
「私、嫌じゃないから。教室戻ろ。」
2人はまるで離れたくないとでも言うように、どちらともなく繋いでいた手の指を絡めあった。
「こっちゃん、おはよー!」
「きーちゃん、おはよ。焼けたね〜!」
「やっぱり?日焼け止めだけじゃダメだったかぁ〜!」
久しぶりに会うクラスメイトたちは雰囲気が変わったような、変わってないような。琴乃の周りはガヤガヤと騒がしかった。
「ん?」
「…こっちゃん?」
「ん〜ちょっと待ってね。」
琴乃が鞄を置き、席を立つ。麻冬は席で突っ伏していた。いつから、その姿勢だったのか誰も分からない。元々、麻冬は朝に弱い。久しぶりの登校で眠くてしょうがないのだろう。琴乃はそう思いながら、麻冬の横に立った。
「麻冬、おはよ。」
琴乃がそういうと、麻冬が急に立ち上がった。
「なぁんだ、起きてた…っ、ぁ⁈」
琴乃が麻冬に話しかけようとしたら、途中で麻冬が勢いよく、琴乃を抱きしめた。
「…???」
「…ん。」
抱きしめられたまま、大人しくしていると、麻冬が琴乃を離した。麻冬はなんでもなかったように席に座り直す。抱きしめられたときのままの姿勢で、少し放心状態になりながら、琴乃がギギギと歩き、席に戻った。
「こっちゃん、なんだったの?あれ?」
「わ、わかんない…」
「こっちゃんに会いたかった〜!ってことなのかな…?」
誰も答えは分からず、琴乃は自席に座るも心臓がバクバクして、夏休みのどの日よりも頬がじりじり熱かった。
「今日の移動教室はどの席でもいいらしいよ〜。」
「きーちゃん、どこ座るの?」
「どうしよっかな〜。あ、ちょっと忘れ物。取ってくる。」
「りょーかい。」
琴乃は先に次の授業が行われる教室に着く。普通の教室とは違い、長いテーブルに横並びで複数人が並ぶような形の教室だ。
「きーちゃん、1番前は座らないよね。ここらへん座ったらいいか。」
少し後ろの席に座る。持ってきたノートや教科書を並べていると、カタリと左隣で誰かが座った。
「あ、きーちゃん、ここらへんでよかった…?って麻冬!」
「ん?」
「ここ座るの?」
「ん。だめ?」
麻冬が小首をかしげる。
「いや、いいけど…いつも別にわざわざ隣に来ないし…」
「今日は琴乃と一緒にいたい気分。」
「なにそれ…」
まぁ、いいか。と琴乃は準備を続ける。
「こっちゃん〜!あれ?今日は麻冬さんと一緒?」
「きーちゃん…距離近…」
クラスメイトが麻冬を覗き込む。
「……。」
麻冬が気まずそうに顔をそらした。
「きーちゃん、ごめん。麻冬、ギャル怖いから。あんまり近くで顔覗かないで。」
「こっちゃんとは仲良いのに。」
「私はギャルじゃないでしょ。」
ふーん、と少し残念そうにクラスメイトが離れて、琴乃の右隣に座った。麻冬が安心したように息を漏らす。それを琴乃は少しあきれたように見ていた。そうこうしているうちに授業が始まる。
「…⁉︎」
いつも通り、琴乃がノートをとっていると、左手に、スリ…と温かい感触があった。
「麻冬、真面目にノートとりなよ。」
「あたし、左利き。」
「そうじゃなくてさ…。」
「ふふっ。」
2人が小声で話す。麻冬の右手が、琴乃の左手を包んでいる。感触を楽しむように、ふにふにと触られているのが少しくすぐったい。
「もう…」
琴乃はあきらめて、ノートに向き合う。授業中、麻冬は琴乃の手を握り続けていた。
「きーちゃん、先生の手伝いしなきゃいけないんだって。先戻ろ〜。」
「ん。」
琴乃と麻冬は教室を出た。
「ねー、琴乃〜。琴乃さ、麻冬さんとずっと手を繋いでるよね?」
琴乃のグループとも違うクラスメイトが、声をかけてきた。教室を出た後も、麻冬は琴乃の手を離すことなく握っている。琴乃は正直、声をかけてきたクラスメイトが苦手だった。直接的に言われなくても分かっている。『麻冬』というレアキャラとどうお近づきになったのか気になるんだろう。
「あ、もしかして付き合ってんの?そういう感じ?」
話しかけてる相手は琴乃だが、クラスメイトの好奇の目が、麻冬をなぞったのが分かった。麻冬が少し後ろに退がる。琴乃は、麻冬を隠すように、ズイとクラスメイトに近寄った。少し緩んでいた手を琴乃から繋ぎ直す。
「考えすぎじゃない?私、普通に距離感近いよ?」
「…ふーん。」
クラスメイトがつまらなそうな顔をする。そのまま離れていった。
「琴乃…。」
「私、嫌じゃないから。教室戻ろ。」
2人はまるで離れたくないとでも言うように、どちらともなく繋いでいた手の指を絡めあった。



