「でもさ、真紅が請けてくれてよかった。それには本当に感謝してるんだ。真紅と黎……静かに暮らしていく道もあったのに」
「―――」
黒ちゃんが、少しだけ遠くを見た。
静かに、黎と、二人で。
「……その道は、ないかな」
「そうなんか?」
ぱっと不思議そうに私を見た顔は、いつもの『黒ちゃん』で。
「うん。少なくとも私は考えない。黎と私が一緒にいるためには、たくさんの人に助けてもらわないと不可能だった。お互いの正体を知って、手に手を取って逃げる……なんて道は、私にも黎にも最初からなかったよ」
そもそも、と続ける。
「最初に助けに来てくれたのは黒ちゃんだよ。その恩を返すまでは、黒ちゃんのことそっち側には行かせないから」
「―――……はあ」
「なんでため息」
「いや……真紅といい白といい、カッコいい奴ばっか。俺かすむわ」
「………」
日常を思い返してみる。
白ちゃん、黒ちゃん限定で暴力ヒロインの素質あるんだよな……。
ただまあ、黒ちゃん以外ではマジで完璧イケメン。
黎のこと好きになる前の私だったら、恋愛感情はなかったとしてもカッコいい人だなあくらいは思っていたかも。
「白ちゃんがイケメン極めてるのは賛同……」
「なーんであんな男前になっちまったかね。昔は可愛いの化身だったのに」
黒ちゃんに対抗するためでは? 白ちゃん、黒ちゃんを格上だと認めているのは傍から見ていてもわかる。
そんな黒ちゃんに追いつきたい一心で頑張っていたらあんな感じになってしまったのでは疑惑。
「全体的に黒ちゃんのせいだと思う」
「ええ!? 可愛い白でいてほしかったのに!?」
白ちゃん関係になると黒ちゃんの思い込みが激しくて会話がかみ合わなくなる。
「とりあえず、黒ちゃんには逆仁さんとのお話一番に報告したかっただけだから」
「あ、ああ、ありがと。……それで真紅、」
「わかってるわかってる。一緒に帰れたらちゃんと声かけるから」
「くれぐれも頼んだ」
「はいはい」
相変わらず白ちゃん大好きだな。この従兄は。



