ISの異世界冒険記録

歩き続けて一週間。
そろそろお腹が空いてきた。
(え?数年間ずっと食べてなかったのかって?そうだよ。)
お腹が空いてなかった理由はひとつ。
あまり燃料を消費していなかったから。
それからもうひとつ。
ついに雨季が来たからだ。
雨だと体がちょっと動きにくいし、太陽が出ていないから発電できない。
だから備蓄燃料を使っていたんだけど、そろそろそれも底を尽きそうなのだ。
うぅ、お腹空いたよぉ。
この子も最近ぐったりしている。
スライムも、雑食とはいえ美味しいものを食べたいものだ。

しばらくすると、あたりにあたたかい光を感じた。
間違いない、炎である。
そして美味しそうな香りもする。
サーモグラフィーを頼りに近寄ると、まさに、美味しそうな肉が焼かれていた。
しかし、周りに生物の反応はなく、しかも肉が焦げかけている。
このままではまずいと直感した私は、すぐに火の勢いを弱め、残った火で発電する。
一応食べ物を食べることもできるんだけど、流石に人様の食べ物はダメでしょう。
そして私は別のものを感知した。
そうそれは、私とは別の、人造人間。
黒髪ロングでほんのりと青いグラデーチョンがかかっている。
彼女はおそらく機械人間に近いものだろう。
人造人間は材質が人間に近いのに対し、機械人間はほとんど鉄などの機械でできている。
丁度ハーフといったところ。
おそらく燃料切れで、肉を食べて回復する予定が、食べる前に倒れてしまったのだろうか。
肉を少し千切って彼女の口に入れる。
飲み込ませると、うっすらと赤い目を開けた。
「俺、、、さっきまで肉焼いてて、それで!?」
私の存在に気づいたのかすぐに後ろに下がった。
警戒心があるのはわかるけれどもちょっと悲しい。
「貴方は、ここの方ですか?」
彼女はしばらく考えてから口を開いてくれた。
「俺、、、いや、私は別世界から来た旅人。この世界なら「転生者(エミュラー)」という類だ。」
「一体いつからここに?」
「数ヶ月前くらいだ。前の世界で自殺して、そこから転生してきた。」
「前の世界、、、。」
この世界ということは、別の「箱庭(スターディン)」からきた可能性が高いだろうか。
考え込む私に、彼女はふと思い出したように私に近いてきた。
「そうだ、名前を聞いてなかった。私は「甘焦 紗華(アマコゲ シャカ)」。勘づいてるかもしれないが、前世は男性だ。」
「私は、、、」
私は彼らのような殺戮兵器になるつもりはない。けれど機械であることは事実。
「、、、インフォメーションシステム。略して「IS(アイエス) 」だよ。」