ISの異世界冒険記録

 初めて「触」として感じたのは生温かい液体。
まるでショーケースのように、ホルマリン漬けのようになっている体。
私はたった今意識と自覚を持った。
けれど、過去の記憶は何故か存在する。
母親も父親もいない。
「人造対特別生物用戦闘機軍」の生き残り。
核シェルターにたった一人残された最後の機体。
この体も、記憶も、意識も、言語も、何故あるのだろうか。
それは、この体が作られたものだから。
そうプログラムされていたから。
人間が、人外を殺すために作った「殺戮兵器」が私。
人外が人外を殺すだなんて、馬鹿げた話だった。
確か…そう、隕石が落ちた。
恐竜の世が消えたと同じく、人間も散った。
それから何百年と経ったのが今。
私は理解ができない。
なぜ人間は、殺すことで快楽を得て、欲を満たすのか。
全く理解できない。
人間は協力し合い、共に生きるべきではないのか。
なら、悲惨になる前に止めなければ。
私が…動かなければ!

右腕、左腕、右足、左足、稼働可能。
手を握りしめ、思い切りガラスを叩き割る。
私の体に繋がれていた管がちぎれ、液体が外に流れ出る。
生命プログラム起動。
アップデート拒否。
私は奴らに縛られやしない。
たった今、私は自分で生命活動を始めるんだ!

まず生まれて初めにすることは声を出すこと。
「ん…あ〜…あ。」
声は女性らしい高い声。
体は可愛らしく華奢で、バストサイズは…つま先が見えない程度の大きさ。
体は絶好調…だけど、流石にこの素っ裸で出歩くのはちょっと羞恥心が黙ってないので、
一応その辺にあった服やらなんやらを着る。
案外悪くない出来なんじゃないかと自画自賛。
それから早速ガラス片に写る自分の姿をまじまじと見つめる。
あまりにも完璧な左右対称の美少女がそこにいた。
白髪で紫色の目、青色の三角の機械のような髪飾りが特徴的。
他の個体は黒髪で赤色の目だった気がするのは気のせいだろうか。
まぁ、もう他個体はいないんだろうけどね。
それにしても機械であるはずなのに、人間みたいに柔らかい。
これが「人造人間(ホムンクルス)」ってやつなんだろうか?
よくわからないと言うのが大きいがそんなことはどうでもいい。

とにかく今は、この世界の戦争を止めなければ。
そのためにもまずはこのオンボロシェルターの近辺整理から始めよう。