「この近くですわ…」
アシュリーが示した場所に近づくと、俺たちは馬車を降り、徒歩に切り替えた。
警察やハナの両親はまだ着いていない。
しかし、待つなんていう選択肢はなかった。
今まさにハナが傷ついていたら…
もう手遅れだったら…
考えただけで絶望の底に突き落とされるような感覚だ。
「あの小屋だな…」
「はい…」
「アシュリー嬢はここで待っていてくれ。
ギルバートは一歩引いたところで隙を見て2人の解放を。」
「大丈夫なのか…?」
ギルバートの問いかけに、俺は言葉をつまらせる。
相手は金の回収を魔術で行うつもりだった。
つまり魔術が使える。
先日セロン先輩から聞いた剣と魔術のかけあわせの話…
俺はその未知の力を体験したことがない。
剣には自信がある。
それでも最悪の事態を考えて動く準備は必要だ。
小屋の扉に迫り、剣を抜く。
「行くぞ」
「ああ」
ギルバートと頷き合い、勢いよく扉を蹴飛ばした。
すぐさま状況把握!
小屋の中には、ハナ、リンーー2人とも怪我はない様子だが、手首を体の前で縛られている。
他に男が3人ーー大柄・帯剣、中柄・帯剣、中柄・剣なし…しかし懐刀の可能性はある。
誰が魔術を使えるのか見極めねば。
「誰だ、テメー!!」
状況把握できていない大柄の男にまず切りかかる。
剣が敵の首筋をとらえかけた瞬間
「殺さないで!!」
耳に飛び込んだ言葉に反射的に刃を翻した。
大柄の男は気を失って地面に倒れた。
「チッ…」
舌打ちを打ってからすぐに中柄で帯剣している男に同様の攻撃を浴びせた。
魔術を使う気配がなかった。
では残る1人が…!
「この野郎!!ふざけやがって!!」
男はギルバートが縄をほどいている2人のもとへ駆け出した。
「っ、お前ら逃げろ!!」
その瞬間、
拘束が解けたハナがギルバートとリンの前に立ち、ヒラリとスカートの裾を回すと、
目で追えないほどのスピードで男の頭を回し蹴りで吹き飛ばした。
「…」
全員が絶句する中、ハナはパッパッとスカートの汚れを払った。
その姿があまりにも鮮烈で美しく、俺は呆然と見ていることしかできなかった。



