「……ごめんね、奈子ちゃん。
まさかこんなことになるなんて……」
医者との話を終えた後、私は余程ひどい顔をしていたのだろう。
陽子さんが、気遣わしげにこちらを見つめる。
「……今日はもう、恭介に会わない方がいいですよね」
いや今日はじゃなくて、これからはずっとそうなるのかもしれない。
「あはは、はは……私、恭介に忘れられちゃったんだもんなぁ……」
何故か笑いが込み上げるのに、瞳からは涙がこぼれて止まらない。
「……私はあなたたちの味方だからね……!」
陽子さんはそう言って私を抱きしめる。
口元は引き攣ったまま戻らなくて、壊れたように泣き続けることしかできなかった。
どうやって家に帰ってきたのかも覚えていない。
力なくベッドに横たわり、私は手の中のスマホを眺める。
解離性健忘愛症候群 完治
片思い病 記憶が戻った
専門治療 最新治療 カウンセリング
悪あがきのように何度も調べた。
けれどどこにも欲しい答えは載っていなかった。
枕元にスマホを投げ捨てると、また涙が溢れ出した。
これは全部悪い夢で、明日になればまた恭介が「奈子ちゃん」って笑ってくれないかな。
―――そんな淡い願望は、すぐに打ち壊されることになる。
翌日から、恭介は学校に復帰した。
私がそれを知ったのは、恭介のクラスを通りかかった時にその姿を見かけたから。
それまでに恭介から連絡がくることもなくて、私に会いに来ることもなかった。
今までだったらあり得ないこと。
それはつまり、恭介の病気が夢なんかじゃないってことを知らしめている。
私は最後の望みをかけて、恭介のクラスを訪れる。
「あ、あの」
私を視界に入れた恭介の顔が、僅かに歪む。
「退院できたんだね……良かった」
そう声をかけて、返ってきたのは聞いたこともないような冷たい声。
「あんたに関係ないよね」
恭介はそれ以上、私に見向きもしなかった。
完全に私を忘れたままの恭介。
そして今の恭介は、私に嫌悪感を抱いているのだとはっきり分かった。
「なに今の、喧嘩?」
「あんな態度とってるの初めて見た」
私たちのやり取りを近くで聞いていた女子たちがひそひそと囁き合う。
居た堪れなくなって、私は逃げるようにその場を後にした。
「奈子〜おはよ。
めっちゃ大遅刻しちゃった。まあ来ただけ偉いよね……って、どうした?
何かあった?」
自分のクラスに帰れば、今しがた登校してきた彩音が駆け寄ってくる。
そして私の表情を見て、何かあったことをすぐに察したらしい。
心配そうに覗き込んでくる。
「……あ、やね……」
上手く声が出ない。
呼吸が乱れて、上手く呼吸ができない。
「ごめん、私と奈子ちょっと体調悪いから保健室で休んでくる。
次の授業の先生に言っておいて貰ってもいいかな?」
彩音が近くの女子に声をかける。
「奈子、行こう」
そして、私の手を取って歩き出した。
まさかこんなことになるなんて……」
医者との話を終えた後、私は余程ひどい顔をしていたのだろう。
陽子さんが、気遣わしげにこちらを見つめる。
「……今日はもう、恭介に会わない方がいいですよね」
いや今日はじゃなくて、これからはずっとそうなるのかもしれない。
「あはは、はは……私、恭介に忘れられちゃったんだもんなぁ……」
何故か笑いが込み上げるのに、瞳からは涙がこぼれて止まらない。
「……私はあなたたちの味方だからね……!」
陽子さんはそう言って私を抱きしめる。
口元は引き攣ったまま戻らなくて、壊れたように泣き続けることしかできなかった。
どうやって家に帰ってきたのかも覚えていない。
力なくベッドに横たわり、私は手の中のスマホを眺める。
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悪あがきのように何度も調べた。
けれどどこにも欲しい答えは載っていなかった。
枕元にスマホを投げ捨てると、また涙が溢れ出した。
これは全部悪い夢で、明日になればまた恭介が「奈子ちゃん」って笑ってくれないかな。
―――そんな淡い願望は、すぐに打ち壊されることになる。
翌日から、恭介は学校に復帰した。
私がそれを知ったのは、恭介のクラスを通りかかった時にその姿を見かけたから。
それまでに恭介から連絡がくることもなくて、私に会いに来ることもなかった。
今までだったらあり得ないこと。
それはつまり、恭介の病気が夢なんかじゃないってことを知らしめている。
私は最後の望みをかけて、恭介のクラスを訪れる。
「あ、あの」
私を視界に入れた恭介の顔が、僅かに歪む。
「退院できたんだね……良かった」
そう声をかけて、返ってきたのは聞いたこともないような冷たい声。
「あんたに関係ないよね」
恭介はそれ以上、私に見向きもしなかった。
完全に私を忘れたままの恭介。
そして今の恭介は、私に嫌悪感を抱いているのだとはっきり分かった。
「なに今の、喧嘩?」
「あんな態度とってるの初めて見た」
私たちのやり取りを近くで聞いていた女子たちがひそひそと囁き合う。
居た堪れなくなって、私は逃げるようにその場を後にした。
「奈子〜おはよ。
めっちゃ大遅刻しちゃった。まあ来ただけ偉いよね……って、どうした?
何かあった?」
自分のクラスに帰れば、今しがた登校してきた彩音が駆け寄ってくる。
そして私の表情を見て、何かあったことをすぐに察したらしい。
心配そうに覗き込んでくる。
「……あ、やね……」
上手く声が出ない。
呼吸が乱れて、上手く呼吸ができない。
「ごめん、私と奈子ちょっと体調悪いから保健室で休んでくる。
次の授業の先生に言っておいて貰ってもいいかな?」
彩音が近くの女子に声をかける。
「奈子、行こう」
そして、私の手を取って歩き出した。
