君が私を忘れたことを、私はよかったと笑いたい

翌日も、世界は変わらない。
恭介とは目が合うことも、言葉を交わすこともない。
そんな風に午前中が過ぎて、やってきた昼休み。

「……白石先輩、いますか?」

変わらないと思っていた世界が、変わる。

―――私の元に、”美優”が現れた。

私のクラスの入り口に立ち、近くのクラスメイトにそう尋ねる美優。
その声を聞いた人の視線が、自然と私に向かう。

どうして、彼女がここに?

視線に促されるように、私は重い腰を上げて彼女の元に向かう。

「……白石は、私だけど……」

美優の前に向かい合えば、その大きな瞳が私をまっすぐに見つめる。

「突然すみません。
お話ししたいことがあるので、少しお時間もらえませんか?」