笑った先、目尻から溶け出しそうなその笑顔を思い出して胸がいっぱいになる。
楽しげな雰囲気に耐えられず俺は居酒屋を飛び出した。駅前のロータリーから冷たい初夏の風が吹きつけてきた。
すぐに帰りたくなくて、駅前をちょっと散歩してみたけれど、楽しくない時と言うのは何をしたって楽しくないものだ。
(カラオケにでも行こうかな)
こうやっている間にも時間はどんどん過ぎて行くのに。過ぎて行けば行く程に(謝りづらくなるのに、)
ぼんやりと、駅前の通りをひとり身を縮めて歩く。酷く寒くて、酷く空しくて、醒めかけた酔いが切なかった。
このまま独りのアパートに帰るなんて悲し過ぎる。
すると。
「バー? こんなところに?」
ふと覗いた横丁に、きらめく薄い赤紫のライトボックスを見つけた。



