ハックション!
誰かの大きなクシャミで現実に戻された。見ると、近くの席の男性社員がティッシュで鼻を拭っていた。その隣にいる女性社員は嫌そうな顔をしていた。
二人の仲の悪さは相変わらずだな、
思わず笑ってしまったが、そんなことに構っている暇はなかった。パソコンの画面に目を戻すと、再び当時のことが蘇ってきて、乾と担当者と三人で乾杯した夜のことが目に浮かんできた。それは最高に楽しい夜だった。そして、忘れられない夜だった。
ありがとう、
乾と担当者の顔を思い浮かべながらメールに向かって頭を下げた。
顔を上げると二人の笑顔が見えた気がので、もう一度礼を言って、『ネット通販への取り組み』を削除した。
あと二つ……、
わたしは次のメールを開けた。それは、乾からのメールだった。タイトルは『支社長の喜怒哀楽日記』。これにはびっくりした。青天の霹靂といっても過言ではないほどだった。その時のことが蘇ってくると、思わず頬が緩んだ。



