世界が
ぐるぐる廻っている。

「んー……」

仲間と一緒に、夜通し酒を呑んだ帰り道。足取りが覚ついていないのは自分でもわかっている。
明らかに飲み過ぎた。頭がぐわんぐわん痛み、一体どっちに進んでいるのか不明だ。
タイミング良く視界に映ったベンチに倒れ込むと冷えきった木の感触が心地良かった。

ここはどこなんだ?
ぼんやり考えている間に、意識を失ってしまった。

── ねぇ。
ん?
── ちょっとイーヴァン。大丈夫?

誰かに体を揺さぶられている。
海の底に沈んだみたいな意識が、少しだけ浮上した。
瞼をうっすら持ち上げると紺地に花柄のワンピースが見える。

……ハルだ。
ハルだ、と
もう一度思った。

「だめって、言っただろ……」

俺なんかと一緒にいるところ
誰かに見られたらどうするんだよ。

── え?なに?

頬に刺激を感じるが、どうしても目が開けられなかった。

「ハル」

待ってくれ。
目が覚める前に、
他人に戻る前に、

「今、だけ……」

頬にある柔らかい手を精一杯の力で掴まえて。
引きずられるように深い眠りに落ちた。