「じゃあ、ハル。先に戻っているわね」
「うん。また後でね」

毎週恒例となっている街中の清掃。
仲の良いシスターの子たちと別れチリトリやゴミ袋を鞄に集めていると、目線の先で革靴が止まった。

「あら?」
「やぁ」

正面に立ったイーヴァンは、真っ直ぐにこちらを見つめている。

「よく会うわね」
私も立ち上がり、彼に笑いかけた。

「……なぁ」

彼は、なぜか右手を差し出して
「握手してくれないか」
そう言った。

「え?」
「何にも言わなくていいから。頼む」

何度か会った時とは違う、自信なげな態度に困惑する。けれど、彼の表情があまりにも真剣で。差し出された手をおずおずと握った。

「どうした、の?」
「……うん」

大きくて冷たい手。
彼はとても悲しそうな顔で笑う。

「どうしたんだろうな。自分でもわからない」

名前を呼ぼうとした、その時。