ぎゅうっと目を瞑り、耳も両手で塞いだまま。
いつまでも体の震えが収まらず、しゃがみ込んだきり動けなかった。足下にはクッキーが散らばっている。

── 怖い。
怖い、怖い、怖い。

誰が撃たれたの?誰に撃たれたの?
皆は無事なの?

「……っ」

さっきの機関銃の音を思い出すと、力が抜けて
逃げなきゃ、と思うのに気力も無くて。
扉一枚隔てた向こうで、何が起きているのかわからない。


『寝ていなさい。すぐに戻ってくるから』


ふいに温かい掌を思い出す。
そう言ったきり父は戻ってこなかった。

「お父、さ……」

ますます強く目を瞑る。
優しい声に浸っていたかった。

もしかして。
もうすぐ、会えるのかしら。
お父さんのところに
行けるの?
 

「ハル!」


塞いだ耳に
誰かの声が届いた。