朝食をしっかり摂ると、月鈴が「白賢妃の侍女からです」と手紙を渡してきた。
雪梅は手紙を受け取り、中身を確認する。
今朝、突然押しかけた無礼を詫びる文章と、もうひとつの用件が書かれていた。
白賢妃の宮、風花宮で本日の未の刻(午後一時~三時)にお茶会をするので、ぜひ参加してほしいという内容だ。
「返事をするわ」
「すぐに用意します」
月鈴が用意してくれた上質な白い紙に、返事を綴る。
いつも、万姫の誘いに応じていた。だから、今日も彼女のお茶会に参加することを決めた。
天翊の忠告を胸に刻み、万姫にどんなことを聞かれても、天翊の呪いと鳳凰のことは伏せ、いつものお茶会を楽しもうと目を閉じてざわつく気持ちを落ち着かせる。
月鈴に手紙を託し、雪梅は少し休む。
朝から密度が高い話を聞き、まだうまく自分の中で処理できていない気がして、雪梅は目を閉じた。
思考を巡らせるほどに、昨夜の天翊の面影がありありと心によみがえる。
自分のことを愛しそうに見つめる天翊。その瞳は甘く切なく、雪梅の心に刻み込まれた。
◆◆◆
未の刻になり、雪梅は月鈴と一緒に風花宮門に立っていた。
「いらっしゃい、待っていたのよ、藍昭儀」
満開の花のように美しく笑う万姫が、ふたりを出迎える。
万姫にうながされて、雪梅と月鈴は互いに顔を見合わせ、宮に足を踏み入れた。
正殿に移動すると、さまざまな香りが雪梅の鼻腔をくすぐる。
「ごきげんよう、白賢妃。お茶会にお招きくださり、ありがとうございます」
雪梅は左手を右手の拳にかぶせて礼をする。
「いいのよ。わたくしたちの仲じゃない。さぁ、座って。お茶を楽しみましょう?」
万姫はパンパンッと両手を叩く。すぐに彼女の侍女がお茶を用意し、雪梅の前に置いた。
雪梅は勧められるまま椅子に座り、出されたお茶に視線を落とす。
「よい香りでしょう? このお茶にはね、父から譲ってもらった香辛料を入れているの。身体を温める効果があるのよ。さ、飲んでみて?」
茶杯を手にして、雪梅はお茶を飲む。口にした瞬間、辛味のある甘い香りが広がった。
万姫の言う通り、身体がポカポカと温かくなるような感覚を覚え、不思議そうにお茶を眺める。
「おいしい?」
「はい、とても。身体も温かくなりました」
「ふふ、よかったわ。女性に冷えは大敵ですもの」
和やかに微笑む姿は、後宮で知り合ってからの万姫そのものだ。
いつもの彼女だ、と安堵して雪梅は万姫と談笑を楽しむ。
月鈴は少しハラハラしたように雪梅と、彼女が飲んでいるお茶に視線を動かしていた。
雪梅は手紙を受け取り、中身を確認する。
今朝、突然押しかけた無礼を詫びる文章と、もうひとつの用件が書かれていた。
白賢妃の宮、風花宮で本日の未の刻(午後一時~三時)にお茶会をするので、ぜひ参加してほしいという内容だ。
「返事をするわ」
「すぐに用意します」
月鈴が用意してくれた上質な白い紙に、返事を綴る。
いつも、万姫の誘いに応じていた。だから、今日も彼女のお茶会に参加することを決めた。
天翊の忠告を胸に刻み、万姫にどんなことを聞かれても、天翊の呪いと鳳凰のことは伏せ、いつものお茶会を楽しもうと目を閉じてざわつく気持ちを落ち着かせる。
月鈴に手紙を託し、雪梅は少し休む。
朝から密度が高い話を聞き、まだうまく自分の中で処理できていない気がして、雪梅は目を閉じた。
思考を巡らせるほどに、昨夜の天翊の面影がありありと心によみがえる。
自分のことを愛しそうに見つめる天翊。その瞳は甘く切なく、雪梅の心に刻み込まれた。
◆◆◆
未の刻になり、雪梅は月鈴と一緒に風花宮門に立っていた。
「いらっしゃい、待っていたのよ、藍昭儀」
満開の花のように美しく笑う万姫が、ふたりを出迎える。
万姫にうながされて、雪梅と月鈴は互いに顔を見合わせ、宮に足を踏み入れた。
正殿に移動すると、さまざまな香りが雪梅の鼻腔をくすぐる。
「ごきげんよう、白賢妃。お茶会にお招きくださり、ありがとうございます」
雪梅は左手を右手の拳にかぶせて礼をする。
「いいのよ。わたくしたちの仲じゃない。さぁ、座って。お茶を楽しみましょう?」
万姫はパンパンッと両手を叩く。すぐに彼女の侍女がお茶を用意し、雪梅の前に置いた。
雪梅は勧められるまま椅子に座り、出されたお茶に視線を落とす。
「よい香りでしょう? このお茶にはね、父から譲ってもらった香辛料を入れているの。身体を温める効果があるのよ。さ、飲んでみて?」
茶杯を手にして、雪梅はお茶を飲む。口にした瞬間、辛味のある甘い香りが広がった。
万姫の言う通り、身体がポカポカと温かくなるような感覚を覚え、不思議そうにお茶を眺める。
「おいしい?」
「はい、とても。身体も温かくなりました」
「ふふ、よかったわ。女性に冷えは大敵ですもの」
和やかに微笑む姿は、後宮で知り合ってからの万姫そのものだ。
いつもの彼女だ、と安堵して雪梅は万姫と談笑を楽しむ。
月鈴は少しハラハラしたように雪梅と、彼女が飲んでいるお茶に視線を動かしていた。



