四年前といえば、雪梅が後宮入りした年だ。その年から、天翊はいったいなにに悩まされているのだろうかと、雪梅も気持ちを引き締め姿勢を正す。
「白家の娘も、四年前に後宮入りしていることを知っているか?」
「白賢妃は、私よりも少し早く後宮入りしたと聞いております」
親友の万姫のことを、なぜここで口にするのだろうかと疑問を持ち、雪梅は戸惑って声が掠れた。
「二年前に、貴妃が行方不明になったという事件は?」
「詳しくは存じ上げませんが……」
「……貴妃や宮女が行方不明になったあと、指揮を執ったのは白家の者だ。だが、そいつはこの事件は曖昧に終わらせてしまった。白賢妃が後宮入りする前は、こんな事件はなかったんだ」
苦々しく表情を歪める天翊。彼の様子から、万姫を疑っていることに勘づき、雪梅は信じられないとばかりに口元を覆う。
「陛下……」
どんな言葉を彼にかければいいのかわからず、雪梅はただそうこぼすことしかできなかった。
「そなたには、信じられないかもしれない。だが、白賢妃と会ってから、我の体調が崩れたのも事実。道士からは『呪われている』と言われる始末だ」
先ほどの話にも出ていた『呪い』という言葉。
雪梅はただ呆然とするしかなく、月鈴は「呪われているっ!?」と声をひっくり返し、慌てて口元を両手で隠した。
「龍の加護のおかげで、耐えられている状況だからな。だが、藍昭儀に触れることで、この呪いが薄れて体調がよくなっている」
「藍昭儀の力は、呪いにも効くのですね……」
独り言のように考えを口にする月鈴。彼女の言葉が耳に届き、雪梅は口元から手を離し、視線を下げる。
「親友と言っていたが、どうか白賢妃には気をつけてほしい」
「……気をつける……」
「ああ。白家の者は、宮廷でも要注意人物だからな」
天翊はすっかり温くなったお茶を飲み干した。
「あ、新しいお茶を用意しますね」
話に聞き入っていたため、そこまで気が回らなかったと月鈴が別のお茶の用意をするため寝室から出ていく。
扉が閉まるのを待ち、天翊はじっと雪梅に視線を注いだ。
「陛下、私の顔になにかついていますか?」
「いや。――龍の加護を受けた我と、鳳凰に選ばれたそなた。我は、そなたが番いだと確信している」
「番い?」
天翊は椅子から立ち上がり、雪梅の背後に移動すると、彼女の両肩に手を置いた。
「そうだ。番いと交わり子をなすこと――……それが、この呪いを解く方法だと龍が教えてくれた」
「子を、なす――……」
かぁ、と雪梅の顔が朱に染まる。
自身の腹部に手を添えて、天翊と自分の子どもを想像し、ますます顔を赤くした。
満更でもない雰囲気に満足したのか、天翊は肩から手を離す。
それと同時に、慌てたような足音が耳に飛び込み、雪梅は扉に視線をやった。
「白家の娘も、四年前に後宮入りしていることを知っているか?」
「白賢妃は、私よりも少し早く後宮入りしたと聞いております」
親友の万姫のことを、なぜここで口にするのだろうかと疑問を持ち、雪梅は戸惑って声が掠れた。
「二年前に、貴妃が行方不明になったという事件は?」
「詳しくは存じ上げませんが……」
「……貴妃や宮女が行方不明になったあと、指揮を執ったのは白家の者だ。だが、そいつはこの事件は曖昧に終わらせてしまった。白賢妃が後宮入りする前は、こんな事件はなかったんだ」
苦々しく表情を歪める天翊。彼の様子から、万姫を疑っていることに勘づき、雪梅は信じられないとばかりに口元を覆う。
「陛下……」
どんな言葉を彼にかければいいのかわからず、雪梅はただそうこぼすことしかできなかった。
「そなたには、信じられないかもしれない。だが、白賢妃と会ってから、我の体調が崩れたのも事実。道士からは『呪われている』と言われる始末だ」
先ほどの話にも出ていた『呪い』という言葉。
雪梅はただ呆然とするしかなく、月鈴は「呪われているっ!?」と声をひっくり返し、慌てて口元を両手で隠した。
「龍の加護のおかげで、耐えられている状況だからな。だが、藍昭儀に触れることで、この呪いが薄れて体調がよくなっている」
「藍昭儀の力は、呪いにも効くのですね……」
独り言のように考えを口にする月鈴。彼女の言葉が耳に届き、雪梅は口元から手を離し、視線を下げる。
「親友と言っていたが、どうか白賢妃には気をつけてほしい」
「……気をつける……」
「ああ。白家の者は、宮廷でも要注意人物だからな」
天翊はすっかり温くなったお茶を飲み干した。
「あ、新しいお茶を用意しますね」
話に聞き入っていたため、そこまで気が回らなかったと月鈴が別のお茶の用意をするため寝室から出ていく。
扉が閉まるのを待ち、天翊はじっと雪梅に視線を注いだ。
「陛下、私の顔になにかついていますか?」
「いや。――龍の加護を受けた我と、鳳凰に選ばれたそなた。我は、そなたが番いだと確信している」
「番い?」
天翊は椅子から立ち上がり、雪梅の背後に移動すると、彼女の両肩に手を置いた。
「そうだ。番いと交わり子をなすこと――……それが、この呪いを解く方法だと龍が教えてくれた」
「子を、なす――……」
かぁ、と雪梅の顔が朱に染まる。
自身の腹部に手を添えて、天翊と自分の子どもを想像し、ますます顔を赤くした。
満更でもない雰囲気に満足したのか、天翊は肩から手を離す。
それと同時に、慌てたような足音が耳に飛び込み、雪梅は扉に視線をやった。



