【回想。サングラス男】
赤黒い空が永遠に広がる、魔界の中心。王城の上層。
床に、無数の魔族が跪く中、1人の男が静かに王の前に立っていた。
それが、今のサングラス男。かつて「黒刃(こくじん)」と呼ばれた魔族だった。
漆黒の長髪、腰には1本の曲がった刃を持ち、紫の瞳をした彼は、王、当時の魔王である主人公の前に静かに膝をついた。
「……お前だけは、信用している」
主人公の声力を持っていた。
黒刃は少しだけ微笑んだ。
「それは光栄にございます、陛下。ですが、何故、私なのですか?」
主人公は一瞬だけ笑った。いつも無表情な彼にしては、珍しいことだった。
「他の奴らは、ただの力にすがってる。けど、お前だけは違う。力の意味を、理解している。」
黒刃は頭を下げながらも、問いを重ねた。
「私のような者でも、王のお気に入りでいられるのですか?」
「お気に入りって言い方は好きじゃない。けど……あえて言うなら、お前は側に置いておきたい奴だ。何があってもな。」
その言葉に、黒刃の胸の奥が、かすかに熱くなった。
戦いと命令だけがすべてだった日々に、主人公だけが「名前」や「信頼」というものを与えてくれた。
「……いつか、私がこの命を使う日が来るのなら。必ず、あなたのために使うと、決めてました。」
主人公は振り返らないまま、一言だけ返す。
「……なら、その時が来るまで、生き延びろ。お前の刀は、まだ終わってない。」
【回想終わり。 現在】
サングラスの男は、小さく息を吐いた。
焚き火のそば、他の2人が眠っている中で、アイだけが起きていた。
「……昔、俺は魔族だった。あいつ。今の彼が魔王だった頃、俺はずっとあいつの近くにいた。」
アイは驚いた顔をする。
「魔族だったの?あなたが?」
「信じられないだろ。でも本当さ。あいつが……魔王として孤独だった頃、唯一よく話してたのが、俺だったんだ。」
アイは目を見開く。
「じゃあ、あなたにとって……」
「……あいつは、俺の王だった。そして、友だった。」
風が木々を揺らし、焚き火の炎がゆっくりと踊る。
「たぶん。あいつもどこかで、思い出してる。全部を。」
赤黒い空が永遠に広がる、魔界の中心。王城の上層。
床に、無数の魔族が跪く中、1人の男が静かに王の前に立っていた。
それが、今のサングラス男。かつて「黒刃(こくじん)」と呼ばれた魔族だった。
漆黒の長髪、腰には1本の曲がった刃を持ち、紫の瞳をした彼は、王、当時の魔王である主人公の前に静かに膝をついた。
「……お前だけは、信用している」
主人公の声力を持っていた。
黒刃は少しだけ微笑んだ。
「それは光栄にございます、陛下。ですが、何故、私なのですか?」
主人公は一瞬だけ笑った。いつも無表情な彼にしては、珍しいことだった。
「他の奴らは、ただの力にすがってる。けど、お前だけは違う。力の意味を、理解している。」
黒刃は頭を下げながらも、問いを重ねた。
「私のような者でも、王のお気に入りでいられるのですか?」
「お気に入りって言い方は好きじゃない。けど……あえて言うなら、お前は側に置いておきたい奴だ。何があってもな。」
その言葉に、黒刃の胸の奥が、かすかに熱くなった。
戦いと命令だけがすべてだった日々に、主人公だけが「名前」や「信頼」というものを与えてくれた。
「……いつか、私がこの命を使う日が来るのなら。必ず、あなたのために使うと、決めてました。」
主人公は振り返らないまま、一言だけ返す。
「……なら、その時が来るまで、生き延びろ。お前の刀は、まだ終わってない。」
【回想終わり。 現在】
サングラスの男は、小さく息を吐いた。
焚き火のそば、他の2人が眠っている中で、アイだけが起きていた。
「……昔、俺は魔族だった。あいつ。今の彼が魔王だった頃、俺はずっとあいつの近くにいた。」
アイは驚いた顔をする。
「魔族だったの?あなたが?」
「信じられないだろ。でも本当さ。あいつが……魔王として孤独だった頃、唯一よく話してたのが、俺だったんだ。」
アイは目を見開く。
「じゃあ、あなたにとって……」
「……あいつは、俺の王だった。そして、友だった。」
風が木々を揺らし、焚き火の炎がゆっくりと踊る。
「たぶん。あいつもどこかで、思い出してる。全部を。」



