遺跡の中心、時が止まったように静まり返った空間で、私は立ち尽くしていた。
さっきまでそこにいた2人。あの男とそして……彼。
主人公は、黒の王冠をかぶった男、ディルハムと共に、まるで空間ごと引き裂かれ、消えた。

「……いない」
誰かがそう呟いた。たぶん、後ろの仲間の誰かだ。私の耳には、ほとんど届いていなかった。
目の前にぽっかりと空いた空間は、まるで、穴のようだった。彼のいた痕跡すら残っていない。
それが異常事態だと、五本指の奴ら自身が一番理解していた。

「……チッ」
真っ赤なマントを翻して、グレンダインが苛立ったように舌打ちする。握りしめた拳が震え、その地面に亀裂が走った。

「勝手に消えやがって……クソが!」
一方、ハシェルの姿は、すでに揺らぎ始めていた。黒い霧がより濃く、視界から彼の輪郭が消えていく。

「……任務の継続は不可能と判断する。俺は去る」
そう呟いたのは、空中にふわりと浮いたレフレインだった。
白い羽根が羽ばたくと、金色の槍が煌めきを描いて彼の身体を持ち上げる。彼の表情は変わらない。ただ、虚空を見据えながら一言。
「奴があちら側に堕ちたなら、次に来るのは……もっと深い夜だ」

その言葉に、四足歩行の獣、ヴォルグが低く唸り声を上げる。
まるで何かに怯えたような、しかし興奮しているような、曖昧な感情の混ざった声。
「……いずれまた狩れる。今は……ここじゃない」

そして、彼は遺跡の壁を駆け上がり、まるで影のように姿を消していった。
残されたのは沈黙。
その場に残ったのは、私と仲間たちだけだった。
重い空気が、私たちの肺に張り付く。誰も言葉を出せない。ただ、あの瞬間に起きた異変が、常識を壊してしまった。

「……彼は、まだ……」

私は呟いた。
けれど、その彼の姿は、すでに人のものではなかった。


彼の顔の半分は、まるで腐敗した死者のように変わり果て、角が黒くねじれて生えていた。
片目は真っ黒に染まり、光はない。
右半身は完全に魔に呑まれ、再生・防御・攻撃のすべてを備えた悪魔の肉体へと変貌していた。
そこは魔界。
人の言葉も、光も、正義もない、異形の世界。
 彼は今、そこにいた。
闇の中で、意識がぼんやりと漂う。
心臓の鼓動は重く、まるで自分のものではないかのように感じられた。
そんな時、不意に過去の断片が脳裏をかすめる。
真っ黒に焦げた荒野。
膝をつく兵たち。
彼らが恐れ、崇めたのは1人の男。

玉座に座す、赤い瞳の魔王。
それは紛れもなく、自分だった。
「……これは……なんだ?」

呟いた声は虚空へと消えていったが、記憶は鮮明に蘇る。
かつての人生。
初めての人生はただの人間として終わった。
2度目は力に溺れ、世界を炎で焼き尽くした魔王として。
そして今、3度目の人生。

「俺はもう一度、生まれ変わったのだ。これはやり直しなどではない。続きだ」

なぜ自分が魔王の資質を持っているのか。
なぜ他の誰よりも早く、強く、魔の力に染まったのか。
それは才能ではない。宿命だったのだ。

「……また、ここに戻ってきたのか」

魔界。
この世界は、懐かしさを覚えるほど馴染んでいた。
重い空気。遠くから聞こえる咆哮。死の匂い。すべてが過去の記憶と重なり合う。
その時、かすかな声が耳に届く。

『我が王よ……再び玉座へ』

遠く、しかし確かに自分に向けられた声。
かつて滅びたはずの、忠誠を誓う者たちの残響。
影たちは今もなお、深淵の底で蠢いていた。

目を開ける。
目の前の姿は変わり果てている。
だが違和感はなかった。
これこそが、自分の真の姿なのだと思えた。

「……アイ。俺は……」

何かを言おうとしたが、声は届かない。
ここは魔界。孤独と罪が渦巻く場所。
そして彼は、再び歩き出す。
玉座に向かって。


夕暮れ。アイは1人で村へと歩いていた。
かつて、主人公が助けられたその場所。
村は穏やかな雰囲気だったが、どこか落ち着かない空気もあった。
村人たちはアイを見ると、不安そうな顔を浮かべた。

「アイさん……あいつは……?」
誰かが静かに声をかける。
アイは深く息を吸い、ゆっくりと口を開いた。

「主人公は、五本指の1人と一緒に消えました。どこへ行ったのかは、わかりません。」

村人たちの表情が一気に暗くなる。
信じたくない事実が、静かに、しかし確実に広まっていく。

「そんな……まさか……」
「どうして……あんな強い奴と……」

アイは小さく首を振った。

「俺たちもまだわかっていません。ただ、今はとにかく気をつけるしかない。敵がこちらに近づいている可能性が高い。」

村人の1人が顔を上げ、強い意志を込めて言った。

「村を守るために、できることは何でもします。アイさん、どうかこれからも頼みます。」

アイは静かに頷いた。
「わかりました。必ず戻ってきます。だから、ここは守ってください。」

夜がゆっくりと訪れ、村は静かに闇に包まれた。
だが、アイの胸の中には嵐が巻き起こっていた。
「主人公……お前は今、どこにいる……」


朝の冷たい風が村を吹き抜ける。
アイは歩きながら、主人公の顔写真をしっかり握りしめていた。

「この男を知りませんか?」

村の入り口に立ち、最初の人に写真を見せる。
村人は写真をじっと見つめ、首をかしげる。

「うーん……見たことないな。でも、最近はよそ者が多いからな。」

アイは眉をひそめ、次の人へ歩み寄った。
「どこかで見かけた者はいませんか? 少しでも情報があれば…⋯」

広い村を、何度も声をかけながら回る。
しかし、返ってくる答えは曖昧で、手がかりは見つからない。

中には「気味の悪い男の話なら聞いた」という者もいた。
それはまるで、主人公の悪魔化した姿のことのようだった。

アイは写真を握りしめながら、強く心の中で誓った。
「必ず見つける。お前を、絶対に見捨てない。」
太陽が高く昇り、村の人々の顔がはっきりと見える。
だが、主人公の姿はまだ、どこにもなかった。


日も少し傾き始めたころ。
人通りの多い広場で、アイは少し疲れた顔をして、写真を手に立ち尽くしていた。
「……やっぱり、ここにもいないのか。」
そのとき。
「おいおい、どうした?そんな顔して。」
低くて太い声が後ろから聞こえる。

振り向くと、3人組の男たちがこちらを見ていた。

1人は、上半身裸で、体中が筋肉のかたまりみたいな大男。
その横には、どこか抜けた雰囲気のある、軽そうな若者。腰には長い刀をぶら下げている。
そして最後の1人は、サングラスをかけて、帽子を深くかぶった、落ち着いた雰囲気の長髪の男。背中に剣を背負っていた。

アイは少し身構えながらも、写真を見せる。
「この人を探してる。知ってる人、見かけなかった?」

サングラスの男が一歩前に出て、写真を手に取った。
しばらく、じっと見つめたあと、ふっと眉を動かす。

「……この人、見たことがある。昔、どこかで……話したことがあるような……。」

「ほんとか!?」
アイが食いつくように問いかける。
だが男は、少し首をかしげて、視線を空に向けた。

「でも、いつだったかは覚えていない。不思議なんだ。はじめて見る気がしない。……まるで、ずっと前から知っていたような…⋯」

アイはその言葉に、胸がチクリと痛んだ。
(やっぱり……あの人は、ただの人間じゃない)

男の目はどこか遠くを見ている。
それはまるで、前世の記憶を無意識にたぐっているようだった。
そして次の瞬間、男は写真を返しながら、しっかりと頷いた。

「よし。一緒に探そう。理由は分からないが、放っておけない。」
それを聞いた筋肉マッチョが、拳をグッと握りしめる。
「そうと決まれば、俺もだ! 探すってんなら力になるぞ!」
続けて、刀の若者も笑いながら言った。

「おもしれーじゃん! 俺らでその人見つけてやろーぜ! アイちゃんっていうんだっけ? よろしくな!」
アイは少し驚いた顔で、そして微笑んだ。
「ありがとう。助かる。……一緒に、あいつを見つけよう。」
こうして、3人の仲間が加わり、アイの旅は新たな一歩を踏み出した。


朝になる。
アイたち4人は村の広場に立ち、周囲の住民に話を聞いていた。

「それで…⋯どこで、彼はいなくなったんですか?」
そう聞いたのは、サングラスの男。どこか探るような目で、アイを見つめていた。

「遺跡だ。崩れたその先で…闇の中に飲まれて、私の目の前から消えた」
アイは短く答える。
まるで夢の中だったような、現実感のない。

マッチョが拳を構え、周囲を見回す。
「…俺らで見つけてやろうぜ。早くしねぇと、遠くに行っちまうかもしれねぇ」

そこに突然、バカっぽい刀使いが走り出した。
「あ!おいおい見ろって!あいつ、あいつその写真そっくりだって!」

指差した先に立っていたのは確かに、主人公に似た姿。
銀髪に、黒い衣。背格好も、体つきもそっくり。

しかし、顔が違った。
顔が歪み、目に光がなかった。何もかもがおかしい。

「……違う」
アイが低く言った。
だが、すぐにまた別の方向から声が上がる。

「こっちにもいる!」
「おいおい、なんでこんなに!? 何人いんだよ、こいつ!」

数人の似た者たちが、村の中を歩いていた。
目が合った瞬間、冷えるような感覚。
本物ではない。けれど、見た目はほとんど同じ。

「これは?世界が、狂い始めてる…⋯のか?」
サングラスの男がつぶやく。
その瞬間だった。
すぐ近くの山の方から。
「アォオオオオォォオ……ン……!」
長く、低く、そしてどこまでも響くような遠吠えが聞こえた。
周囲の空気が歪んだ。
地面がピシッと割れる。
まるでこの世界そのものが、主人公の半魔王化に反応してバランスを崩し始めていた。

「おい…あれは、なんだ…?」

遠くの森の中で、何かがうごめいている。
黒い霧のような気配。鋭い風。
けれどそれはまだ、姿を見せない。
ただ、確かに近づいてきていた。
狂気の獣が、我々の匂いを嗅ぎつけて。


夕暮れの光が、村の家々の屋根を赤く染めた。
風が止まり、空気が一気に重くなる。

「山に行くぞ。あの遠吠えの主が、何かをしようとしてる」
マッチョ男が低く言った。
刀使いも、サングラスの男も黙ってうなずく。
アイも静かに頷き、主人公を追う足を村の外へと向けたその時だった。
「⋯⋯ッ?!避けろ!!」
突如、サングラスの男が絶叫した。
叫ぶと同時に、彼はアイの前に飛び出し、腕を大きく広げる。
その直後。
バシュッ!!
目にも止まらぬ金と黒の斬撃が、光のように走った。
サングラス男の庇った片腕が、根元から吹き飛ぶ。

「うああああああっ!!」

血が舞い、男の身体は後方へと吹き飛んだ。
地面に叩きつけられた衝撃で、サングラスが外れ、彼の素顔が露わになる。
額には汗、口元には苦痛。
それでも彼は、アイを見ながら笑っていた。

「…助かったか、良かった……」
だが、その声はかき消される。
唸り声。低く、喉の奥から響くような唸り声が、村の入り口から聞こえた。

「アォオオ……」
現れたのは、五本指の1人として名を連ねた、獣の魔族。
その姿は、まさに猛獣だった。
全身を覆う黒い毛並み。鋭く曲がった金色の爪。
そして何より、手首から肩にかけて走る、金の棘が光を反射していた。
四足でゆっくりと歩きながら、唸り声を漏らす。
その目は真っ赤に染まり、感情というより、本能だけで動いているかのようだった。

「昨日の遺跡での攻撃…あれは、遊びだったってことか…」
アイが小さくつぶやく。
すると、まるでそれを肯定するかのように、獣が大きく口を開いた。

「グルルルル……!」
遠吠え。
まるで呪詛のようなその咆哮が、空気を裂いた瞬間。
地面から無数の影が湧き上がる。
それらは、腕や足が歪に伸びた魔物の欠片のような存在。
雑魚どもだ。

「来るぞッ!!」
マッチョ男が叫び、己の拳を構える。
その肉体は銃弾をも弾くと豪語するだけあって、空気が筋肉で震える。

刀使いの青年も抜刀。
どこかおどけた表情だが、その目には明確な殺気が宿っていた。
「やれやれ。こっちも遊びじゃ済まねーよ!」

その瞬間、戦闘が始まった。
アイはすぐさま抜刀し、2本の剣で影の群れを切り裂いていく。
しかし、次の瞬間。
キィィィィィィィィィィン!!!

突如響く、耳を裂くような音。
まるで金属同士を何十枚も一気に削り合わせたような、超音波だった。

「っ……く、耳が……!!」
その音に耐えきれず、アイは膝をついた。
だが、獣は止まらない。地を蹴り、アイへ一気に突撃する。
爪が振り下ろされる。
それをギリギリで、2本の剣で交差して受け止めるアイ。
しかし。
「……?!」
ガギャッ!!!
剣が、折れた。
しかも両方だ。
あまりに鋭い力。
ただの爪に見えていたその一撃は、重さだけでなく速さ、殺意。全てが段違いだった。
吹き飛ばされ、地面を転がるアイ。
傷は深くないが、両手には刃が残っていない。

「ちぃ……くそ……」
アイが立ち上がろうとしたその時、ふらつくサングラス男が立ち上がる。
左腕は血で染まり、右手一本で剣を構えている。

再び距離を詰め、咆哮とともに跳び上がる。
そのまま、サングラス男の頭上へ鋭い爪を振り下ろす!

「やらせない!!」
アイが叫び、寸前で飛び込み、刃のない剣の柄で弾き飛ばす。
完全に受け止めることはできなかった。
だが、間に入った一撃がサングラス男の命を繋いだ。

「……ありがとな」
彼がそうつぶやいた瞬間、再びアイは立ち上がる。
両手に残った折れた剣の柄を握りしめながら。
「折れてようが、まだ戦えるわよ……!」

次の瞬間、唸るような風とともに、
金の爪が閃く。
シュッ!
アイの額から腹にかけて、服が裂け、
細く浅い切り傷が走る。

(速い……!さっきより、ずっと……!)
動きが変わった。
まるで本気を出したかのように、獣の速度が急激に増していた。

アイが倒れそうになる、その刹那。
「アイッ!!」
サングラスの男が、刀を逆手に持って走り寄り、
その刀を、アイの手に強く握らせた。

「これを使え!」
「えっ……?」
「さっき、俺を庇ってくれた借り、返すぞ!……後は頼む!」
アイが刀を握った瞬間、体が軽くなった。
力が、流れ込んでくる。
まるでこの刀そのものに強さが宿っているかのように。

「いくわよ……!」
アイが駆ける。
その動きに、もう迷いはなかった。
斬撃が風と共に走る。
それでも、獣は、それをすぐに読み、避け、爪で反撃してくる。

一進一退。
しかし、どれだけ傷をつけても、奴は回復する。
その巨体に負った傷は、黒い霧に包まれ、まるで時間を巻き戻すように元に戻る。
「こんな……っ!」

そして、とうとう、アイの動きにわずかな乱れが生まれた。
その瞬間。
金の爪が、再び、彼女を貫こうと迫る。
(避けきれない……!)
身体が間に合わない。
終わりかと思った、その瞬間。

風が止んだ。
空気が一変する。
まるで時間ごと凍りついたかのような、異様な静けさ。
獣は、攻撃の手を止めていた。
それだけではない。
その瞳が、一瞬だけ、何かに怯えたように揺れる。
そして、低く、かすれた声で呟いた。
「……あの方がお呼びだ」
その瞬間、獣の身体が、ふっと地を蹴った。
ドン。
その一歩で、地面が抉れ、村の地が揺れた。

誰よりも早く、誰よりも高く。
その巨体が、まるで弾丸のように空を裂き、山の向こうへと飛び去っていく。
誰も動けなかった。
ただ、ただその場に立ち尽くしていた。
アイは腕を抑え、ぼんやりと呟いた。
「……なに、今の……」

サングラスの男は、地面に座り込んだまま、深く息を吐く。
「あの方って……誰だ……?」

誰も答えられなかった。
だが、あの獣の魔族を従える何かが、確かに存在する。
それだけは、確信に変わっていた。
そしてそこに残されたのは、傷ついた4人だけだった。


戦いの翌日。
村の長老たちの手当てと治療のおかげで、4人はようやく動けるまでに回復していた。
破れた服、傷だらけの身体。
それでも、誰もが次の一歩を意識していた。

「行くか……魔界へ」
サングラスの男のその一言で、誰もが静かにうなずく。
次なる目的地は、主人公が消えた先。魔界。
けれど、どこに行けばそこに繋がるのか。
手がかりは、まだなかった。
その夜。
月が村の石畳を静かに照らす中、木製の門をノックする音が響く。

「こんな時間に……誰?」
アイがそっと外に出ると、そこには旅人風の男が立っていた。
深いフードで顔のほとんどを隠している。けれど、その目だけは鋭く光っていた。

「写真を見せてくれ」
そう言われ、アイが主人公の顔写真を差し出すと、男は小さくうなずいた。

「間違いない……あの時、見たやつだ」

「え……見たって、どこで!?」

男は少し考え込むようにしてから、ゆっくりと口を開いた。
「……南東の海の先にある、霧に包まれた島。地図にも載ってない“謎の島”だ」
アイの目が見開かれる。

「本当にそこに……?」

「通りかかっただけだ。船でな。だが、島の近くで、ヤツのような姿を見た。半分が人間、半分が……魔族のような」

「……っ!」
アイの背筋が凍る。
それはまさしく、主人公が最後に見せた姿と重なっていた。
そこに、サングラス男と他の2人が建物から出てくる。

「おい、何かあったのか?」
男は何も言わず、3人にも同じように情報を伝える。
それを聞いた3人はすぐに歩き出した。

「決まりだな。そこへ向かうぞ」
「よし、準備は出来てる」
「そろそろ本気で行くか」
歩き出す3人の背中を見て、アイも数歩遅れて追いかけようとしたその時だった。

男が、アイの腕を軽く掴んだ。
「お前だけに……言っておく」
その声はどこか切実だった。
「その島……普通の人間が行っていい場所じゃない。中身は地獄そのものだ」

アイが黙って見つめる。
男の声が、少しだけ震えていた。
「油断した瞬間、死ぬぞ。……マジで気をつけろ。生きて帰りたいなら、仲間を……自分を、見失うな」

そう言い残すと、男は振り返らずに歩き去った。
月明かりの下、風がそっと吹き抜ける。
アイは胸に手を当てながら、小さく息を吸い込んだ。
「……大丈夫。私は、あの人を……助けに行くんだから」
そして、仲間の背中を追って、夜の道を歩き出した。