余命半年なのにこいつと恋していいのかよ

家で。
「ただいま」
我ながらむすっとした声だと思う。けれど俺の気持ちはぐちゃぐちゃだ。
「あら、玲央、おかえりなさい」
無駄に声を高くしてぶりっ子っぽく見えるのは母さん。
前の説明で俺は母さん派みたいに思われたかもしれないが俺は親父も母さんも大して好きじゃない。あの件じゃ母さんが可哀想だと思っただけ。
奥には黒い仏壇が置いてある。俺の兄。小菅千聖(こすがちひろ)って名前。もし生きてたら俺よりも10歳年上。別にいなくていい。ちなみに俺が患ってるのと同じ病気で亡くなった。親父と母さんの間の子はこの病気になる確率が約95%らしい。それで苦しむぐらいなら産まなきゃいいと俺的には思う。ま、そう言うことで進んだら俺も生まれてなかったが。
「千聖にお祈りしといてね」
母さんは俺が帰るといつもそう言う。
亡くなったといえど自分の兄にこんなこと思っちゃいけないのかもしれない。けれど俺ははっきり言って千聖に対した思いがない。手を合わせなきゃいけなくてうざいぐらいにしか思えない。そもそも千聖は俺が生まれる前に亡くなってる。だから母さんと親父は俺に千聖の面影を求めて産んだ。それだけだ。逆に言うと「千聖くんの生まれ変わりね。千聖く〜ん」と近所のおばさんには言われまくったし俺的には「生まれ変わりじゃねえからな。うざ」って言ってやりたいぐらい憎いそんな存在だ。
「千聖が死んでくれて良かったな」
ついそう呟いた。生まれたかったってことじゃあない。ただ千聖が生きてたらうざそう、それだけ。