「あはっ、あはははっ!」
四季神巫由は、笑いが止まらない。
手の中の藁人形が、みるみるうちに黒ずみはじめたからだ。
ここは、四季神邸の自室。
リラックスできる服に着替えた巫由は、うっとりとした表情で藁人形を見つめている。
この藁人形には伍の髪の毛が編み込まれており、藁人形の状態が伍とリンクしている。
伍はきっと、あの『ウィジャ盤』による強化版コックリさんの呪いによって、ひどい体調不良に陥っていることだろう。
「ざまぁ見ろ! アンタに幸せは似合わない。アンタの代わりに、私があのイケメン彼氏をもらってあげるわ」
――ピンポーン
その時、家のインターホンが鳴らされた。
心なしか、寒い。
「うるさいわね、今いいところなのに。誰かさっさと出なさいよ」
――ピンポーン
この時間帯なら、必ず複数人の女中たちがいるはずだ。
なのに、誰も出ようとしない。
奇妙なことだ。
だが、短絡的な性格をしている巫由は、その奇妙さを『奇妙だ』と感じ取ることができなかった。
――ピンポーン
「あぁ、もう!」
ガマンしかねた巫由は、どたばたと廊下を走り、玄関に至る。
――ピンポーン
「分かってるわよ、もうっ。うざいわね」
引き戸を開くと、立っていたのは伍だった。
真っ青な顔をしている。
「何よアンタ、チャイムなんて鳴らさずに入ってこればいいじゃないの。バカなの? 相変わらず愚図ね」
「……………………おてつだい、ひつよう、ですか?」
伍の姿をしたソレが、口を開いた。
巫由はゾワリとした。
明らかに、伍の声ではなかったからだ。
寒い。
いつしか、巫由の息が白くなっている。
「あ、アンタ誰?」
「おてつだい、ひつよう、ですか? いもうと、ふこう、に、したい、ですね? できます。おてつだい、ひつよう、ですか?」
ソレには、白目がなかった。
どこまでも黒々とした不気味な瞳が、巫由を至近距離で見つめてくる。
そう、ソレはいつの間にか、家の中に入り込んでいた。
『玄関』という名の強大な結界を、
四季神家が誇る退魔結界を、
踏み越えていたのだ!
だが、それも当然のことだった。
他ならぬ巫由が、玄関という名の封印を開いてしまったからである。
「おてててててててつてつつつだいいいイイイイイ、ひひひひつひつつつようですすすかかかかかカカカカ?」
「ヒッ――」
巫由は逃げようとした。
が、できなかった。
ソレの両手で、頭をつかまれてしまったからだ。
万力みたいな力で、ソレが巫由の頭をつかんでいる。
「い、嫌……嫌ぁ……」
巫由は退魔の巫術も何もかも忘れ果てて、幼児のように泣いた。
ソレの顔が、目が、鼻が、耳が、頬が、顎がドロドロと溶け出して、巫由の口の中に入ってこようとしたからである。
巫由は口を閉じ、必死に『いやいや』をした。
が、無駄だった。
ソレは鼻と耳から巫由の中に入り込んできた。
激痛とともに、巫由は意識を失った。
四季神巫由は、笑いが止まらない。
手の中の藁人形が、みるみるうちに黒ずみはじめたからだ。
ここは、四季神邸の自室。
リラックスできる服に着替えた巫由は、うっとりとした表情で藁人形を見つめている。
この藁人形には伍の髪の毛が編み込まれており、藁人形の状態が伍とリンクしている。
伍はきっと、あの『ウィジャ盤』による強化版コックリさんの呪いによって、ひどい体調不良に陥っていることだろう。
「ざまぁ見ろ! アンタに幸せは似合わない。アンタの代わりに、私があのイケメン彼氏をもらってあげるわ」
――ピンポーン
その時、家のインターホンが鳴らされた。
心なしか、寒い。
「うるさいわね、今いいところなのに。誰かさっさと出なさいよ」
――ピンポーン
この時間帯なら、必ず複数人の女中たちがいるはずだ。
なのに、誰も出ようとしない。
奇妙なことだ。
だが、短絡的な性格をしている巫由は、その奇妙さを『奇妙だ』と感じ取ることができなかった。
――ピンポーン
「あぁ、もう!」
ガマンしかねた巫由は、どたばたと廊下を走り、玄関に至る。
――ピンポーン
「分かってるわよ、もうっ。うざいわね」
引き戸を開くと、立っていたのは伍だった。
真っ青な顔をしている。
「何よアンタ、チャイムなんて鳴らさずに入ってこればいいじゃないの。バカなの? 相変わらず愚図ね」
「……………………おてつだい、ひつよう、ですか?」
伍の姿をしたソレが、口を開いた。
巫由はゾワリとした。
明らかに、伍の声ではなかったからだ。
寒い。
いつしか、巫由の息が白くなっている。
「あ、アンタ誰?」
「おてつだい、ひつよう、ですか? いもうと、ふこう、に、したい、ですね? できます。おてつだい、ひつよう、ですか?」
ソレには、白目がなかった。
どこまでも黒々とした不気味な瞳が、巫由を至近距離で見つめてくる。
そう、ソレはいつの間にか、家の中に入り込んでいた。
『玄関』という名の強大な結界を、
四季神家が誇る退魔結界を、
踏み越えていたのだ!
だが、それも当然のことだった。
他ならぬ巫由が、玄関という名の封印を開いてしまったからである。
「おてててててててつてつつつだいいいイイイイイ、ひひひひつひつつつようですすすかかかかかカカカカ?」
「ヒッ――」
巫由は逃げようとした。
が、できなかった。
ソレの両手で、頭をつかまれてしまったからだ。
万力みたいな力で、ソレが巫由の頭をつかんでいる。
「い、嫌……嫌ぁ……」
巫由は退魔の巫術も何もかも忘れ果てて、幼児のように泣いた。
ソレの顔が、目が、鼻が、耳が、頬が、顎がドロドロと溶け出して、巫由の口の中に入ってこようとしたからである。
巫由は口を閉じ、必死に『いやいや』をした。
が、無駄だった。
ソレは鼻と耳から巫由の中に入り込んできた。
激痛とともに、巫由は意識を失った。



