心愛と天体観測をした翌々日のこと。ハレー彗星が観測できるようになって半月が過ぎた頃。昴はいつも通りに学校に登校していた。
自転車で通う距離でなければ、交通機関を使う程の距離でもないため、昴はいつも徒歩で通学していた。それに昴の家がある場所はバスなどの交通機関がない場所でもあったため、徒歩以外の選択肢がないとも言えた。
学校に近づくにつれてたくさんの生徒が思い思いに話し、笑い合いながら登校しているのが見えた。昴もその中の一人に加わりながら、静かに一人で歩く。
今日は心愛とどこに行こうか、と少しだけ胸を躍らせていると、後ろから誰かが突撃してきた。誰か、と言っても昴にこうやって体ごとぶつかってくる人物には瑞稀か心愛くらいしか思い当たらなかった。
振り返ると、案の定、朝から満面の笑みの瑞稀が昴の肩を素早く掴んできた。
「はよ! 昨日、お前休んでたけど、やっぱりいつものか?」
「そうだよ。それ以外に何があるっていうんだよ」
「あはは、そうだよな。やっぱり昴の一番は宇宙にあるんだな」
そんなことない、と言い返そうとしたが、実際天体観測が原因で学校を休んでいるのは事実なため、これ以上何か言われないように黙るしかなかった。
「俺も、今日は朝練休みなんだよ。自主練は大歓迎って言ってたけど、俺だってたまには朝ゆっくりしたくてさー」
瑞稀はケラケラと楽しそうに笑いながら昴の横を歩く。瑞稀は要領がよく、自分自身のメンタルの整え方も心得ているタイプの男だった。そのためか、休むときは休んで、やるときは全力で行うことができた。昴はどちらかというと、やりたくないことはやらないし、休めるときはいつだって休みたいタイプだったから、瑞稀の何にでも努力をする姿勢を尊敬していたりもする。
「なぁなぁ、昴はハレー彗星ってもう見たか?」
「観測できるようになってから、毎日見てるよ。記録も付けてるし」
「へぇ、そうなんだな。俺はさ、昨日初めて見たんだよな。いやぁ、あんなに綺麗なんだな! 綺麗すぎて開いた口が塞がらなかったぜ」
わざと大袈裟に驚いた表情を作ると、次の瞬間には笑顔で昴の肩を叩いてきた。
「流れ星とは違ってその場にとどまり続けているのが、なんか壮大ですごいよな」
身振り手振りでハレー彗星を見た時の感動を伝えようとしてくれる。その仕草が小さい子供が大人にいいことを伝えようと必死になっている重なって昴は思わず笑ってしまった。
「お前が声出して笑うなんて珍しいじゃん。何かあったん?」
キョトンとした顔で瑞稀が指摘してきたのをきいて昴はハッとする。心愛と一緒にいると自然に笑うことが増えたからか、気がついたら笑っていた。
瑞稀とは仲が良く、付き合いも長いが、素で笑ったところを見せたのは数回しかないだろう。だから瑞稀は昴が何も気にせず笑ったのを見て驚いていた。
「あー、なんだろう……九ノ瀬の影響かな。あいつもよく笑ってるし、俺もつられて笑うことが増えたんだよな」
誰かの行動が自分を変えるなんてことは物語の中の話だと思っていた。人間そんなにうまくいくわけないし、自分自身を変えるなんてことは相当な労力とか努力が必要だと昴はずっと考えていた。だけど、実際はこの半月を心愛と過ごすことで、彼女の明るさが昴にも伝播したようだった。その変化は悪いものではなく、むしろいい方向へ向かっていると言えた。
昴は少しだけ照れくさくなり、頬をうっすら赤く染めると瑞稀の反応を伺った。しかし、その温かい気持ちも一瞬で冷めることになる。
瑞稀の何気ない反応が、昴の足を止めた。
「九ノ瀬って、昴の友達か?」
自転車で通う距離でなければ、交通機関を使う程の距離でもないため、昴はいつも徒歩で通学していた。それに昴の家がある場所はバスなどの交通機関がない場所でもあったため、徒歩以外の選択肢がないとも言えた。
学校に近づくにつれてたくさんの生徒が思い思いに話し、笑い合いながら登校しているのが見えた。昴もその中の一人に加わりながら、静かに一人で歩く。
今日は心愛とどこに行こうか、と少しだけ胸を躍らせていると、後ろから誰かが突撃してきた。誰か、と言っても昴にこうやって体ごとぶつかってくる人物には瑞稀か心愛くらいしか思い当たらなかった。
振り返ると、案の定、朝から満面の笑みの瑞稀が昴の肩を素早く掴んできた。
「はよ! 昨日、お前休んでたけど、やっぱりいつものか?」
「そうだよ。それ以外に何があるっていうんだよ」
「あはは、そうだよな。やっぱり昴の一番は宇宙にあるんだな」
そんなことない、と言い返そうとしたが、実際天体観測が原因で学校を休んでいるのは事実なため、これ以上何か言われないように黙るしかなかった。
「俺も、今日は朝練休みなんだよ。自主練は大歓迎って言ってたけど、俺だってたまには朝ゆっくりしたくてさー」
瑞稀はケラケラと楽しそうに笑いながら昴の横を歩く。瑞稀は要領がよく、自分自身のメンタルの整え方も心得ているタイプの男だった。そのためか、休むときは休んで、やるときは全力で行うことができた。昴はどちらかというと、やりたくないことはやらないし、休めるときはいつだって休みたいタイプだったから、瑞稀の何にでも努力をする姿勢を尊敬していたりもする。
「なぁなぁ、昴はハレー彗星ってもう見たか?」
「観測できるようになってから、毎日見てるよ。記録も付けてるし」
「へぇ、そうなんだな。俺はさ、昨日初めて見たんだよな。いやぁ、あんなに綺麗なんだな! 綺麗すぎて開いた口が塞がらなかったぜ」
わざと大袈裟に驚いた表情を作ると、次の瞬間には笑顔で昴の肩を叩いてきた。
「流れ星とは違ってその場にとどまり続けているのが、なんか壮大ですごいよな」
身振り手振りでハレー彗星を見た時の感動を伝えようとしてくれる。その仕草が小さい子供が大人にいいことを伝えようと必死になっている重なって昴は思わず笑ってしまった。
「お前が声出して笑うなんて珍しいじゃん。何かあったん?」
キョトンとした顔で瑞稀が指摘してきたのをきいて昴はハッとする。心愛と一緒にいると自然に笑うことが増えたからか、気がついたら笑っていた。
瑞稀とは仲が良く、付き合いも長いが、素で笑ったところを見せたのは数回しかないだろう。だから瑞稀は昴が何も気にせず笑ったのを見て驚いていた。
「あー、なんだろう……九ノ瀬の影響かな。あいつもよく笑ってるし、俺もつられて笑うことが増えたんだよな」
誰かの行動が自分を変えるなんてことは物語の中の話だと思っていた。人間そんなにうまくいくわけないし、自分自身を変えるなんてことは相当な労力とか努力が必要だと昴はずっと考えていた。だけど、実際はこの半月を心愛と過ごすことで、彼女の明るさが昴にも伝播したようだった。その変化は悪いものではなく、むしろいい方向へ向かっていると言えた。
昴は少しだけ照れくさくなり、頬をうっすら赤く染めると瑞稀の反応を伺った。しかし、その温かい気持ちも一瞬で冷めることになる。
瑞稀の何気ない反応が、昴の足を止めた。
「九ノ瀬って、昴の友達か?」



