その日も、夕暮れの紅蓮神社にはしんと冷えた空気が漂っていた。

祈りを終えた家継と家頼が石段を下りてくるのに出くわし、私は思わず足を止めた。

「真白!」

先に声をかけてきたのは家頼だった。

相変わらずの気さくな笑顔で、こちらの緊張を和らげる。

「真白の巫女姿、いいね。やっぱり似合ってる。」

「……ありがと。」

思わず頬が熱くなる。

ふと横に視線をやると、家継が無言でこちらを見ていた。

冷たい眼差しのまま、口元だけがわずかに笑みを形づくる。

それが兄弟の対照性をいやでも際立たせた。

そのとき、不意に家継が口を開いた。

「……ああ、そうだ。真白。話がある。」

胸が高鳴るのを抑えられない。彼が私に、用があるなんて。

「今日、飲みに行こうか。」