……と言っても、面と向かって「好き」と言えたわけではない。

ただ、バレンタインの日に手作りのチョコを差し出しただけだった。

「よかったら……」

震える手で渡した小箱の中には、拙いながらも「好きです」と書いたカードを忍ばせておいた。

気づいてくれるだろうと、少しだけ期待していた。

けれど家継は、その箱を受け取っただけで、表情ひとつ変えなかった。

いつも通りの冷徹な眼差しで、何事もなかったかのように私を通り過ぎていった。

心臓が締め付けられるように痛かった。

ホワイトデーの日、彼からクッキーをもらった。

形式的な礼のように手渡されたそれは、あまりに素っ気なくて。

結局、あのカードに込めた想いが届いたのかどうか、私は最後まで聞くことができなかった。

――やっぱり、家継にとって私はただの「巫女」でしかないのだろうか。