だが榊家にとっては、その日常の一つひとつが封印を守るための神聖な営みだった。

二十歳を迎えた家継と家頼は、すでに大人として社を守る役を担っていた。

朝夕に紅蓮神社へ赴き、静かに祈りを捧げる。

その姿は厳かであり、子供の頃に共に遊んだ少年たちの面影はもうなかった。

紅蓮鬼を沈め、二度と地上に甦らせぬこと――それこそが、古代より榊家の男子にのみ与えられた力であり宿命だった。

炎を鎮める家継、結界を張る家頼。

その双子の力が揃うことで封印は保たれてきた。

私はただ傍らで彼らを支える役目にすぎないはずだった。

けれどいつしか胸の奥では、鬼を封じる祈りよりも強く、彼らへの想いが芽生え始めていたのである。

一度だけ、どうしても想いを伝えたいと思ったことがあった。

高校を卒業する年、勇気を振り絞って家継に告白したのだ。