鬼封じの姫は、禁じられた恋に囚われる

「心を?」

家継が低く反芻する。その響きに、私は思わず視線を上げてしまった。

「……私の好きな男を奪うって……」

吐息と一緒に洩れた言葉は、取り消せないほどはっきりしていた。

気づいたときには遅かった。

家継の顔が、ぱっと赤く染まった。

頬どころか耳まで真っ赤で、祈祷に使う拍子木を持つ手がわずかに震えている。

「す、好きな……男……」

かすれた声で繰り返されるたびに、私の胸も熱くなる。

夢の恐怖よりも、今この瞬間の方がずっと息苦しい。

家継は視線を逸らし、けれど決意を宿した目で再び私を見た。

「俺は誰にも奪われない。」

低い声で告げられた瞬間、胸の奥が跳ねた。

「奪われるとしたら――それは真白だけだ。」

その言葉に、全身が熱に包まれる。

頭の片隅に、あの日の記憶が鮮やかに蘇った。