その時だった。静まり返る神殿の扉が重々しく開き、白い気配が差し込む。

振り返った私の目に飛び込んできたのは、白装束に身を包んだ家頼の姿だった。

蒼白な顔に薄い汗を浮かべ、ふらつきながらも確かな足取りでこちらへと進んでくる。

「家頼!」

思わず駆け寄り、抱きとめたその体は熱を帯び、息も荒い。

「ダメだよ、まだ起き上がったら……!」

必死に制止する私の腕を、家頼は弱々しくも強い力で握り返した。

「でも……俺がいないと……鬼が、完全に復活してしまうかもしれない。」

掠れた声には、揺るぎない決意が滲んでいた。

榊家のもう一人の祈りの番——彼が祈らずして封印は成り立たない。

それを誰よりも知っているからこそ、己の身を顧みないのだ。