奥で祈祷を続ける家継の背は、相変わらず凛としていたが、その肩は僅かに落ちていて、疲労の影がにじんでいた。

思わず胸が痛む。「家継。」そっと声を掛けると、彼は驚いたように振り返った。

その眼差しには、一瞬、鋭い殺気すら帯びていた。

けれど私の顔を認めるなり、ふっとその緊張が解ける。

「……なんだ、真白か。」

「クッキーを焼いてきたの。少しでも力になれればと思って。」

包みを差し出すと、家継は無言で受け取り、ひとつ口にした。

噛む音が小さく響き、彼の表情が和らぐ。

「……うん、美味しい。」

その言葉に、私の心もじんわりと安堵で満たされた。

「よかった……」

思わず胸に手を当てると、家継が穏やかな目でこちらを見返してきた。

いつもの厳しい眼差しではなく、どこか人らしい温かさを含んだ視線に、鼓動が早くなる。