割れた封印の石は、神殿の奥に不気味な裂け目を抱えたまま鎮座している。

ひびの間から洩れる冷気のようなものに、思わず背筋が粟立った。

だが石自体はまだそこにあり、完全に力を失ったわけではない。

神主の話では、新たな封印の石が現れれば、それは必ず光を放つはずだという。

今、裏山に人を出して探索しているが、未だにそれらしきものは見つかっていない。

時間だけが無情に過ぎてゆき、胸の奥に不安が広がっていく。

それでも、家継の祈り続ける姿を見ていると、不思議と心が少しだけ落ち着いた。――誇らしい、と心の中で呟いた。

私は家継の張りつめた空気を少しでも和らげようと、台所で粉をこね、焼き立てのクッキーを小さな包みに詰めた。

「うん、美味くできた。」

自分に言い聞かせるように小さく呟いてから、それを手に神殿へと向かった。