自分の声が震えているのが分かった。

参拝客は不満げに舌打ちし、肩を怒らせて山道を引き返してゆく。

背中を見送りながら、私は胸の奥で小さく息を吐いた。

罪悪感と恐怖とがないまぜになり、足元がぐらつくようだった。

ふと神殿を見やると、そこには正装を纏った家継の姿があった。

白衣に烏帽子を整え、額にはうっすらと汗を浮かべながら、彼は幾度も幾度も祈祷を繰り返している。

その声は低く、しかし確かで、張り詰めた空気の中に響いていた。

神気を呼び覚ますかのように、家継の姿は凛として揺るぎない。

私はしばし足を止め、その背に目を奪われた。

ああ、これが榊家の長子――二千年続く宿命を背負う者の姿なのだ、と胸が熱くなる。

まさに今、この地で鬼が蘇ろうとしているのだろうか。