私は相変わらず参拝客の対応をしていた。

山道を登ってきた人々に向かって、深々と頭を下げる。

「しばらく紅蓮神社は参拝をお受けできません。どうかお引き取りくださいませ。」

言葉を重ねるたび、胸の奥が締め付けられる。

せっかく遠方から来てくれた人もいるのに、理由を告げられないのが苦しい。

「ええー?ここまで来たのに参拝できないってどういうことだよ。」

「申し訳ございません。」

苛立つ声に頭を下げるしかない。

中には腕を組み、鋭い目で迫る者もいた。

「納得できないな。理由を教えろ。」

喉まで出かかった言葉を必死で飲み込む。

ご神体が割れ、鬼が封印から漏れ出そうだなんて、言えるはずもない。

「すみません、理由は申し上げられません。ただ……どうか、今日だけはお帰りくださいませ。」