ぞわりと肌を撫でる悪寒。息が詰まりそうな圧迫感。

その時――。

視界の端に、白銀の毛並みを揺らす式神の姿が現れた。

『……蘇った。』

低い声が頭の奥に直接響く。

「え……?」

私は思わず言葉を失う。

『紅蓮鬼が……蘇った。』

その告げ口を最後に、式神の姿はふらりと揺らめき、霧のように掻き消えた。

残されたのは、割れた封印石と、重苦しい沈黙だけ。

胸の奥で、冷たい恐怖が膨れ上がっていった。

私たちは急いで榊家へ戻った。

廊下は慌ただしく、人の気配が走る。

居間に入ると、榊家の母が蒼白な顔で立っており、既に呼ばれていた医師が家頼を診ていた。

「肺炎を起こしているかもしれません。」

医師の一言に、場の空気が一気に凍る。

「ええっ⁉」

思わず声が上ずった。