「何があったんだ!」

廊下から駆け込んできたのは神主様――双子の父だった。

厳しい眼差しが息子たちに注がれる。

「父さん……」

布団に横たわりながら、家頼がかすかな声でつぶやいた。

「……大変だ……封印が……」

「封印が――⁉」

神主様は血の気を失った顔で叫び、私と家継を引き連れて神社へと駆け出した。

雨に濡れた石段を踏みしめ、拝殿の奥へ。

重い扉を開いた瞬間、神主の声が轟いた。

「ああっ!」

その眼前に広がっていたのは、あり得ない光景。

「石が……割れている! 二千年、一度も崩れたことのない封印の石が……!」

ガタガタと全身を震わせる神主の背中を見て、私も思わず息を呑んだ。

石の中央に深い亀裂が走り、そこからじわじわと赤黒い気配が漏れ出している。