鬼封じの姫は、禁じられた恋に囚われる

ただ一つ、彼の言葉だけが胸の奥で確かに響いていた。

それから雨脚は急に強まり、私と家継は駆け足で近くの軒下へと逃げ込んだ。

びしょ濡れの手を握り合いながら、二人並んで肩を寄せる。

雨粒が石畳を叩く音が、逆に心臓の鼓動を際立たせるようだった。

ちらりと横目で見た家継の横顔は、いつもよりわずかに赤みを帯びていた。

冷徹な仮面を崩さぬ彼が、今はただ一人の男として照れている。――キスをした。私の好きな人と。

思わず頬が緩んだのだろう。

家継がこちらを覗き込み、小さく笑った。

「……なに? そんなに俺のキス、よかった?」

「……うん」

気恥ずかしくも、正直に頷いた。

胸の奥が熱くなり、言葉がそれ以上出てこない。

家継はふっと目を細め、私の手をもう一度ぎゅっと握りしめる。

「いくらでもしてあげるよ。」